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11.おしまいのとき(The Last Time)

あなたが赤ちゃんをその手に抱いた瞬間から、あなたも生まれ変わるのよ。

自由だった日々を恋しく思うこともあるでしょうね。
 
何も心配事のなかったあの頃生まれ変わったあなたは、これからはきっと、今まで体験したことのない疲労感を知ることになるかもしれない。

同じことの繰り返しを、ただ、ただ、時間を重ねていく毎日が訪れる。
ミルクを与えて、ゲップをさせてオムツを替えて、また赤ちゃんは泣く。

寝かせたり、寝足りないのかと考えたり、初めての育児に闘う日々が来る
それは、まるで果てしなく永遠に続くのではないかと思ってしまうほどよ。

でも忘れないね。
すべてのことには"終わりがある”ということをね。

いつの日か、子どもにご飯を食べさせてあげるのはこれで"おしまい"という日が来るわ。遊びつかれた子どもが疲れてあなたの膝で眠る日があるでしょう

眠った子を抱きしめることも、いつかは最後の日が訪れるわ。

いつものように子どもを抱っこし、おろす。当たり前だったこの行動もある日終わりが来るの。

一緒にお風呂に入り子どもの頭を洗う、でもね、ある時「一人でお風呂に入る」と言い出す日が来るわ。

力強く握っていたあなたの手を必要としない日も来るわ。

夜中、眠ているときに、子どもたちが一緒に寝たいとあなたの布団に潜り込んでくる。そんな風に起こされることがいつか来なくなるのよ。

子どもたちと大好きな歌を歌って踊る、そんな幸せに満ちた日々も終わりの時がくるわ。

学校に送っていくと「行ってきます」とキスをしてくれるけれど、やがて、次の日、学校に送っていくことはなくなり玄関先でキスをしてくれるようになる。

寝る前の絵本の読み聞かせも、汚れた顔を拭いてあげるのも、いつか最後のときがくる。

子どもたちが両手を広げあなたの腕に飛び込んでくることも、必ず最後のときがくる。

その「最後(おしまい)のとき」はいつ来るのか誰にも分からない。それは、それが来てから初めて「最後(おしまい)のとき」が訪れたことに気がつくわ。

だからもし、今あなたが子どもたちとの時間を過ごしているのなら、
この時間はそんなに多くは残されていないことを覚えておいてほしいの。
そしてその最後のときを迎え、このかけがえのない時間があなたの中から去った時これらの日々が心から愛おしく戻ってほしいと思うでしょう。

そう、おしまいのときに。
                       作者不詳 創訳cou cou

「胸の泉に」

かかわらなければ
この愛しさを知るすべはなかった
この親しさは湧かなかった
この大らかな依存の安らいは得られなかった
この甘い思いや
さびしい思いも知らなかった

人はかかわることからさまざまな思いを知る
子は親とかかわり
親は子とかかわることによって
恋も友情も
かかわることから始まって
かかわったが故に起こる

幸や不幸を
積み重ねて大きくなり
くり返すことで磨かれ
そして人は
人の間で思いを削り思いをふくらませ
生を綴る
ああ
何億の人がいようとも
かかわらなければ路傍の人

私の胸の泉に

枯れ葉いちまいも
落としてはくれない  

                 「未知なる知者よ」より詩人・塔和子

みなさん、読んでくれてありがとう!coucou。


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