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『キュート先生が教える!肺癌診療のキホン』note連載 第5回


第5章 非小細胞肺癌治療の導入②-免疫治療(単剤)-


【1】はじめに

 皆さま,こんにちは。キュート先生こと呼吸器内科医の田中希宇人(たなかきゅうと)です。SNS上では「キュート先生」の名前で医療情報発信を行っています。

 この4年間,ずっと新型コロナと戦ってまいりました。コロナ禍でも肺癌診療は粛々と行っていたわけですが,コロナの流行状況で化学療法が頓挫してしまったり,検査が通常通り行えなかったりと肺癌患者さんにも多大な迷惑と心配をおかけしてきました。個人的には病院の異動もあり,周辺の環境も大きく変わりました。肺癌治療に対するエビデンスは日々進歩しており,コロナ禍でも勉強だけは欠かさず行ってまいりました。現在,最新版の『肺癌診療ガイドライン 2023年度版』が公開されました。進行肺癌に対する治療選択肢も増え,とても複雑になっています。その数ある肺癌のエビデンスや治療ストラテジーをまとめるべく,この連載『肺癌診療のキホン』の連載も再開しようと思います。

 この『肺癌診療のキホン』は研修医や呼吸器内科を志すような若い医師向けに,実際の臨床現場で役に立つような肺癌症例の管理や診療・治療の基本的な知識をまとめた連載になります。第1章の「肺癌診療の基礎」から第2章,第3章の「肺癌の検査」まで誰にでも分かりやすいようにかみ砕いて解説してきました。前回は進行非小細胞肺癌の治療として「非小細胞肺癌治療の導入①-分子標的薬-」の題名で,非小細胞肺癌で認められる種々のドライバー遺伝子変異と各種キナーゼ阻害薬について紐解きました。


 今回は「非小細胞肺癌治療の導入②-免疫治療(単剤)-」です。いま一般的にどの医療機関でも行われている,進行非小細胞肺癌に対する免疫治療について解説していきます。免疫治療といっても,単独で治療する場合とプラチナ製剤併用化学療法に併用して使用するIO-ケモ(通常「ケモコンボ」),2種類の免疫治療を組み合わせるIO-IO,2種類の免疫治療と化学療法を併用するIO-IO-ケモに分けられます。今回は免疫治療単剤について取り上げていきたいと思います。

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