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APD(聴覚情報処理障害)当事者にアンケートをとってみた【3-2-1~4】

※本記事は、『APDオープンチャット』にて2022年に行われたアンケートの結果を基に作成されております。最新のデータではございませんので、ご了承ください。

忙しい皆様向けの記事要約

・APD当事者のほとんどが雑音下での聞き取り困難を有している
・今回のアンケートによって、カクテルパーティ効果の機能不全を示す結果が出たと言えそう
・音源方向の特定を苦手としている人は半数程度であった

前回までのあらすじ~今回の説明

前回、質問3-1-1~7までの結果を図にしました。
詳しくは上記記事をご覧ください。

今回は3-2-1~4について触れていこうと思います。

備考:質問内容一覧

1-1. ASDの診断及び自覚の有無
1-2. ADHDの診断及び自覚の有無 
1-3. LDの診断及び自覚の有無
1-4. 著しい睡眠不足または睡眠負債の自覚の有無
1-5. ストレスの自覚の有無
1-6. 幼少期における複数言語の使用経験の有無
1-7. 幼少期における不適切な養育を受けた経験の有無

2-1. 過負荷時の眠気の度合
2-2. 過負荷時のパニックの度合
2-3. 聴覚過敏の有無
2-4. マルチタスクに対する印象

3-1. 聞き取り困難症状の有無①
 3-1-1. 早口の聞き取り
 3-1-2. 小さい声の聞き取り
 3-1-3. 低い声の聞き取り
 3-1-4. 抑揚のない声の聞き取り
 3-1-5. 電話・無線越しの声の聞き取り
 3-1-6. 館内・校内放送の声の聞き取り
 3-1-7. パーテーション越しの声の聞き取り
3-2. 聞き取り困難症状の有無②
 3-2-1. 雑音下での声の聞き取り
 3-2-2. 複数音声下での選択的な声の聞き取り
 3-2-3. 意識外からの声の瞬発的な聞き取り
 3-2-4. 音源方向の特定
3-3. 聞き取り困難症状の有無③
 3-3-1. 聞き取り状態の維持(持久性:数分~数十分程度)
 3-3-2. 聞き取り状態の維持(瞬発性:数秒~数十秒程度)
 3-3-3. 聞き取り時の短期記憶
 3-3-4. 聞き取り時の作業記憶
3-4. 複数音声の同時聞き取りに対する印象

3-2-1~4:聞き取り困難症状の有無②

実際の聞き取り困難の有無についてのアンケート結果を提示していこうと思います。
一般的にAPD当事者が聞き取りにくいと言われている性質を持った音声及び環境の、聞き取り困難の有無についての質問をさせていただきました。

3-1は、主に1対1の会話や音声の聞き取りについての質問群になります。
3-2は、主に「空間的な要素」を含む会話や音声の聞き取りについての質問群になります。
3-3は、主に聞き取りを間接的に支える脳機能についての質問群になります。

3-2-1. 雑音下での聞き取り困難

雑音下での聞き取り困難の有無についてご回答いただきました。
あるという方が79名、ないという方が9名という結果でした。

APDの代名詞の1つとも言われる症状ですが、その評判通りとも言うべきか、9割の方が自覚ありという回答でした。
前項でもそうでしたが、やはり背景音が混じる環境だと著しく聞こえが悪くなると考えられます。

3-2-2. 複数音声下での選択的な声の聞き取りの困難

複数音声下での選択的な声の聞き取りの困難の有無についてご回答いただきました。
あるという方が72名、ないという方が16名という結果でした。

上記2つの質問は、いわゆる「カクテルパーティ効果」の有無の確認を想定された質問でしたが、やはり多くの人が困難を所持しているようです。
本結果に関しては非常に考えるところが多く、更なる検討の必要性を感じざるを得ません(詳しくは備考にて)。

備考:聴覚過敏との関係

聴覚過敏を持っておられる方(47名)と持っておられない方(41名)に分けて分析してみました。

・雑音下での聞き取り困難
聴覚過敏あり:43/47(約91%)
聴覚過敏なし:35/41(約85%)
・複数音声下での選択的な声の聞き取りの困難
聴覚過敏あり:42/47(約89%)
聴覚過敏なし:29/41(約71%)

「雑音下~」に関してはあまり大きな差は見られませんでした。
一方で、「複数音声下~」では約20%もの開きが見られました。
これはどういうことなのでしょうか?
今後、深く検討していく余地がありそうです。

3-2-3. 意識外からの声の聞き取りの困難

意識外からの声の聞き取りの困難の有無についてご回答いただきました。
あるという方が72名、ないという方が16名という結果でした。

「複数音声下~」と全く同じパーセンテージですが、内訳は異なります。
症状同士の重複に関しては、今後改めて検討を行う予定です。
なお、今回は一例として「複数音声下~」と「意識外~」の回答結果のベン図を提示いたします。

3-2-4. 音源方向の特定の困難

音源方向の特定(音源定位)の困難の有無についてご回答いただきました。
あるという方が42名、ないという方が46名という結果でした。

他の質問と比較すると、この質問だけは著しく低い割合となりました。
そもそもカクテルパーティ効果は、「音源位置の特定」と「基本周波数の把握」が両方揃うことで成り立っていると考えられています。

ここから、少なくとも音源定位が難しいとカクテルパーティ効果が機能しにくくなると考えられます。

備考:音源定位とカクテルパーティ効果の検討

音源方向の特定の困難を持っておられる方(42名)と持っておられない方(46名)に分けて分析してみました。

・雑音下での聞き取り困難
音源定位の困難あり:40/42(約95%)
音源定位の困難なし:39/46(約85%)
・複数音声下での選択的な声の聞き取りの困難
音源定位の困難あり:37/42(約88%)
音源定位の困難なし:35/46(約76%)

両項目とも、音源定位の困難がある方が割合が10%ほど高くなるという結果が出ました。
とは言え、これだけでは何とも言い難いと言わざるを得ません。
「基本周波数の把握」についての質問と合わせて検討して初めてちゃんとしたことが言える、といった感じでしょうか。

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