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『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第6回:電話ピラミッド,吃音軽減法

エントリー編

6:電話ピラミッド,吃音軽減法


母親
小学生・中学生・高校生の吃音者は一番苦手なのが「音読」とのことですが,社会人になると音読がなくなり,吃音の悩みが減るこということはありませんでしょうか?

確かに音読が減る大学生では,吃音の困り感が減る人が多いです。
ただ,就職すると電話をかけたり・うけたりすることが増えてきて,新しい悩みとなります。
現に吃音者の社会人のほとんどの悩みが「電話での最初の言葉が言えない」こととなっています。電話が苦手なのは,小学生・中学生・高校生の音読が苦手なことと繋がっています。

母親
電話と音読の関係性ですか?

普段の会話は,苦手な言葉を言いやすい言葉に言い換えたりしますが,音読は苦手な言葉も言い換えずに読まないといけません。
また,電話は毎回自己紹介をしているようなもので,音読が苦手な吃音者は自分の名前を言うのが苦手な人が多いです。

母親
つまり,電話が苦手と言う吃音者は自己紹介が苦手で,普段から言葉の言い換えを行い,音読が苦手な人が多いということなのですね。

そういうことです。そのため「電話が苦手」と私の外来に来られた場合は,音読の練習や,日常生活での言い換えを少なくし,自助団体にて自己紹介の経験を積むことを促しています。

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母親
吃音を軽減する方法はいくつか種類があるのですか?

すぐに軽減する方法と,徐々に軽減する方法があります。
私は2人読みとオペラント学習,適応効果を使っています。
適応効果とは反復練習のことですが,音読で最初たくさん吃音が出ていても,何回か繰り返し読んでいるうちに吃音が軽減していくことです。

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母親
吃音に反復練習は効果があるのですね。
2人で文章を一緒に読むと吃音が0になるのですね。

私は2人読みをよく臨床(吃音外来)で使っていますが,最初は相談者と同じくらいの声量で音読をします。2回目は半分くらいの声量,そして3回目は最初の言葉だけ手助けして,一人で流暢に読めるようにしています。

母親
この表にDAFと書いてあるものは何ですか?

DAFとは,遅延聴覚フィードバックという意味で,話した声を100~200ミリ秒遅らせて自分の耳に聞かせながら話す方法です。
2人読みの原理で連発の吃音には有効です。ただ,電話で最初の一言が出ないという難発の吃音は,フィードバックする音声が出ないので効果は乏しいと言われていて,日本ではその機械は発売されていません。


菊池良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)

続き(note連載第7回)はこちら




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