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#51 the monogatary | Sun

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【プロローグ】

ピンチョン。それは我が与えられし名前。「この名前に相応しいドラキュラになること」。それは我が生きる目的。しかしながら。どうやらその道のりは平坦なものではないらしい…。

ビーチ

【第1章】

<1-1>

ドラキュラとしての日々。それは想像を絶するものである。基本的に。我は夜型である。日が沈むと同時に。我の一日が始まる…。

幕開け。今宵の天気を一言で表すのであれば。このような言葉が適しているのだろう。成人式。それが本日の一大イベント。ドラキュラとして生を受け。20年が経過した。20年間。多くの経験と共に。我は今生きている。

~「この役立たずめ!お前なんて産まなければ良かった!」~

幻聴が聞こえる。あぁ。本当に。改めて。我の人生は壮絶なのだと振り返る。それでも。我の心臓は鼓動する。「人は苦しみの分だけ強くなれる」。かつて我の師はこのような言葉をよく発していた。正直。我はその言葉の意味を充分に理解していない。それでも。いつか師の言葉が血肉となるように。我は今日も呼吸を繰り返すのである。

<1-2>

「ドラキュラたるもの、スキルを磨くべし」。それが我が師の口癖であった。スキル…。それは千差万別。ドラキュラの数だけ、多種多様なスキルが存在する。例えば火を扱うドラキュラ。火のスキルは3種類。初級・中級・上級。大抵のドラキュラが持っている火のスキルは初級~中級。火の上級スキルは限られしドラキュラしか扱うことが出来ない。ゆえに。一般的なドラキュラは中級スキルの獲得を目指して精進する。

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「大変申し上げにくいのですが…。この子は生まれつきスキルを持っておりません。"ディスオーダー"。私たちの世界ではそのような子供をこのように定義いたします。」

「スキルが無いですって….。ありえない…!だって次男以外は皆何かしらのスキルを所持しているのに!どうして!?」

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あぁ…。頭痛がする。いつものこと。昔はこのような記憶を思い起こすたび一人で永遠と泣いていた。それでも。今は違う。我には仲間がいる。我の家臣と共に歩むドラキュラ・ライフ。それが我にとっての普通であり。また。日常でもあるのだ。

<1-3>

我には夢がある。「ビーチで太陽を浴びる」。それが我の夢である。その為に。我はこの20年間。同志と共に。日々研究に没頭した。成人式。それは。日頃の成果を示す場である。1人前のドラキュラとして。自らを誇ることが出来るように。我は努力する。「失敗の数だけ成長することが出来る」と。そんな師の言葉を信じて…。