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【識者の眼】「新型コロナ迅速抗原検査の正しい活用を」小倉和也

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)
Web医事新報登録日: 2021-10-08

新型コロナ迅速抗原検査キットの薬局での販売が解禁となった。感染拡大を防ぐための手段の一つだが、有効に活用するためにはその意義と使い方に十分注意する必要がある。

厚生労働省の事務連絡によると、無症状者に対する使用は推奨されず、症状がある場合は医療機関を受診するとし、「体調が気になる場合」に使用することとされている。一方で、これまで高齢者施設などのクラスターを防ぐために無症状者を対象に用いてきたこともあり、この事務連絡の真意を理解することは容易ではない。おそらく非医療者にとってはどのような時に使用し、どのように解釈するべきかを理解することはかなり難しいだろう。

米国疾病対策予防センター(CDC)のガイダンスやBritish Medical Journalの解説に示される通り、この検査は、PCR検査のように感染者を見つけることではなく、感染力のある感染者を早期に見つけて拡大を防ぐために用いるものと理解すべきだろう。無症状者でも感染力のある感染者を早期に見つけるスクリーニングに活用する場合は定期的に繰り返し用いる必要がある。

また今回のように市販され、「体調が気になる場合」に用いるとはどのような状況かと考えると、具体的には、①軽微な症状があるが医療機関を受診するほどではないと考える場合と、②接触の可能性があるが行政検査の対象にはならない場合、であろう。その場合、結果が陽性(赤信号)なら隔離が必要であり、陰性の場合もPCR検査をするか、経過観察し必要に応じ再検査を要する(黄信号)であることを示すに過ぎない。

最も避けるべきこととして上記解説でも指摘されることは、自己検査で陰性であることを感染していないことの証明(青信号)と理解して行動してしまうことである。しかし、心情的に考えると特に①のような状況で使用する目的はまさにこの確認であり、お墨付きを得たと誤解してしまうようでは、かえって感染拡大に寄与してしまう可能性がある。徹底した周知と販売する薬剤師や相談にのる医療関係者の間での対応の統一が急務であると考える。

この点についても地域で行ってきた医療介護関係者の研修会で取り扱うとともに、NPO法人で公開してきた啓発動画に加え、ささやかながら啓発に努める予定である。今後社会活動を徐々に正常化していくにあたり、ワクチン接種や医療体制の確立とともに、エアロゾル感染などへの新たな予防策と早期発見体制の構築がきわめて重要であると考える。

【参考】
米国疾患対策予防センター”Interim Guidance for Antigen Testing for SARS-COV-2”
Interpreting a lateral flow for SARS-Cov-2 antigen test:BMJ 2021;373:n1411. Published: 22 June 2021
NPO法人Reconnect新型コロナ情報チャンネル.

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