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『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第8回:社交不安症とその解決策

エントリー編

8:社交不安症とその解決策


母親
わが子が小学5年生となり,最近,吃音が減ったと思うのですが,これで困り感は減った状態なのでしょうか?

表面上の吃音と内面の吃音は比例しません。人前で話すことに不安・恐怖を抱いていないか聞いてもいいとは思います。小学生高学年の頃になると,吃音を隠す様々な努力を始めます。

母親
吃音を隠す努力ですか!どんなことをするのですか?

苦手な言葉,どもりやすい言葉が分かる年齢では,「あのー」「えっと」と話す前に言葉を挿入したり,言いやすい言葉に言い換えたり,言葉の順序を入れ替えたりすることが増えます。
どもりたくない予期不安が高まり,最終的にはしゃべる場面から逃げるという回避行動まで伴うこともあります。そのような状態まで進行すると,社交不安症(SAD)を併発してしまいます。

母親
吃音のある人は,社交不安症になりやすいことが分かっているのでしょうか?

吃音のある成人は,50%の人が社交不安症を併発することが分かってきました。表面上の吃音だけではなく,内面の不安・恐怖に対して,アプローチをしないと,吃音のある人の悩みが理解できないと思います。

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母親
たまに発表がある日は「学校に行きたくない」と言うことがあります。どうしたらいいのでしょうか?

吃音が出た後に「なぜどもるのだろう」と気持ちの落ち込みや劣等感を持つことを確認し,「あなたは一人ではないよ」「悪くないよ」と伝えることが有効です。吃音がある子は「自分だけ流暢に話せない」という気持ちを持ちがちです。それを予防するために,私は小学1年生でも「あなたには吃音があるけど,一人ではないよ」と伝えて,吃音が出ても落ち込まないようにしています。

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母親
予期不安が強い子はどうしたらいいでしょうか?


予期不安が強い子=吃音が出てはダメと思っている場合が多いです。話す前に「つっかかえることがありますが笑わないでください」などと吃音をカミングアウトできると気持ちの落ち込みは減ります。
また,必ず言い換えをしないと思い込んでいる吃音者に「どもりながらも話していいんだよ」と新しい選択肢を教えると役に立ちます。仕事など急ぎの時は言い換えしていいですが,家族や親しい友達と話すときは言い換えせずに自分の言葉で話すように勧めています。


菊池良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)


続き(note連載第9回)はこちら



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