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英語のリスニングテストについて考えてみた《改訂版》

※本記事は、以前ブログで掲載したものを改訂したものになります

いきなりですが皆様は、英語のリスニングテストは得意ですか?
おそらくこの文章を読んでおられる皆様は、私と同様に上手くいかなくて悩んでおられるのではないでしょうか?
今回は、APD持ちの皆様向けの、リスニングテスト(以下LT)への向き合い方について語っていきたいと思います。
少し長いですが、ぜひご覧ください。

①聞こえない原因について考える

2020年の10月に、私はAPD(聴覚情報処理障害)という概念にたどり着きました。
大学受験から8年、それなりに時すでに遅し。
ですが、私以外のAPDの方々の中には、現役受験生や未来の受験生もおられることでしょう。

そんな皆様にまず考えてほしいこと。
それは「なぜ自分はLTが苦手なのか」ということです。
結論から言えば、必ずしもAPDの症状だけがリスニングを妨げているわけではありません。
LTにおいて、「聞き取り」と「聞き取った英語の意味の理解」は別物なのです。

例えば、相手からこんな英文を言われたとします。
“It’s nice to meet you.”
仮に、この英文における英単語の構造や発音を理解しているとしましょう。
それでもなお、ちゃんと聞き取れないとすれば…。
それはAPDが表出していると言えると考えられます。

では、全く覚えのない単語や表現だとしたらどうでしょうか。
おそらく、聞き取ることは出来ないことでしょう。
APD当事者はもちろん、それ以外の人達も、です。

知識不足か、症状の発現か。
ここの見極めをしないことには、この先に進めないかもしれない…。
私はそのように考えます。

②APDの特性について考える

とは言え、簡単な英文すら頭に入ってこない、といった方もおられると思います。
「知識不足」では辻褄が合わないほどの聞き取り困難であれば、APDの症状である可能性もあるでしょう。
ともすれば、今度はAPDの性質について理解しておく必要があります。

APDは、耳で拾った音声を脳で処理する際に起こる情報処理トラブルです。
そのメカニズムについては未だに分からないことが多く、研究者の先生方が日々明らかにするべく奮闘しておられます。
具体的な症状としては、以下が例として挙げられます。
・相手の口元が見えないと聞き取りが難しい
・音声を一定時間聞き続けることが難しい
・聞き取った情報をすぐに忘れてしまう   など

APDの方々の多くは、小さい頃から無意識的に音声以外の情報で会話を成立させていることが非常に多いです。
相手の口や身振り手振り、さらにはその場の空気やそこに至るまでの経緯など…。
私含め、どうやら当事者は多種多様な材料を使ってAPDに抗っているようです。

さて、LTに関して言えば、「音声情報のみしか与えられない」という点に障壁があると私は考えます。
LTは、音声以外には問題文しか判断材料がありません。
つまり、普段頼りにしている様々な情報を縛って、内容の理解に努めなければならないのです。

この点において、聞くという行為は同じでも、日常会話とLTは天と地ほどの差があるのです。

③リスニングテストのために必要な知識について考える

少し話が逸れますが、なぜ我々は日本語の文章を読むだけでその内容を理解できるのでしょうか。
目に入った言葉は、記号として脳に入り、そこで情報処理をされます。
この処理には、先ほども示した通り、バックボーンとして知識や慣れ…。
すなわち「経験値」が必要です。
処理すべき情報が脳内にインプットされている情報群と一致したとき、初めてその意味が理解できるのです。
日本人が英語の文章が読みにくいのは、基本的には経験値が足りないからなのです。

これは耳からの情報でも同じようなことが言えます。
英語よりも日本語の方が相対的に聞き取れるのは、日本語に対する経験値が英語よりも高いからです。
聞こえてきた英文が理解できないのは、その中の英単語・英熟語を知らないからです。
とりわけ、発音上の単語・熟語を知らないからなのです。

簡単な英文で説明します。
Nice to meet you.(初めまして)
これを、「イッツ/ナイス/トゥ/ミート/ユー」と発音する人は、あんまりいないと思います。
「イッ(ツ)/ナイス/トゥ/ミー/トゥュー」が自然な発音なのです。
英語は音が繋がりますので、こうした単語同士の交じりが発生します。
このような法則を多少なりとも理解していないと、土俵にすら立てません。
単語の意味・文法上の意味はもちろん、英語の聞こえ方も理解することで、ようやく情報の処理にたどり着けるのです。

④リスニングテストに対する悪あがきについて考える

③で示した通り、前提として英語に対するある程度の経験値が必要です。
また②で示した通り、実際のLTでは聞こえてくる英文と手元の問題文という数少ない情報で勝負する必要があります。
中には問題文がほとんど機能しないケースもあります。

こうして整理してみると、APD当事者にはなかなかに酷な状況とも言えますね。
だからと言って、聞こえないからもう諦めてしまおう、というのはまだ時期尚早な気がします。
もう少しだけ深掘りしてみましょう。

APD持ちの私達の弱点の一つに、「聞いた内容をすぐに忘れてしまう」というものがあります。
せっかく処理した情報も、並行して別のことをしていると泡のように消えてしまうのです。
これこそが聞き取りを困難にしている諸悪の根源の1つと言えるでしょう。
音声が終わって問題を解くまで、頭の中にストックできない…。
なかなかに致命的かもしれませんね。

ここからは、この難題に対する私なりの悪あがきの話です。
1つ目は、「聞こえたそばから書きなぐる」戦法です。
意識の9割は音声再生に傾けつつ、残りの1割で聞こえたまま書きなぐります。
音声が終わった後に解読・日本語変換をし、何とか回答に繋げます。
これにより、情報のストック難を無理やり突破します。

この戦法の弱点は、作業量が多くて忙しいことと、そもそも聞き取れなかったときに思考停止してしまう危険があることです。
そもそも、APD当事者はマルチタスクが苦手なことが多いです。
(発達障害が背景要因である人であればなおさら)
実際、私はAPDを知る前からこの作戦を幾度となく実施し、知識不足やパニックによって7割方撃沈していました。

2つ目は「音声が始まる前に環境を有利にする」戦法です。
近年では、以前にはなかった合理的配慮というものが救ってくれる場合があります。
(障害の提示といった事前の申請が不可欠ですが)
また、試験開始と同時に問題文がヒントとなり得る大問にアタックを仕掛け、可能な限り聞き取りの材料にしましょう。
いっそ、初めから無理そうな問題は捨ててしまうのもアリだと思います。

ただし、この作戦は事前準備や練習が必要なので、そこだけは理解しておきましょう。
一朝一夕では到底機能いたしません。

3つ目は大学入試限定の作戦ですが、「英語Lの得点を合否判定に含んでいない大学・学部・学科を選ぶ」です。
正直、これが一番手っ取り早かったです。
私の場合、偶然にも志望学科の1つがセンターの得点にLT分を採用していなかったので、それもあってその学科を受験し、合格しました。

言うまでもなく、この作戦は狙って出来るものではなく、やるとしても最後の手段です。
間違っても、LTの有無だけで、将来の進路を決めるのはやめましょう。

⑤リスニングテストへの向き合い方について考える

残念なことに、APDについての研究がまだまだな現在時点において、LTという科目を完全に対策することは不可能です。
私は、受験生の頃は上記の通り、抜け道を使いました。
が、大学生の頃に受けたTOEICでは打つ手がなく、木端微塵にされました。
私はLTに敗れた人間なのです。
なので、最後は対策とは程遠い、困難との向き合い方の話になります。

まず、現在の共通テストにおける英語R(筆記)と英語Lの比率は、100点/100点です。
(センター試験の頃は200点/50点)
そして、それぞれの点数に対する重み付けは、各大学に任されています。
確かに、以前よりは英語Lを英語Rと同程度に評価する流れにはなってきています。

ですが、落ち着いてよく見ると、従来のように筆記を重視する大学も多いことに気付きます。
(例えば、一橋大学では1:1だが、神戸大学では4:1、など)
ここで大切なのは、自身の目標校がどういう方針かをあらかじめ調査し理解しておくことです。
すなわち、自身の人生におけるLTの重要度を認識することなのです。

それからもう1つ。
これは私だけなのかもしれませんが、APDは条件次第で劇的に緩和できます。
それは、脳の処理速度そのものを上げてしまうことです。
聞いた音声を脳内から消えてしまう前に日本語まで変換し切ってしまえばいい、という発想です。

処理速度の底上げは、もしかしたら訓練次第で可能になるかもしれません。
しかし、今のところは実践例がほとんどないため、眉唾ものと言わざるを得ません。
それよりも、たくさん寝て元気な状態で試験を受けた方が建設的です。
というより、疲れている状態がAPDの症状を悪化させやすいのです。
無理をして付け焼刃的な対策をするより、自分の体と相談して栄養や睡眠を確保した方が間違いなく良い方に転がります。

こんな締まらない終わり方で申し訳ないのですが、これが私の出した結論です。
もちろん私の意見が全てではありません。
是非とも、他の当事者の方々の意見も聞いてみてください。
たくさんの方々が、きっと応援してくれるはずです。

それでは、これから試験を受けるであろう皆様のご武運を祈りまして、今回は終わらせていただきます。
長文にはなりましたが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。


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