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可及的速やかに。

3/28 仕事から帰って部屋着に着替えたとき、鏡に映った右の胸が明らかにおかしかった。
その朝も私は朝シャワーに入り全身にクリームを塗ったはずだ。そのときはふつうだったはずだ。

私の右の胸は乳頭が潰れてまっすぐになっていた。

これは高確率で乳がんだ、と思った。こんな急になることがあるのかわからないが、がんなんだろうな、と思った。

3/30は土曜日だった。歩いて行ける総合病院で、婦人科にかかりたい、と言うとどういう病状かきかれたので、急に乳首がまっすぐになって右の胸が小さくなったんです、とたくさんの人がいる窓口で言うと受付の人がなぜ婦人科に?ときくので、婦人科じゃないんですか?というと看護師さんを呼んでくれた。

土曜日なので乳腺科の先生はいないの、とそのベテランそうな看護師さんが言ったので、乳がんは婦人科でなく乳腺科だと知った。

そのまま電車で二駅隣の乳腺クリニックに行った。

そこでもちくびまっすぐになったんですけど、というとすぐ診てくれて、マンモグラフィとエコーとエコーを取りながらぶっとい針をバチンバチンと刺し細胞をとるのと血液検査をした。

看護師さんが細胞見ますか?と言うので見たら鯨ベーコンみたいな色合いの細長いものがぷよぷよと浮いていた。
刺したところを圧迫するために、腰痛バンドみたいなので身体を締め付けなければならなかった。

その間、看護師さんは家族構成や仕事内容などを聞いてくる。これはがん治療に必要なことなんだろうな、と思ったのは帰り道だ。

ひととおり検査をしてから、先生は細胞診の結果を見てみないとわからないけど、癌の可能性が高い、と普通に言った。そして全摘になるかもしれない、と言った。

半年前に私は筋腫で子宮を全摘した。
その時の全摘と今回の全摘は全く違う。正直癌は仕方ないしいつか私は死ぬし生にそこまでの執着がない方なので、そうか、というかんじだが、私は結構見た目にこだわる人間である。
胸がなくなる。
全摘とはそういうことだ。
でもまだその時は可能性の段階だった。

2週間ほどして癌の確定診断が出て、大きな病院へ行くことになった。そこでまた検査をする。MRIやCTなど。

5/21 夫が呼ばれた。撮った画像を見せられた。
本当に、見事なくらい、右胸の全部が癌だった。まだ2ヶ月も経ってない。

私の癌はしこりをつくらない。小葉癌、というものらしい。そのときまでは薬物療法などで癌を小さくすれば、などと考えていたが、明らかに無理だった。

手術、どうしてもしなきゃいけないですか?と足掻いてみる。
手術しないという選択はできないです。可及的速やかに手術をする必要があります。医者が言った。

まあ、そうですよね。この写真を見たら、まあ、無理ですよね。で、可及的速やかに、ってどの程度の速さだったっけ?

やはり化学療法をしても元が広範囲のため残せる部分が少ない。全摘は確定になった。

全摘は絶対嫌だ。でも手術しないと死ぬ。生に執着してはいないが、かといって積極的に死の選択肢は選ばない。嫌でも手術はしなければならない。

前回の子宮全摘の時と同じように、私の答えは決まっている。それが絶対嫌なことでも、最終的に辿り着く答えが手術とわかっている。

今、病室で書いている。明日午前中私は手術を受ける。




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