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”その土地で暮らすこと”を実感したベトナムの寒さ

「明日はもっと寒くなるみたいよ。あなたはバイクに乗るんだから、手袋をするべきよ。」

先日、仕事を終え家に帰ってきたところで大家さんとばったり出くわして、こんな話になった。



ベトナム中部のダナンで暮らし始めて1年が過ぎた。この1年は普段の生活だけでなく様々なシーンで、ベトナムを強く感じ取った気がする。きっといつも通りの世界のなかで移住をしていただけでは感じられなかった、いいことも嫌なことも、感心することもたくさん経験したように思う。

年が明けて2021年の初noteとなる投稿。何を書こうかと、十数行書いては消し、保存しては消し…を繰り返していたのだが、ついに書きたいことが出てきた。


”ダナンの寒さ”である。


いやいや、勘弁してくださいよ。日本よりもうんと南に位置するベトナムが寒いわけないでしょう。

そう思うだろうが、寒いのだ。日本人にとっても確実に寒いのだ。この3週間ほど、私は毎日ウルトラライトダウンを着て、手袋をつけながらバイクを運転している。コロナの心配はもうほとんどないベトナムだが、防寒用にマスクが必須だ。


ダナンの季節は主に乾季と雨季に分かれる。9月か10月頃から雨季が始まり、1月の今は雨季の終わりにさしかかろうとしているところだ。
移住前に持っていく服の選定のためにベトナムの天気や気温を本やネットで調べたが、”北部のハノイには四季があり、冬は10℃くらいまで下がることがある”といったようなことだけ書かれており、その他は一切、そして誰も寒さに関しては言及していなかった。

かく言う私も、昨年の1月にダナンへやってきたときは、ダウンやセーターを着ているベトナム人を不思議なまなざしで眺めていた。もちろん私は半そでのTシャツを着ていて、日本人の同僚たちは長袖を着てはいたものの素材は薄手で、「バイクに乗るとき、ちょっと風が冷たいんです」と言っていただけだった。


昨年から続く今回の雨季は、地元のベトナム人たちが「こんなの珍しいよ。ちょっとおかしいよ。」と言うくらいに雨が降っている雨季らしい。台風が幾度となく中部を直撃し、例年はしとしとと雨が降り続くのがここの雨季らしいのだが、昨年はスコールのような土砂降りの雨が続く日が多かった。
12月になると土砂降りのような雨は落ち着いたが、今度は寒さが襲ってきた。それまでTシャツに薄手のカーディガンを羽織るだけで充分だったのが、さらに防風パーカーを羽織るようになり、最終的には趣味の山登り用に…と持ってきたウルトラライトダウンを引っ張り出して、ダウンの上から防風パーカーを羽織るようになった。ここまでしても手先は冷たく冷えるので、ついには手袋もゲットするはめになった。今はマフラーとヒーターを買うか切実に悩んでいる。


ベトナム人の同僚たちは11月頃から、セーターを着始め、厚手のコートやダウンを羽織り始めていた。「やっぱり南の国の人はこれぐらいでも寒いんだな」などと横目で見ていたが、今や私も同じような格好をしているのだ。大量のパソコンと人がひしめきあっているため暖かいはずのオフィスでもウルトラライトダウンを羽織ったまま仕事をしているし、家でももちろん羽織ったままだ。ダナンのエアコンには暖房機能はついていないので、とにかく重ね着をし、白湯を飲んでしのいでいる。
最近、日本人の知り合いに合うと、どの人とも「寒いですね」といった話題で30分くらいは話している気がするし、一昨日同じアパートに住むロシア人カップルと話したが、驚くことに彼らも寒いと言っていた。


はて。ここまでダナンの寒さを訴えてきたが、「寒い、寒い」と私たちが言っている気温は一体何度なのだろうか?

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いやいや、笑わせないでくれ。
と思っただろうだ、20℃を切ると本気で寒いのだ。最高気温が16℃くらいの日があったが、寒すぎて体がこおばるほどだった。

体感50℃以上の暑い夏を生き耐え抜いたからだろうか、日本とは違って湿度が高いから同じ16℃でも体感が違うのか。とにもかくにも私の身体はもうすっかりダナン仕様になってしまったようだ。2年前、カナダのバンクーバーに1年間住んでいたときは、「今日は3℃もある!暖かい!」なんて感じていたのに不思議だ。

きっとどこかの土地で”暮らす”ってこういうことなんだろうなぁ。



ただこの寒さ、昨年も同じくらい寒かったが日本から渡航したばかりの私は寒さを感じなかった…というわけではなく、ここまで寒くなるのは数年ぶりの話らしいのだ。5年ぶりという人もいれば、10年ぶりという人もいたりして、錯綜する情報がその珍しさを物語っている。



まさか平地のダナンでダウンを着て「寒い」と言う日がくるなんて思ってもみなかったが、なんだかこの街に自分が馴染んだみたいで嬉しい気もしている。ベトナムという暑い国でダウンを着ている人を見る私のまなざしも、うんと優しいものになったに違いない。


ただ、土砂降りの季節はとっくに過ぎたのに、上はダウン、下はビーチサンダルというスタイルを貫きながら「寒い、寒い」と言っているベトナム人のことは未だに好奇の目で見てしまうのだが。



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