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雨の日に歩く

雨の日のお出かけはあまり好きじゃない。

傘やタオルで荷物は増えるし、駅までの移動は自転車から徒歩に変更だし、雨でぬれた地面は足元が滑りやすいし、気圧の変動で体調は崩すし、気温が下がって寒いし。
大人になってからは、休日に雨が降っていると、できるだけ家の中で過ごそうとしてきた。
雨自体が、というよりは、雨の日の外出が、好きじゃない。


うちでは犬を二匹飼っていて、朝と夕、家の窓のシャッターを開け閉めするとき、外の空気を吸いに犬たちがかけよってくる。時間に余裕があるときは窓の高さまで抱っこする。犬は必死に身を乗り出して、外のにおいを嗅ぐ。
雨の日は特に必死で、スンスン、スンスンスン、と、お腹がぱんぱんに膨れるくらい吸ってはンフーッと鼻息を大きく吐く。
そんなにいいものかねぇ?と思いながらいつもその様子をぼんやり眺めていた。


このあいだ、コンビニと郵便局へ行く用事があった。その日は朝から雨で、ほんとうは家にいたかったけどどちらの用事も急ぎだったので、渋々準備をした。
通勤やお出かけではなかったから荷物は最小限に、レインブーツや防水のアウターを装備して、大きい傘を選んで、いざ外へ。

いつも雨の日は、目的地にむかってセカセカと無心で歩いていたが、この日は用事を済ませたあとは予定がなかったのでゆっくりお散歩気分で歩いた。
雨の露がのった葉っぱを眺めたり、高架下を歩いて傘に雨が当たる音を感じたり、いつもより濁った水が流れる川を見て魚たちの気持ちを想像してみたり。雨の音でかき消されるから歩きながら鼻唄も歌えた。
犬の真似をして鼻から空気をたっぷり吸ってみたら、なんだか懐かしいようなにおいがして嬉しくなった。最近はマスクもしてるせいで忘れていたけど、雨の日ってこんなにおいだった。私、このにおいが好きだったよな。

渋々外に出たはずだったが、いつのまにかずいぶん、雨の日のお散歩を楽しんでいた。
子どもの頃に知っていた、雨の日にしかない良さをたくさん思い出せた。まだまだありそうだと思った。

きっとまだ、通勤時やお出かけ時の雨は楽しみきれないけど、気持ちや時間に余裕がある日にこうして雨の中をゆっくり歩くのも悪くないなと思った。


子どものように、小さい楽しみを見つけられる人でありたいな。



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