見出し画像

#46 the monogatary | 星から来た

※前回はこちら▼

彼女との日々…。それは私にとって…。


人生を生きる上で。大切なことなんて山程ある。ゆえに。この世界はこんなにも奥深い。

私の青春時代。それは。決して幸せと述べられるものではない。それでも。彼女との出逢いが私を変えてくれた。開口一番。彼女は告げる。

「火星から来ました。よろしくお願いします。」

「え?」私は思わず。そう発していた。

火星。イーロン・マスク氏やホリエモンのお陰で。火星は地球にとって。ずっと身近な存在になっていた。それでも。まだ限られた人しか到達することが出来ない。そのような領域から。彼女は突然現れたのである。


突如現れたクラスメイト。幸か不幸か。彼女の席は私の隣だった。

「Apfieydwnfg. Hrxwopdkyu.」

驚きのあまり。僕は翻訳機の存在をすっかり忘れていた。彼女が話す言語を理解するため。僕は翻訳機のスイッチを押す。

「初めまして!My name is Robert. よろしく!」

彼女は快活な口調で自己紹介する。

「初めまして…。僕はジェイムズ…。よろしく…。」

それに対して。私は細々とした声で。そんな彼女に言葉を紡ぐ。正反対。それが彼女に対する第一印象だった。


ある日。その日は彼女にとっての誕生日。僕は彼女に対して。細やかなプレゼントを送ることにした。

「ロバートさん…。実はロバートさんに渡したいものがあるんだ…。」

相変わらず。僕の口調は冴えない。それでも。

「え!?」

彼女は陽キャ。ゆえに。彼女はいつだってオーバーリアクション。それで良い。それが良い。


彼女へのプレゼント。それは。宇宙食である。NASAを筆頭に。これまで多くの宇宙探索が行われてきた。多くの宇宙飛行士が火星を訪れた。その中で。彼らにとっての些細なご褒美。それはいつだって宇宙食であった。かつて。野口宇宙飛行士は。人類で初めて。ラーメンを宇宙で食した。そのような歴史の中で。私が選んだもの。それは。カルボナーラである。

イタリア。それは僕の故郷。日本での国民食がお米ならば。イタリアの国民食はパスタである。ラーメンと同様。どうしても麺類の宇宙食は開発にコストがかかる。しかしながら。僕は決断した。やり遂げるのだと。「カルボナーラを火星で食して欲しい」その想いが僕の思考を加速させる。


開発には多くの年月を要した。ここまで頑張る必要は無かったのかもしれない。それでも。私は彼女の存在に救われた。その恩義を。何としてでも。果たしたかったのである。命は有限。それでも。私は全力を尽くした。

そうして…。満足出来る品が完成した…。


この世の中は多くの娯楽に満ち溢れている。ビッグデータ時代。私たちは容易くアクセスする。たとえ都会であろうと田舎であろうと。情報は等しく与えられる。試されるは個の力。資本主義社会。そのような中で。僕たちは最善を尽くす。時には遠回りしながらも。それぞれが。それぞれの夢を持って。たとえ魔法が無くたって。きっと願いは叶うのだと信じて。


運命的な出逢い。運命的な別れ。あれからどれだけの年月が過ぎたのだろう。それでも。彼女に対する感謝は尽きない。それで良い。それが良い。僕たちは巡る。この果てしない荒野にて。私たちは歩む。この果てしない荒野を。

「ロバート。誕生日おめでとう。きっと。あなたは今も変わらず。天真爛漫に。自由奔放に。火星で過ごしているのでしょう。あなたと過ごせた日々。それは私にとってかけがえのない宝物です。願わくば。その命よ永遠に。」