審査員の素顔を紹介!「#創作大賞2022」 テレビ東京・松本拓さんがいま出会いたい作品&クリエイターとは?
オールジャンルの作品を対象とする投稿コンテスト「note創作大賞」。2021年11月15日の募集開始から、すでに8000件近くの作品が寄せられています。
いまこれを読んでいるみなさんのなかには、「年末年始にじっくり創作して、応募しよう!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこでnoteでは、12月26日、27日、28日の3日連続で各社審査員の方々を順番にご紹介し、みなさんの創作活動のヒントになればと考えました。
第2回目に登場するのは、テレビ東京(以下、テレ東)のドラマプロデューサー 松本拓さんです。
Twitterの感想に「『クソドラマ!』と書かれてもいい」という松本さんの真意とは?
「攻め」のラインを超える作品を
松本さん 直近で担当したドラマは、今夏クールに放送した『ただ離婚してないだけ(以下『ただリコ』)』です。
Kis-My-Ft2の北山宏光くんが主演で、不倫、中絶、殺人......と、あえて言えば「えぐい・グロい」内容。どこまで映像で表現するかは、放送基準とのせめぎ合いでした。
でも僕はいつも、自分の中にある「攻め」のラインを超える内容になるかどうかに主眼を置いて、作品を選ぶようにしています。
表現が行き過ぎたときに、吉と出るか凶と出るかは難しいところですが、中途半端に描くとドラマのすべてが中途半端なまま終わってしまう。だから、台本をつくる段階で脚本家や監督とすごくディスカッションを重ねました。
現場でも細かな調整を重ねましたが、こうした作品を放送すると当然のことながら賛否が起こります。でも僕は、ドラマにとって大事なのは「賛」よりもむしろ「否」だと考えているんです。それは、「否」っていうのは「賛」よりも人間の感情が出るものだと思っているから。つまり、視聴者が感情をドラマにぶつけてくれている証拠です。そういう方は結果的に、色々なひとにドラマの感想を話してくれていることが多いんですよね。
Twitterに「マジ、くそドラマ!」って書かれても、全然構わないと思っています。もちろん「くそドラマ」をつくる気なんてないですし、当然「くそドラマ」だと思ってもいないですが......。ひとそれぞれ感じ方が極端に違うドラマって、本当につくっていておもしろいと思います。
最終的に、12話とおして配信でも1200万回を超える再生回数になりました。
価値観が合うことが絶対条件
松本さん ドラマをつくるときに1番と言っていいほど大切にするのは、「価値観の合うひとと組む」こと。脚本家、監督、プロデューサーの価値観や方向性が合致していることが、良い作品づくりに欠かせないと考えているからです。
それは原作も同じ。自分が心から面白いと思わない作品は絶対やりたくないですね。個人的に、毎回自然と手に取るのは、人間のキレイではない部分を描いた作品。『ただリコ』もそうですが、「物事はそんなにうまくいかないし、人間はそんなにキレイなもんじゃないんだよ」と物語りながらも、最後に少しだけ希望を示してくれるような作品に魅力を感じます。
テレ東でドラマをつくる意義
松本さん いまは、「恋愛」をテーマにドラマをつくりたいと考えています。いままで一度も、真正面から描いたことがないテーマなので。
でも、恋愛をテーマにするなら、「テレ東の深夜で恋愛ものをやる意義ってなんだろう?」ということは、いつも以上に凄く考えますね。テレ東に似合わないテーマですからね…...。
でも、ここまでテレビドラマの主流になっているテーマに、真っ向から勝負してみるのも価値のあることなのかな? と思います。
僕自身もよく分かってないですが、テレビ東京でやるべき恋愛ドラマってなんでしょうね......? とにかく、いい原作にめぐり会いたいです。
テレビドラマにしやすい原作とは
松本さん 「ドラマ向きの原作とは?」と聞かれたら、「話がどんどん展開するもの」と答えますね。物語にうねりが多い原作ほど脚本がつくりやすいんです。
とくに連続ドラマは「またぎ」が大事。一話終わったあと、次週に続きを観たいと思わせる「またぎ」ができるかどうかが勝負なんです。
例えば原作が全10巻のコミックスだとして、ドラマは12話に仕上げる必要があります。ドラマとしてコアになる盛り上がり部分、弱くなる部分などを分析して構成をつくり、足りない分をオリジナル台本で埋めます。その際、話を膨らませられる要素が少ないと、作業がかなり難航してしまうんです。
これから出会いたい脚本家
松本さん 実はプロデューサーって、決まった数人の脚本家と繰り返し仕事をすることが多いんですよね。新しい方と出会う機会がほとんどなくて。
だから、今回の創作大賞で新たな才能と出会えたら、本当にうれしいなと思います。
僕は、「どんなジャンルでも書けます」というタイプより、「これしかできません」という方と仕事をしたい。だってそういう方は、1つのジャンルやテーマを突き詰めているから、アイデアが次から次へと湧いてくることが多いからです。
求められる「文化的エロ」「ゲーム性」「ソロもの」
松本さん 2019年に幻冬舎×テレビ東京×noteで開催した投稿コンテスト「#コミックエッセイ大賞 」で入賞し、昨年テレ東でドラマ化した『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』は、エロを上品にカルチャーとして扱った点が斬新でした。このジャンルは今後も求められていくだろうと思っています。
僕個人としては、お金のかからないSFものもやってみたい。うちの会社としても、配信向けのゲーム性のあるドラマは、今後ニーズがあるような気がしています。
それと、『孤独のグルメ』や『ソロ活女子』のようなソロものは、比較的製作費が抑えられるので、今後も常に必要とされるでしょうね。
時代におもねらず、自分の好きなものを
松本さん 僕がクリエイターのみなさんにアドバイスするのはおこがましいのですが、あえて言うなら「自分がおもしろいと思うものを書くことに徹して」ということでしょうか。
ウケるかどうかや世の中の流れに合うかどうかを考える必要は、まったくないと僕は思う。
単純に自分が面白いと素直に感じていることをやるかどうか。創作ってたぶん、そこが原点であり、一番大事なことだという気がします。
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創作大賞・審査員紹介シリーズ第一弾はダイヤモンド社の亀井史夫さんに、第三弾は幻冬舎コミックスの藤田みちよさんにお話をお伺いしています。あわせてご覧ください。