SDGsがひらくビジネス新時代、竹下 隆一郎著

今、我々は、「アイデンティティの経済」の時代に突入している、それを数多くの事例を使って教えてくれる。これまでは、商品であれ、サービスであれ、消費者は、それ自体(What)に対価を支払っていた。

例えば、その商品やサービスができる過程(Process)において、その企業は環境や人権に配慮しているのか。そうした観点は、生産者、そして消費者側でも最優先事項とは言えなかった。例え、消費者がそうした意識を持っていても、それは各個人のアイデンティティとして、自分自身だけ、もしくは自分の身近な社会における政治的の意見にとどまっていた。それが、SNSのインフラの普及も手伝って、そうしたアイデンティティの表明が、今では、様々な階層、境を超え、瞬時に広がっていく。そして、それがビジネスの骨幹にまで影響し、そうした個のアイデンティティが、まさに経済を動かすような力を持つようになった。

今あるビジネスは、社会にとって、本当に必要なのか。必要であれば、なぜ必要なのか。目的(Purpose)を問われる時代になった。イシューを問い、なぜ(Why)からはじめよ、ということだろう。そして、「なぜ」を問うのは、ビジネスを提供している側だけではない。消費者としての我々にも「つかう側・消費する側としての責任」が問われている。消費行動が、政治行動にも繋がるということだ。最近の事例では、ウィグル族への強制労働に直接的、間接的に加担している企業のニュースが話題になった。そうした企業、その企業の製品に対する姿勢が問われる。

なお、筆者は、アイデンティティの要素が強くなることによって、人々の分断のリスクについても指摘する。これに対する万能な解決策はないのだろう。個々人が、世の中の情報を追い、自分の中のアイデンティティ(その基盤、OS)をアップデートさせて、自分の解を探していく必要があるのだろうと思う。

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