貴婦人のお喋り(2階の角部屋)
中世ヨーロッパの貴婦人たちは容姿だけでなく、言葉使いや仕草なども美しく、優雅なものでした。
休日の昼下がり、ハープの音色を聴きながらなされるたわいもない会話でさえも非常に美しく、その一部は現代まで語り継がれているほどです。
「どう考えても机が小さいわ。」
「これじゃあ貴族なのに腕をバインダーみたいにもしちゃうわよ。」
「やっぱりIKEAで買うんじゃなかった。」
「組み立てる時に木材を失くしちゃったものね。」
「うん、ネジが8本余った。」
「あのネジどうしたかしら?」
「お母さまが毛穴にねじ込んでたところまでしか知らないわ。」
「それで7本はネジ穴が潰れて、1本は愛着がわいてきて、もうとれないみたい。」
「だからお母さまは最近、磁石に若干引き寄せられてるのね。」
「まぁそんなことはもういいわ。ところであなた、この前言ってた新しいご友人はどんな方?」
「あぁ、ビーガンなのによく喋る子よ。」
「なんか辞めときなさい。きっとマルチ商法をしてる。」
「ただでさえ足りないエネルギーを喋るのに消費するなんて意味がわからない。」
「あと、口から溢れんばかりの口内炎があるわ。」
「やっぱり辞めときなさい。きっと前科がある。」
「口内炎が治る前に喋り出すなんて意味がわからないわ。」
「口内炎が、口内炎を呼ぶらしいの。」
「は?」
「は?」
「まあいいわ。そろそろ小ぶりの日傘をさしながら乗馬をする時間よ。」
そしてダージリンティーを一口飲み、春の暖かい風に包まれながらラベンダーの咲きほこる庭へ出ていくのでした。
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