審査員の素顔を紹介! 「#創作大賞2022」 幻冬舎コミックス・藤田みちよさんが作品を見るとき気にしていることは?
オールジャンルの作品を対象とする投稿コンテスト「note創作大賞」。2021年11月15日の募集開始から、すでに8000件近くの作品が寄せられています。
いまこれを読んでいるみなさんのなかには、「年末年始にじっくり創作して、応募しよう!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこでnoteでは、12月26日、27日、28日の3日連続で各社審査員の方々を順番にご紹介し、みなさんの創作活動のヒントになればと考えました。
最後に登場するのは、幻冬舎コミックスで漫画編集を手がける藤田みちよさんです。
アナログからデジタルへと大転換し、さらにSNSの登場でデビューのサイクルも速くなったという漫画業界。「時代の趨勢を感じる」と語る藤田さんが、いま求めている作品とは?
子どものころからのマンガ好き
藤田さん 漫画編集者はだいたいそうですが、私も子どものころからマンガが好きで。学生時代はよくマンガの即売会に行っていました。典型的な昭和生まれのマンガオタクです(笑)。マンガにもいろいろなジャンルがありますが、長年のオタクはあらゆるジャンルを味わい尽くしたうえで今にいたるという方が多いんじゃないかなと思います。
私もまさにその流れで、たまたまご縁もあり、長く漫画編集の仕事に携わっています。私が仕事をはじめたころはアナログだった漫画業界も、いまでは8〜9割がデータ原稿になりました。
紙の雑誌も多く残っていますが、主だった公開場所はWebやアプリが中心になってきているように思います。幻冬舎コミックスのコンテンツも、現在「comicブースト」に関してはすべてWeb公開です。Webで連載をしていただいたあと、紙と電子書籍の単行本を同時発売しています。
何か一点だけでも光るものがあればOK
藤田さん 新人の方の作品を拝見するときは、何か一点だけでも光るものがあるかどうかを気にして見ています。漫画家を志しはじめたばかりで全部を持っているひとなんかいないので。
たとえば、絵はまだまだだけどキャラクターのセリフ回しや性格がおもしろいとか、お話はわかりづらいけど主人公の顔がかわいいとか。光り輝く部分が一つでもあれば、その部分を磨いて伸ばしていくことができます。
正直、0を1にすることはすごく難しいけれど、1を2にすることは結構簡単なんですよ。その方の得意な部分を伸ばして形にしていくためのアドバイスをしています。
人前に出るからには、一番似合うお洋服で
藤田さん 私がよく作家さんに言うのは、「自分の着たい服と似合う服は違う」ということ。「人前に出るからには、あなたに一番似合う、あなたを輝かせるお洋服を着ていきましょう。そのほうがみんなに見てもらえますよ」という言い方をしています。
やっぱり人に見てもらうキッカケにもなる自己プロデュースは必要だと思うんです。自分のクリエイティブな部分と商業的な部分は、ある程度切り離したほうがいい。
近年は商業ベースに乗せなくても、Web上ですでに自分の作品を発表されている方も多いですよね。そこでたとえば「いいね!」の数だったり、ランキングの推移を見て、「自分はこの部分がウケているんだ」と把握しやすくなった。そういう意味では自己プロデュース力に長けた方が増えたと思います。
Webで発表されている時点で「だれかに見てもらいたい」という気持ちがあると思うので、そのときに「自分の強みは何か?」を意識すると、より見てもらえる可能性が広がるんじゃないかなと思いますね。
熱い想いをガツンと伝えて
藤田さん 2020年に幻冬舎×テレビ東京×noteで開催した投稿コンテスト「第2回#コミックエッセイ大賞」に審査員として参加させていただきました。拝見した作品のなかには私が全然知らない分野のお話もあって、感心したり刺激を受けることができました。
今回の「note創作大賞」でも、投稿者の方の「これだけは伝えたい!」という熱い想いがガツンと表現されているような、インパクトのある作品に出会いたいです。
私はこれまでずっとマンガ畑で生きてきましたので、マンガ絡みではないメディアの審査員をするのは初めてなんです。非常に責任重大だなと感じています。初心者であり、読者の気持ちで、第一印象を大切にして作品を拝見できればいいなと思っていますね。
創作には客観的な視点も必要
藤田さん クリエイターのみなさんへのアドバイスとしては、「客観的な視点を入れる」こと。「これおもしろいかも!」と思いついても、それをわかりやすくひとに伝えるのにはとても手間がかかるんですよ。マンガだったら構成の仕方やセリフのチョイスで、伝わり方がまったく変わってきます。
おもしろさがうまくひとに伝わらないのはもったいないので、書き上げたあとちょっと時間を置いて見直すなり、お友達や家族などの第三者に見てもらうなり、何か客観的な視点を入れるといいと思います。何も知らない状態で初めて作品に触れたときに、ちゃんと意図が伝わるかという確認はすべきだなと。
それと、創作の途中で迷いが出てきたら、「自分はこの作品で何を伝えたかったのか」という一点だけに絞って推敲するほうがいいです。最初に志したおもしろさは何だったのかということに注力すれば、ほかは多少つたなくても全然いいと思います。
藤田みちよさん
株式会社幻冬舎コミックス 編集本部編集第二グループcomicブースト副編集長、出版部デジタル制作室室長
2000年ワニブックス入社。漫画雑誌「COMICガム」にて『辣韮の皮』(阿部川キネコ)、『豪放ライラック』(桑田乃梨子)、『暴れん坊少納言』(かかし朝浩)などを担当。2009年幻冬舎コミックス入社。漫画雑誌「バーズ」、WEBマンガサイト「comicブースト」にて『純喫茶ねこ』(杉崎ゆきる)、『ふたりべや』(雪子)、『今度は絶対に邪魔しませんっ!』(原作:空谷玲奈 作画:はるかわ陽)、『異世界で土地を買って農場を作ろう』(原作:岡沢六十四 作画:細雪純 キャラクター原案:村上ゆいち)、『最強の黒騎士、戦闘メイドに転職しました』(原作:百門一新 作画:風華チルヲ)、『蜜蜂と遠雷』(原作:恩田陸 作画:皇なつき)などを担当。
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ダイヤモンド社の亀井史夫さん、テレビ東京の松本拓さんにもお話をお聞きしています。ぜひお読みください!