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「羆嵐 吉村昭」を読んで

1915年(大正4年)に起きた三毛別羆事件を題材にした作品。三毛別羆事件は体長2.7m、体重380kgの羆が三毛別六線沢の集落に突如現れ、民家を襲った史上最悪の熊害(ゆうがい)事件。本件では死者8名、負傷者3名を出したが、これはわずか2日間での出来事だった。


いくら人間が武器を所持し、大人数が力を合わせたところで、巨大で獰猛な羆の前ではただの非力な餌にすぎない。失意と希望のはざまで揺れる村人たちの感情と、過酷な環境で懸命に生命を繋ごうとする様子がとても心に残った。


生きるためとは言え、生態系を壊したのは人間。この事件が語り継がれる理由は、羆だけを責められないところにあるのではないか。

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