初小説がまさかの映画化…書き手は現役のバンドマン。「あの苦しみに比べたら、書き続けることは苦にならなかった」
かつて肩を並べていたバンド仲間が、どんどん自分を追い抜いていく──。
飲み屋でふと、テレビに目を向ける。画面に映しだされる友人の姿に、慌てて目をそらした。
多くの人が行き交う繁華街。聞き慣れた歌声が耳に入ると、足早にその場を去った。
憧れのステージに友人が立つと知っても、「おめでとう」のひと言がどうしても言えなかった。
そんなとき、心の中に黒々と渦巻いていたのは、嫉妬や羨望といった感情ではない。
自分だけが前に進めていない──、無力感だ。
「その苦しみに比べれば、毎