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ミニレポ④主を失い崩れ落ちゆく廃民家

とある交差点の信号待ちで、ふと少し遠くにある民家を眺めた時。何か違和感を感じた。最初はその違和感の正体がよくわからなかった。だが、すぐに違和感の正体は判明した。よく目を凝らして観てみると民家の屋根に大きな穴が空いていたのである。

「これは、もしかして、民家の廃墟なのでは!?」
私は胸が高まるのを感じた。

信号が青になったのを見て、私は一目散にその民家へと向かう。その家は誰がどう見ても廃民家であった。屋根には大きな穴が2つ開いており、壁も一部が崩れ落ちて家の中が丸見えになってしまっている。
私は夢中でカメラのシャッターを切った。

1.朽ちゆく民家

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民家の正面付近。玄関は非常にきれいな状態である。しかし、激しく存在を主張する屋根の大穴がこの民家が既に「住」の役割を終えた廃屋であることを物語っている。
15年ほど前に、こことは全く別の場所でも屋根に大穴が開いた民家の廃屋を見たことがある。一体、何年間手入れをしなければ屋根がこのように崩れ落ちるのだろうか?この廃民家のある場所はほとんど積雪がない地域なので、雪の重さで潰れたわけではない。
物干し竿には何か布が干しっぱなしになっていた。家の主はどうしてここからいなくなってしまったのだろうか?夜逃げ、病気、色々な推測ができるが、家の主人に何か不幸なことが起こったことは間違いないのではないだろうか。

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壁が崩れ落ちた場所から中を覗いてみた。家の内部は上から落ちてきたと見られる屋根の残骸が散らばっていた。廃墟内部はカビが繁殖していて「かび臭い」ことが多いらしい。だが、この場所は天井や壁が崩れて風通しが良くなっているおかげでそういった不快な臭いは一切感じられなかった。

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衣服が吊り下げられたままになっていた。

モザイク

遺された表彰状。柱が邪魔で表彰状の最後の方は読むことができなかった。どうも、某民間企業から贈られた表彰状のようだ。「永年に亘り(会社名)の復興に挺身精励...」と書かれていることから、この家に住んでいた住人はこの会社に務めていた、もしくは貢献していたと考えられる。

表札

表札もそのまま遺されていた。表札にはこの民家の住所と、住民の名前が刻まれていた。表札には4人の名前が刻まれていた。苗字が同じなのできっと家族で生活していたのだろう。
一人暮らしであれば、住人亡き後、その家を管理する人がいなければ家は朽ち果てていくだろう。しかし、この廃民家の住民は一人暮らしではなく、家族で住んでいたはずだから四人のうち誰かが亡くなったとしても家を管理する人くらいはいたはずだ。この家で生活していた人々は一体どうなってしまったのだろうか?離散してしまったのだろうか?憶測ばかりが出てきて、真相はもはや何もわからない。

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物置もとっくにその役割を終わらせたようだ。

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廃民家のとなりには神社があった。この日は時間の都合で私は参拝しなかった。きっと、この神社で祀られている神様はこの家の盛衰の様子を見てきたに違いない。神様には、主を失って、朽ち果てていく家はどのように映るのだろうか?

2.まとめ

恐らく今この記事を読んでいる読者様の多くは「家」に住んでいることだろう。「家」は「衣食住」の「住」を満たす大切な要素である。しかし、「住」としての役割を終えた家屋はこのように急速に荒廃する。あなたが今生活しているその「家」もいつかは「住」としての役割を終えて、朽ち果てる・・・・そんな未来が待っているのかもしれない。

私はなんとも言えない感傷に浸りつつ、廃民家を後にした。

更新履歴
2021年1月22日:記事公開

蛇足:後書き:::
コロナ禍で先の見えない状況が続いていますね。娯楽施設に行きたいけど、人がたくさんいて「密」になってしまうから行けない。そんな時は是非廃虚を見に行きましょう。廃墟ならば基本的に観光客であふれているということはありません。ただし、廃墟内部に侵入して騒いだり、破壊行動をしたりすることは近隣住民に大きな不安を与えますし、さいあく警察に捕まります。廃墟を観にいく時は外からの観察を原則として、内部に立ち入る時は建物の管理者などから許諾を得るようにしましょう。
以上、とにかくお金が欲しくて金の亡者と化している富岡でした。それでは蛇足が長くなりましたが記事の閲覧ありがとうございました。

2016年頃から廃墟に関心を寄せる。2018年、実際に廃墟へと趣き、廃墟訪問にハマる。現在はその廃墟がかつてどのように使われていたのか、いつ頃廃墟になったのかを特定することに力を注ぐ。 地域・店舗限定のエナジードリンクを見つけることにもハマっている。自他共に認めるエナドリ中毒者。