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家庭で発明した家事教育「かじとりゲーム」が世界へ。ライター宮本恵理子さん #noteクリエイターファイル

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は「かじとりゲーム」を考案したライターの宮本恵理子さんにお話を聞きました。

休校・休園、在宅ワークでこれまでにないほど自宅に家族が集う今。料理、洗濯、掃除に加えて「名もなき家事」もいつも以上に増えています。

家族がもっと主体的に家事を担ってくれたら。特に、自分の子どもには家事ができる大人に育ってほしい。

そんな切実な母の願いがエンターテインメントに昇華されて生まれた「かじとりゲーム」。

ルールは極めてシンプル。厚紙でつくったカードに家事を書き出し、くじ引き形式で“日替わりの家事”を決める。カードで家事を取り合い、引き当てた家事の「舵取り」をするゲームです。

宮本恵理子さんと小学2年生(8歳)の息子さんが発明した「かじとりゲーム」は、noteを通じて家庭を飛び出し、国境を越え広がっています。

家事問題を解決!外出自粛中の家庭で生まれたゲーム

「生活のベースであり、一緒に暮らす人との関係性にも深く影響するのが“家事力”。息子に身につけさせたいと思いながら、『手伝って』とお願いしてやらせるのも、お説教して義務感を持たせるのも違うんだよなあ、とずっとモヤモヤしていました。

小学校が休校になって、夫は職場に通っていたので日中は息子とふたり。この機会に、やりたかったけどできてなかった“家事トレーニング”をしよう!と決めました。遊びにするしかないと、苦肉の策で思いついたゲームでしたね」

実際にやってみると、息子さんは思っていた以上に前のめり。自らカードを書き足し新たなルールを生み出し、トイレ掃除に燃え、家事を「やらせて」と懇願するまでに!

「無邪気にすすんで家事をやる、これまでにない息子の反応に驚いて、周囲の人にも話していたんです。みんな面白がってくれたので、これは家事教育に悩むほかの家庭でも役に立つのでは?と、いてもたってもいられなくなって。休校から1週間が経ち、仕事にも追われて大変な時期でしたが、使命感に駆られて、一気にnoteを書き上げました」

大反響!ロックダウン中のスペイン在住シングルマザー家庭も救う

noteを公開した直後から、宮本さんのもとには、直接あるいはSNS上で「うちでもやってみたよ」「これはまさしく発明!」といった声が多数寄せられます。

翌日には、ハフポストの編集長・竹下隆一郎さんが、“新型コロナ危機にあえて立ち止まる。「ポスト・コロナ」時代に向け一人一人ができること”と題したコラムの中で紹介。記事はその後、英語と仏語に訳され、世界で読まれています。

イラストレーターのハラユキさんは東洋経済オンラインの連載『ほしいのは「つかれない家族」』という連載で“外出禁止スペインの母もハマる「ゲーム」の秘密〜日本発!長引く自粛生活を乗り切るヒント”として、取り上げました。

記事にもあるように、ロックダウン中のスペイン・バルセロナ在住のシングルマザーと2歳と9歳の子どもの家庭でも、大ヒット!その様子はYoutubeで紹介されています。

同じくバルセロナで暮らす父と母、子ども4人の家族が「かじとりゲーム」に挑む様子がYoutubeにアップされています。

「想像以上の反響にびっくりしました。ルールがシンプルだから、それぞれの家庭でオリジナルのアレンジを加えて楽しんでいただけるのが嬉しいですね。

今は世界中が新型コロナウィルスと戦っていて、同じ悩みを抱えているからこそ、東京の小さな家庭で生まれた提案がバルセロナまで、軽々と国境を越えたんだと思います」

その後、かじとりの札を増やしたりルールを追加した、その後の様子をまとめた記事も公開されています。

ニュートラルな発信ができるnoteを選んだ

宮本さんは、出版社で雑誌の編集記者として10年のキャリアを積んだのち、2009年にインタビューを主軸としたライターとして独立。各媒体に月20本程のインタビュー記事を書き、年間約10冊のブックライティングを手がけるプロフェッショナルライターです。

今回「かじとりゲーム」を伝える場所として、ほかのメディアではなく、noteというプラットフォームを選んだのはなぜなのでしょうか。

「媒体に記事を書くときは、それぞれの媒体についている読者を意識します。この記事を媒体で書くとしたら、家事のことだし、女性向けメディアになると思うんですが、男性含めもっとニュートラルに届けたかった。実際に蓋を開けてみたら、男女ともにフラットに広がっていって、noteで書いてよかったなと思いました」

そもそも宮本さんがnoteを始めたのは2019年11月。媒体に書く記事とは違う、ニュートラルな視点で自分の気づきなどを書いてみたいと思ったことがきっかけでした。

「周りの人たちがnoteを楽しんでいたので、いつかやってみたいと思っていたんですが、日々の仕事に追われて物理的にも、心理的にもハードルがありました。

そんな中、独立して10年を迎え、インタビューとライティングの講座を始めることになったんです。この機会に、書き手として思い出深いエピソードや考えていることを書いてみようと。始めてみたら、操作性も簡単で、ダイレクトに反応があるのですごく面白い。自然と書き続けられています」

noteを書き始めてから、宮本さんご自身にも変化があったそう。

「インタビューライターは、誰もが持っている個人のドラマを探ってほかの誰かに伝え橋渡しする仕事だと思っています。だから普段は人に話を聞くばかりで、なかなか自分には意識が向かないんです。

でもnoteは、“わざわざ話さなくてもいいことだけれど、もしよかったらどうぞ”という絶妙な距離感で自分のことを書くことができる。自分のドラマに目を向けるきっかけになりました」

素のままの“自分の物語”がほかの誰かの物語を生むきっかけに

宮本さんがnoteを書くときに意識しているのは、意図せず誰かを傷つけることがないか、誰かを責めて対立構造を生み出すことになっていないかという視点。

「妻が主体になりがちな家事問題も夫を批判してVS構造にするのではなく、一緒に変えていける提案をしたかったんですね。かじとりゲームは結果、男性からも評判がよくて嬉しかったです」

また、noteだからこそ、”素を出すこと”も大切にしているそう。

「noteの編集長は私自身で、自分が出したいタイミングで出したいメッセージを出したいままに発信できます。noteはいい意味で、洗練されていなくても、“素のまま”を受け入れてくれるプラットフォーム。だからこそ、不完全でも、自分の周辺で生まれた小さな物語を書いていこうと思えるんです」

メディアでのインタビュー・ライティングで誰かの物語を橋渡しするのと同じように、自身の物語がほかの誰かの物語を生むきっかけになる。そんな可能性をnoteに感じていると言います。

「『かじとりゲーム』は私の家で生まれたささやかな物語だけれど、自由にアレンジして誰にでも使ってもらえるものなので、それぞれの家庭がほんの少しでも変わる、物語を生むツールになったら、とってもすてきですよね」

実際にnoteでも、「かじとりゲーム」を試した人たちの物語が投稿されています。

家庭の家事分担、子どもの家事教育に悩む人はぜひ、「かじとりゲーム」をお試しあれ!そして、noteにご自身の家庭の物語を書いていただけたら。

■クリエイターファイル
宮本恵理子

1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP)に入社し、「日経WOMAN」や新雑誌開発などを担当。2009年末にフリーランスとして独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』『新しい子育て』など。ブックライティングも多数手がける。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。2020年よりインタビュー&ライティング講座の講師も務める。
note:@miyamotoerico
Twitter:@erk_nksm

【イベントのご案内】
「かじとりゲーム」に注目した現役の小学校教師・二川佳祐さんの呼びかけで、5/9の午前に、かじとりゲームや著書『新しい子育て』についてトークするイベントが開催予定。詳細はこちらで更新予定。

text by 徳 瑠里香


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