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9%で醜態

金が無い。やることといえばコンビニで缶の酒を買って飲み歩くこと。居酒屋に行く金もない。


今日も友人と文字通り飲み歩く。
彼女は酒癖が悪すぎる、あまりにも。酒が回って楽しくなってくると、彼女は軽く笑いながら『 死にたい』とよく言う。死にたいわけが無い楽しい時に彼女から出てくる言葉だ。

まずは霊園に行ったそこでしばらく歩いて、疲れたので芝生に2人であぐらをかいた。するとすぐに管理人が自転車に乗り、僕らの目の前の墓に『 修理中』と書かれた札を置きに来た。『 大丈夫ですか?風邪引きますよ?』管理人は言った。当たり前だ僕たちは雨の中霊園であぐらをかいているのだ、そして最も恐ろしいのはこの時2人はまだ素面である。『 こんな2人に声を掛けるもんじゃないよ、こういうのは放っておくのがこの世の定石だよ』と言いたかった。優しいね管理人さん。

2本目の缶のタブを開けた頃彼女は前転したいと言い出した、それを楽しみにしていた。3本目彼女はマンションの前のカラーコーンを被り『 ここはどこ!!』と言った、お前は誰だと思った。最高に面白かった。4本目をスーパーに買いに行きエスカレーターに乗ったとき、彼女は落ちた。顔から。『 大丈夫!?』と駆けつけると、彼女は笑顔だった酒は怖い。もう飲まない一生禁酒。死んでもいいとさえ思った日。幸せは確実に近くにあった。その日僕の下心は0%だった。彼女は9%で死んだ。

朝起きて彼女が言った『地獄だね』。間違いない。死んだ確実に。昨日の記憶が途切れ途切れだ。情けないみっともない。だが言うなれば、前世に醜態全てを置いてきた。晒してきた。チャリで来た。きっとここまで。

『今日も1限からだね』友達からのLINEで現実に急に引き戻された気がした。彼女は今日も懲りずに飲みに行った。一生禁酒禁止でもしているのだろうか。死に急ぎすぎだよ。でも悪くないね。いや長生きしよう。

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