本と付箋とメッセージ
彼はいつもひとりだ。
ぼんやりと車窓から外を眺めていることもあるが、大抵は本を読んでいる。
私が降りるひとつ前のバス停にある高校の制服。
毎朝、同じ車内で見かけるだけ。
ただそれだけなのに目が離せない。
先週、本を読み終えたのだろう。彼の持っているのは文庫本からハードカバーに変わっていた。
少し長めの前髪とメガネの下で伏し目がちに文字を追う長いまつ毛を盗み見ていることはきっと知られてはいない…はず。
毎朝15分だけ乗り合わせるバス。いつもなら何事もなく過ぎていくのだけれど、