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「千葉県・船橋チーム」初回セッション(前半)

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局です。

「Tカードみんなのエシカルフードラボ」では、未来につながる食の循環をみんなでつくることをミッションに、食べられるのに使われていない(=未利用)資源を使って商品を開発する「未利用魚活用プラットフォーム」を立ち上げています。 

2023年1月21日に「船橋チーム」の初回セッションを地域の方、流通の方、T会員の皆さまとオンラインで開催しました。

午前の部は未利用魚を活用した商品開発に向けて、江戸前(東京湾)漁業、今回使用する未利用魚「コノシロ」について知り、魅力と課題を発見していくオンラインフィールドワーク、午後の部は、オンラインフィールドワークで発見した魅力や課題をもとに「コノシロを活用した商品」を通じて、社会に対して発信したい「価値ストーリー」を考える共創セッションを実施しましたので、その様子を前半と後半に分けてお届けいたします。

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●参加者
海光物産株式会社 大傳丸 大野さん
海光物産株式会社 中仙丸 中村さん
海光物産株式会社 宗形さん
大傳丸 弓削田さん
中仙丸 中村昇大さん
株式会社こだわりや 藤田さん
株式会社エスエスフードインターナショナル 大谷さん
株式会社エスエスフードインターナショナル 松村さん
一般社団法人Chefs for the Blue 佐々木さん
3名のT会員
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー
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1. 参加者の自己紹介

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○Chefs for the Blue 佐々木さん
Tカードみんなのエシカルフードラボのコアメンバーであり、Chefs for the Blueという料理人団体の代表をしています。また海の未来をみんなで考える活動をしています、宜しくお願いします。 

○海光物産 中仙丸 中村(繁久)さん
大野さんの大傳丸と一緒に船橋で漁業をしています。宜しくお願いします。 

○海光物産 大傳丸 大野さん
佐々木さんにお声がけいただき、このプロジェクトに参加しました。皆さまとコノシロの夢のような加工品ができるのを思い描いています。宜しくお願いします。 

○海光物産 宗形さん
海光物産は大野と、中村が代表を務めており、鮮魚の卸・流通・加工をしている会社です。そのなかで営業を担当しています。宜しくお願いします。

○大傳丸 弓削田さん
先日、漁の最中に怪我をしました。そういうことも踏まえて命懸けでとっているコノシロなので、皆さんといい商品を作りたいと思います。宜しくお願いします。

○中仙丸 中村(晃大)さん
先ほど挨拶をさせてもらった父と船橋で漁をしています。体動かして、頑張って魚をとっています。その魚で皆さまと一緒にいい商品を作り、世の中の多くの人に食べてもらえたらと希望を持って参加しています。宜しくお願いします。 

○T会員 Hさん
前回の八幡浜にも参加させていただき、今日は2回目です。ダイビングをしていて、魚も海も大好きで、未利用魚については前から命をいただいているのに食べられていないことが嫌だなと思っていました。コノシロは食べたことがなかったですが、シンコ・コハダは大好きです。コノシロはその出世魚なのに、大きくなると価値が下がってしまうのはかわいそうなので、なんとか美味しく食べていただけるようにしたいです。宜しくお願いいたします。 

○T会員 Sさん
セッション初めてです。魚は料理するのが大好きで、送っていただいたコノシロも、美味しくいただきました。後で調べてみると、コノシロは、「鰶」。魚へんに、祭りなんだなと知りました。今日のセッションも祭りのようにアゲアゲで、「じゃあまたみんな集まろう!」って感じで楽しみたいと思います。宜しくお願いします。

○T会員 Kさん
食物アレルギーの人でも一緒に食べられるものを販売しています。コノシロは2度揚げした南蛮漬けにしたらとても美味しかったです。いいアイデアを出せたらいいなと思います、宜しくお願いします。 

○エスエスフードインターナショナル 大谷さん
海光物産の宗形さんにお声がけいただき参加しました。冷凍食品、常温食品を作っています。骨まで食べられる加工を得意としていますので、何か貢献できることがあればと思っています。宜しくお願いいたします。 

○エスエスフードインターナショナル 松村さん
今回初めて参加します。食品メーカーとして長くやっており、このような機会でメーカーとしてどういったことで貢献できるか勉強させてもらいたいです。船橋育ちで地元に貢献もしたいので、宜しくお願いいたします。 

○こだわりや 藤田さん
東京、神奈川、千葉、埼玉に自然・オーガニック食品の店舗を50店舗展開しています。オーガニック、無農薬栽培、化学合成添加物を使わない、また作り手さんの想いを大切にしています。今回も作り手さんと食べる方の思いをつなげていい商品ができればいいなと思います。宜しくお願いいたします。 

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皆さまの自己紹介が終わり、早速「江戸前(東京湾)漁業」を知っていただくためのオンラインフィールドワークに入ります。 

事前に事務局で撮影した映像と記事をご覧いただきながら、江戸前(東京湾)漁業が開発などにより少なくなっているという現状を踏まえ、まず江戸前(東京湾)漁業がどのように始まり、どんな変遷を辿っているのか、またそこに対する課題について、お話を伺いました。

海光物産 大傳丸 大野さん
海光物産 中仙丸 中村(繁久)さん
海光物産 宗形さん
Chefs for the Blue 佐々木さん

2. 江戸前(東京湾)漁業の魅力と課題

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●江戸前(東京湾)漁業のはじまりと変遷
・江戸前(東京湾)漁業の始まりは徳川幕府の時代に紀伊から漁師を連れてきて、いまの佃島で魚をとり幕府に献上したのが発祥。
・江戸前寿司は、江戸の前浜でとれる魚を元に組み立てられてきた食文化。
春は、カサゴ、シャコ、ハマグリ、アオヤギ、夏は、スズキ、カツオ、アジ、秋は、サバ、イワシ、冬はアカガイ、ヒラメ、イカ、全て江戸湾で獲れて、江戸前寿司が発展してきた。
・昔の東京湾はとてつもなく豊富な漁場で、たくさんの魚種がとれていた。
・昭和30年代後半〜40年代初頭のピーク時には、東京湾で年間19万トンの漁獲量。
今は約2万トンに減少
・1970年代初めには東京湾の水銀や公害が問題となり、東京湾の漁業を知らない人からは「東京湾で漁業
なんてやってるのか?」「東京湾の魚なんて、食べられるのか?!」と言われていた。
・輸出や雇用で立国した日本という国で、翻弄していたのがこの地域の漁業者だった。 

●江戸前(東京湾)漁業や船橋の漁港の特徴
・船橋で水揚げ、計量、箱詰めをしてすぐに築地に運べたため、鮮度抜群。
・船橋は漁業者が自ら魚を販売するユニークな漁港。(一般的には漁業者が漁協組合に魚を預けて、組合が
流通する)他の漁港よりも自由度が高いが、行政からの支援が受けにくい。
自ら魚を販売するので、飲食店などに直接魚を提供している。 

●江戸前(東京湾)漁業の課題
・藻場がないなど生態系や環境変化により、とれる魚種が大きく変化している。
・ブリの幼魚のイナダ、タチウオ、サワラ、マダイなどは入ってきている一方、昔からとれていたカレイ、
イワシ、ボラ、シバエビ、ワタリガニの激減。
・東京湾の環境が自浄能力もなく、高度経済成長期のつけを払っている状態。
・高度経済成長の工業地帯のイメージが強い人からは、東京湾の魚食べられるの?臭いのでは?と言われ
る。特に年配の方に多いのではないか。
・飛行機など輸送の発達で、東京から離れた場所から輸送される魚の方が価値が高くなり、以前に比べて築地からの距離の近いという優位性が活かしにくい
・以前ダイヤモンドグレースが座礁して石油が流れた時、海面に原油が漂い、中和剤を大量に撒いた結果、カビに覆われたような状態だった。そういう中で失われた資源もある。 

●江戸前漁業の可能性

海光物産 宗形さん
大傳丸 弓削田さん
中仙丸 中村(晃大)さん

・東京湾は、漁業だけでなく、工業船やタンカーが往来し、高度経済成長を支えるために受け入れなけれ
ばいけない湾。それでも漁業者がとれる魚があるのは奇跡に近い。
・大事なのはこれから何ができるか。
・川の排水は、格段にきれいになっていると思うし、東京湾の魚は臭いから使えないという言葉は、
昔の情報がアップデートができていないだけではないか。
・消費者のイメージを変えていく上で、キーとなるのはお客さんより、作り手や、とる側の人間提供者で
はないか?いかに価値を伝えられるかは自分達の力。
Chefs for the bleuの料理人など東京湾の魚のおいしさをわかってくれる人もいる
・確かなのは東京湾の魚はうまい。漁師の舌が第一
・コノシロも食用として間違いない魚でいい商品ができるはず。
・日本は世界の水産を支えてきた。ただ、とることには長けていたが、守ることは苦手。
漁業者、海を守るためにどうするか?やはり資源評価と管理をしないといけない。

3. 未利用魚「コノシロ」の特徴

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続いて、今回使用する「コノシロ」の特徴や美味しさをラボメンバーからいただいたご質問と合わせてご紹介させていただきます。
 
●コノシロについて
 
Hさん:映像でコノシロの漁獲量は1位、産出額は3位となっていましたが、それはどうしてでしょうか?
また、シンコ・コハダ・コノシロの順番かと思いますが、少し大きいコハダも、お寿司になるとお聞きしました。コハダをコハダとして扱うサイズは、扱う人次第ということですが、コノシロはお寿司のネタとしてはダメなのでしょうか?
 
大野さん:一つ目の質問ですが、つまり価値を伝えきっていない、人間の口に入らないのが原因だと思います。目標は漁師に払うコノシロの単価をこのプロジェクトをきっかけに2倍にしたい。コノシロは再生産のサイクルがここ数年順調で、幼魚であるシンコが毎年たくさんいて、取りきれないし、1日のさばける量も決まっているので、少ししか取らずに後は生きているうちに放流しています。東京湾全体のポテンシャルを高められるのがコノシロだと思います。
 
宗形さん:どこからが、シンコ・コハダ・コノシロが曖昧なのは、ブリなどの出世魚でも同じです。シンコとコハダは基本お寿司のネタで、小さければ小さい方が高価で、それを何枚載せられるかがお寿司屋さんの腕の見せ所だったりします。コハダは、1尾1貫、半身1貫で、それ以上になると、骨が当たるのでお寿司にならないということで、コノシロはお寿司に使わないということになります。それも昔からの慣例でコノシロはお寿司に向かないと思っているだけだとも思います。
 
佐々木さん:コノシロがお寿司にならないか?でいくと、おそらくありますが、宗形さんのお話のように骨が当たるので酢に長時間つける工程が必要です。また資源管理の補足をしますと、魚の再生産を考えたときに、小さい魚をとるのは、将来にとってはマイナスがあるので、同じ魚をとるのであれば産卵後の大きな方が再生産につながりやすいという面があります。東京湾の資源で再生産が順調なシンコ・コハダを取ることが「悪」ではないのですが、どちらかと言うと、やはり大きいものをとった方が、海にとってはいいと考えます。
 
Sさん:コノシロは成魚になるまでどのくらい期間がかかるのでしょうか?また先ほどのHさんの漁獲量と産出額のお話、調べると熊本は漁獲量が少ないのに産出額が高かったり、岡山で結構食べられていたりするようですが、西の文化がなぜ東に来ないのかな?とも思いました。
 
佐々木さん:おそらく熊本はコノシロという魚の名前を使っていますが、産出額が高いのはコハダのことだと思います。寿司業界では有明海のコハダがブランドなので、漁獲は少ないけれど高値の取引になっていると思います。
 
大野さん:コノシロですが、今年生まれた魚は、来年には成魚になると思います。あと文献にありましたが、「コノシロ」が「この城」つまり「この城を食うとか、焼く」というイメージで江戸っ子、関東ではその名残があって避けてきたのかもしれません。
 
●コノシロの食べ方
 
・オイルサーディン、団子汁など、イワシにとって変わることができ、どんなメニューでも美味しい。
(イワシよりも少し上品な味わい)
・「コノシロの押し寿司」は抜群で、船橋の名産にしたい。
・「なめろう」との相性もいい。味噌や野菜などとも合わせれば、パーフェクトな副食。
・「コノシロのフライ」は、アジフライはない美味しさ。揚げの相性がいい。
・癖のない魚で、骨の課題については高温高圧処理ができれば骨も柔らかくできるので煮付けなどもいい
・煮付けやパン粉付(フライや唐揚げ)
・「コノシロ」は韓国では人気。秋になるとソワソワして待つ、日本のサンマ的な位置付けの魚で、
塩焼きや刺身をコチュジャンで和えたりしている。
 
「逆出世魚の逆襲」というプロジェクトを作り、コノシロの加工品作りに着手されている海光物産の皆さま、今回のプロジェクトで試作品をつくられているエスエスフードの皆さまからも、コノシロの魅力や美味しい食べ方について、お伺いできました。
 
また事前にT会員の皆さまには、コノシロのフィレをお送りしていたのですが、Sさんがコノシロをどんな風に料理したかを動画にしてくださり、野菜とコノシロのオーブン焼き、コノシロのパスタ、ピザ、八宝菜風、柳川風、、、などどれもおいしそうなメニューにチャレンジしていただき、コノシロのポテンシャルの高さを改めて実感しています!
 
たくさんの商品アイデアや、美味しい食べ方を伺い、今回つくられる商品を販売いただく「こだわりや」の藤田さんからも「家庭での食がテーマなので、使いやすい、便利、食べやすい、料理しやすいことが重要。気軽に買えて食べられる商品ができたらいいなと思います。また東京湾についてのお話もありましたが、コノシロのポジティブなイメージや、いい部分のキーワードをたくさん出したい」とコメントいただきました。
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午前の部のオンラインフィールドワークでは、映像を見て、記事を読んで、江戸前(東京湾)漁業を漁師さんの観点、加工会社さんの観点からお話を伺い、江戸前(東京湾)漁業の現在地を皆さまと一緒に確認できたのかなと思います。
午後の部は、皆さまが感じた魅力や課題を共有し合い、社会に対して発信したい「価値ストーリー」を、地域・流通・T会員の皆さまで共創していきます。

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