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『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第7回:「ゆっくり話して」という大人,オペラント学習

エントリー編

7:「ゆっくり話して」という大人,オペラント学習


母親
吃音軽減法として「ゆっくりと話す」とありますので,わが子に「ゆっくり話なさい」とアドバイスすることは良いことですよね?


いえ,そうではないです。
保護者や周りの人は吃音者に「ゆっくり話なさい」とアドバイスすることは辞めて欲しいです。大人になった吃音者が一番言われたくない言葉が「ゆっくり話なさい」です。言われたくない理由の一つは,そのアドバイスをされても吃音が0にならないためです。
話したいから話しているのであり,苦しそうに見えても話し終わって,伝わったら満足感を得ることができます。しかし,話す内容に注目せず、話し方のアドバイスをされるとがっかりしてしまいます。

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母親
では,どうすればいいでしょうか?
ゆっくり話をさせることはできるのでしょうか?

はい。幼児や小学生に対する環境調整として,親や周囲が「ゆっくり話す」ことです。子どもには「ゆっくり話なさい」と言っても,自分と会話している親がゆっくり話さないのであれば,子どもはゆっくり話したくないでしょうね。

母親
そうなんですね。今まで「ゆっくり話なさい」と何回も言ってしまっていました。申し訳ない気持ちです。

「ゆっくり話なさい」「落ち着いて」というのは,アメリカの調査では88%の親がそう言ってしまうとのことです。つい,吃音の子の前ではそう言ってしまうものです。
また,言い直したり,言葉の先取りをすることも33%の親がしてしまうとのことです。良かれと思って接している方法が間違うこともあることを知っているといいですね。


母親
吃音軽減法に書いてある「オペラント学習」とはどのようなことなのでしょうか?

子どもが話した時の周囲の反応により,吃音は増減するということです。条件反射の1つで,梅干しを見ると唾液が出ることにも似ています。


母親
吃音って,自分の意思で操れるのではなく,周囲の反応によって左右されるのですね。

本書のアドバンスの項目でも紹介しますが,幼児のセラピーで海外で一番エビデンスがあると言われているのがリッカムプログラムです。流暢に話したら褒めるというセラピーです。


母親
吃音が出なかったら褒めると,裏の意味を読み取って「流暢に話せないと悪い」と思うようになるのではないでしょうか?

このリッカムプログラムは幼児が対象,つまり言われたことを素直に受け取る年齢が対象なのです。私は別の解釈をしていて,吃音のからかい・いじめを予防することが吃音の軽減につながると考えています。吃音に対して,反応することで強化することが吃音を増やすことにもつながっていると思いますので。

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菊池良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)


続き(note連載第8回)はこちら





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