雨にも、風にも、怪しいレビューに負けず

先日、「髭剃り」が壊れた。

普段なら「ウウィーン」と言いながら、僕の髭を剃ってくれるのだが、スイッチを入れた瞬間「vbywwwwwイイーン!」とこの世のものとは思えない、ノイズを発した。思わず、どうした!と、シェーバーに安否確認をした時には、プスンといい、もう動かなくなった。

朝から、電動シェーバーの断末魔の叫びと絶命を一部始終、見てしまった。

舞台に立つことが多いの職業なので、髭を剃れないと困る。すぐに新しい、髭剃りをAmazonで注文することにした。

前使っていたのは、ブラウンというメーカーの、確か、5000円くらいのものだったはずだ。一応、ちゃんとしたメーカーなので、使用していて、悪いところはなかった。

今回も、5000円程度で、イイものがあればなあと思いながら、Amazonのサイトをスクロールしていた。

すると、価格3200円、レビュー☆4.8の高評価、さらにクーポンまでついてお得という、とんでもない電動シェーバーを見つけてしまった。

嬉しくなった僕は、すぐに、奥さんに、こんなすごいものを見つけたぞ、と鼻の穴を膨らませながら自慢してしまった。

すると、奥さんは間髪入れずに、「安すぎて、怪しい。ちゃんとしたメーカーのにしなよ。」と冷めた口調で言ってきた。

ああ、本当にふざけた女だよ。あんたは。こっちは、とんでもない掘り出し物を見つけたというのに。どうして素直に喜べないのかと。どうして、そう腐すのだろうか。

そんな気持ちをグッと堪えながら「バカ言っちゃいけねえ。これを見やがれってんだ。」と、商品のレビュー画面を、この紋所が目に入らぬか、とばかりに見せつけてやった。

そこには、ズラッと、高評価レビューが載っている。その数、3万6千件である。とんでもない人数のレビューなのだ。西武球場の収容人数より上じゃないか?

そして、もちろん、ほとんどが☆5なのである。つまり、最高評価だらけなのである。

このレビューは、もはや印籠なのだ。これを見れば、嫁も「ははあ〜」と平伏して、頭を地面に擦り付けると思った。勢い余って、床を舐め出すかもしれない。

しかし、この女ときたら「逆に怪しくない?」と、悪態つきながら、チョコレートの包装を雑に破って、もぐもぐ食べ始めやがった。

なんて図々しい女。こっちは、証拠としてレビューを見せてるのに、なにその態度。大体、そのチョコは俺のチョコだろ。何を勝手に食べてるのだ。

まあいい。元々、予算は5000円なのだ。それを下回る、3000円台で、電動シェーバーを買えるなんて、こんな素晴らしいことはないのだ。それが全てだ。そう強引に押し切って、奥さんのクレジットカードを利用して、光の速さで、注文してやった。

そして、次の日、シェーバーが届いた。

早速、髭を剃ってみた。すると、どうだろう、なかなか綺麗に剃れるのだ。「おお!これで3000円!やるじゃないか!やっぱり、レビューは正しかったんだ!」と浮かれながら、口周りを丁寧に剃った。

なんてイイ買い物をしたのだろうか。そう思い、届いた商品の箱の中身を、全て出すためにひっくり返した。すると、こんなものが出てきた。

「レビューをすると、1000円のギフト券がもらえる」と書かれている。

ええ!?こんな素晴らしい商品なのに、さらに1000円ギフト券もらえるの!?

至れり尽くせりとは、このことか!これはすごい!

、、、と思ったのだが、その紙に書かれ文字をよーく読んでみたら、急に怖くなってしまった。

、、、あれー?

なんか、、、怪しくない?

怪しすぎて、とたんに、レビューする気も失せてしまった。

しかも、裏面を見ると、☆5にしないと、1000円をもらえない仕組みになっている、、、、。

レビューがあまりにも高い理由もわかってしまった。

つまり、1000円目当てのサクラがたくさんいるのだ。

レビューする勇気が出ない。

僕が、腑抜けなのか、この券が、フ抜けなのか、、、。

うん、、、。レビューはやめよう。

奥さんには、一体なんて説明しよう、、、。

僕は、結局、怪しいものを買ってしまったようだ。今は剃れているが、いつ動かなくなるかわからない。これは、粗悪品じゃないのか。

モヤモヤしてしまった。

そして、夜、仕事から帰ってきた奥さんに、髭剃りは、やっぱりよくないかもしれないと、正直に、伝えようとした。

昨日は、強引に押し切って悪かった。あとチョコレートはまた買ってあげるよ。そんなことを伝えようとしたら、

僕が話す前に、彼女が「あれ?いつもより、ヒゲ、綺麗に剃れてるじゃん!!明るく見えるよ!」と褒められてしまった。

うん。普通に品質はいいみたいだった。

黙ってることにした。

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