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【識者の眼】「医師の賃金を議論する前に」倉原 優

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
Web医事新報登録日: 2021-12-03

財務省は財政制度等審議会分科会で、看護師の平均賃金が月収換算で医師の4割にとどまるとの分析を示し、分配のあり方を改善すべきと提言しています。専門職である看護師や介護士の収入が低いため、段階的にこれを上げていこうという趣旨ですが、曲解した人は「医師の給料を下げるべきと政府が言っている」とツイートしています。一部そういう報道をした記者もいました。

医師の平均給料は高いと思いますが、他の医療従事者の給料と比較して高い人間から低い人間に分配すべきというのは、確かに暴論です。医療従事者の間で給料を取り合う構造を植え付けるのはよくありません。

団塊の世代が死亡すると、2035年以降は相対的に医師過剰に陥ると予想されます。そのため、需給の観点から、医師の給料は減るのではないかと予想されています。

激務なのに給料が低い勤務医から集患が多い地域の順風満帆の開業医までピンキリです。診療報酬の分配に関する是非はともかく、私が改善してほしいのは、大学病院に勤務する医師の待遇です。大学病院の勤務医は、臨床だけでなく、教育や研究も並行して行っています。他の医師と比べて付加的に業務をこなしているわけです。待遇が悪いため、外勤やアルバイトを並行しなければ、生活が維持しにくい状況です。大学院に在籍している医師であれば、なおさらでしょう。ぬるま湯につかっている私が声をあげても説得力はありませんが、世の中から見た医師像と比べると、あまりにも待遇が悪すぎるのではないかと考えています。

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