小噺

シシャモ on バラの炭

昨日、念願の小包が届く。
通販で買った1セット3万円の炭だ。
かなりぜいたくしてしまった。
その炭は今から1億年前の地層から発掘されたバラの炭だそう。
待ちに待っていた。今日ようやく使うことができるのを、
高鳴る胸のドキドキを抑えながら、昨日、蔵出しした七輪を庭先に置く。
いよいよだ。
バラの炭を七輪の中へくべ、チャッカマンで火をつける。
このバラの炭、着火材も必要なくすぐ点火。
周りが徐々にかぐわしくなるなる。
そして、炭が赤々となった緊張の瞬間。シシャモ3尾を七輪の網にのせる。
ジュージュー、パチパチ、ジュージュー、パチパチ・・・。
いい匂い、バラのこうばしい匂いが、焼けたかな、焼けたかな♪
もういいかな、もう決めよう。シシャモを大皿にとり、家へ戻ろう。
大皿が食卓にあがる。ハヤる気持ちを抑えて、
パクリ・・・、う〜まずい。

おいしい鉄棒

私は鉄棒です。私には悩みがあります。聞いてくれますか?
それは長い間、昼間でさえ子供達が遊びに来てくれないことです。
夜一人で寂しいのはいいんです。昼間少しでも子供達が来てくれればと。
私はとある夜、いつものように満天の星空に一人寂しく子守唄を歌っていました。
 星が流れ、私はとっさに願いました。
「どうか私をあのブランコのように人気者にしてください。」と。
そう願った翌日から私に異変が。
念願の子供達がたくさんやってくるのではありませんか。
何が起こったのか、頭が真っ白になりました。
気づくと、私は金属のピカピカがチョコレートになっていました。
しかも、子供達が逆上がりすると持つ棒はぐにゃっとそしてイソギンチャクのように
ひっつきます。
子供達は私を曲がる新感覚と甘さにひかれてやってきたのです。
そう有頂天になったのも数日。
目覚めると「立ち入り禁止」のテープが貼ってあります。
そして、誰も来ませんでした。
来たのはそう、ミツバチの大群でした。なんてこった〜。

他山の石

黒田はイライラしていた。自分のとなりの山の白井が気に食わない。
というのも、この秋、旬の味覚ー松茸、しめじ、・・・ーが豊作で
白井の山もそうだった。
その一方、黒田の山には松茸一本も生えてこなかった。
 そこで、黒田はやつあたりをした。黒田と白井の山のさかいには川が流れ、
大きな河原がある。
黒田は石石を川の向こう(白井側の河原)へおいてはおいていった。
3時間ほどやっていたが、疲れと悪い気がしてそこで止めた。
 数日後、黒田の家電話に白井から電話が来た。
その電話は思いがけない電話だった。
(白井)「ありがとうございます。黒田さん。」開口一番黒田は不意をくらった。
黒田は怒鳴られることを覚悟していたのに。
(白井)「あなたの置いてくださった台石。ひすい磨きに使わせてもらっています。
ありがとうございます。」
(黒田)「悪いことをしてしまった。結果的にはよかったが。ごめんなさい。」
黒田はイライラして八つ当たりしたことを後悔しつつ、
手を差し伸べてくれた心の広い白井に深い感謝をした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?