見出し画像

無名だった「おむつサブスク」が10万人の保護者に使われるようになるまで

こんにちは!
BABY JOB株式会社の代表をしています、上野公嗣(うえのこうじ)です。

私たちは「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」というビジョンの実現に向けて、保育園向けのおむつのサブスク「手ぶら登園」保育園を探せるサイト「えんさがそっ♪」を運営しています。

前回のnoteでは「手ぶら登園」の立ち上げまでを書きました。

今回は、サービスの立ち上げ期の無名で誰からも振り向いてもらえなかった頃からどのようにして保護者の方にサービスを利用していただけるようになったのか、その経緯や苦悩を書いていきたいと思います。

今回のnoteのアイキャッチ写真は去年、メンバーと一緒に撮った集合写真です。このメンバーと一緒にいろんな出来事を乗り越えてきました。

特に下記に当てはまる方に読んでもらい、私の想いが伝わると嬉しいです。

・子育てのちょっとしたストレスをなくしたい
・子どもが生まれたら時短サービスをうまく活用してみたい
・保育園の送迎をもっと楽しい時間にしたい
・子育てをしている人の支援がしたい


「おむつ困ってないです」保育園から断られ続ける日々

「手ぶら登園」は、保育園に導入していただくことで、その保育園に通う保護者が使えるようになるサービスです。そのため、たくさんの保護者の方に使ってもらうためには、たくさんの保育園に導入してもらう必要があります。


手ぶら登園の仕組み

サービス立ち上げ期は、「通っている保護者のためになるサービスを無料で導入できるんだから、断る理由なんてないだろう!」と思って、とにかく手ぶら登園を知ってもらうために保育園にひたすら電話を繰り返していました。

しかし、蓋を開けてみると、1000園に電話しても「話を聞いてもいいですよ」と言ってくださる園は1園だけという驚異のアポ獲得率の低さでした。笑

保育園さんに「おむつに困ってないです。保護者が持ってきて持って帰ってくれるので課題はありません」と言われた時は、とても衝撃を受けました。

確かに考えてみれば、戦後75年間、保護者がおむつを持ってきて持って帰るというやり方をずっと変えずに運用してきた保育園側からすると課題ではなく、「そもそも困ってない」と感じるのは当たり前のことだと気付かされました。

むしろ「おむつの定額制サービス」という聞いたこともないサービスに、保育園側は不信感すら抱いていたのかもしれません。(笑)全く話を聞いてもらえない状態が続いてしまい、社内メンバーもかなり疲弊してしまいました。


サービス立ち上げ直後のコロナを逆にチャンスと捉えた

2019年7月に手ぶら登園を立ち上げて、なかなかアポが取れずに苦戦しながらも「よし、ここから全国に広めていくぞ!」と意気込んでいた矢先、転機が訪れます。新型コロナウイルスが流行し、2020年4月に緊急事態宣言が発動されたのです。

保育園は休園を余儀なくされ、子どもたちは保育園に通うことができないので当然おむつのサブスクの必要性もなくなりました。これから手ぶら登園を広げていこうとしている私たちにとってピンチが訪れましたが、私は逆に保育園と仲良くなれるチャンスだと捉えました。

保育園が今困っていることは何だろう?何をすれば喜んでもらえるだろう?ということを考えると、おむつのサブスクの案内をすることは不要。むしろ保育園が必要なものは、マスクや空気清浄機なのではないかと考え、全国の保育園さんに販売していくことにしました。

当時マスクは品薄状態だったため、「まさに今欲しかったものだったので助かります」と言われるようになり、徐々に保育園との関係性が深まるようになり、コロナが落ち着いたタイミングでは少しずつ手ぶら登園の話を聞いてもらえるようになりました。

その後2つ目の転機になったのは、2020年12月に「日本サブスクリプションビジネス大賞2020」でグランプリを獲得したことです。


サブスク大賞2020でグランプリを獲得したとき

サブスク大賞のグランプリをとったことで、メディアに取り上げられる機会が増え、保育園とお話しするときも「先日テレビで見ました」「サブスクって流行ってますよね」と良い反応をいただけるようになってきました。

コロナ渦で保育園さんとの関係性が深まったこと、またサービス認知が上がってきたおかげで手ぶら登園の導入数が徐々に増えていきました。

保護者は「子育てがしんどい」と言いづらい。だから代わりに伝えていく

サービスが広がるまでのもう一つの困難は保護者の方に使ってもらえないことでした。
保育園に導入されても、そこから保護者の方に使ってもらえなければ意味がありません。

なぜ保護者にメリットだらけのサービスなのに利用していただけないのだろう?と思って保護者に直接インタビューをしたところ、保護者はこのサービスを使うことに引け目を感じていることに気付きました。

・保護者は「子育てがしんどい」と周囲に言いづらい
・子育ては苦労してこそなんぼだという風潮がある
・おむつの持ち込みも持ち帰りも当たり前だと思っている

「子育てがしんどい」と言いづらい世の中のため、保護者のゆとりにつながるおむつのサブスク手ぶら登園は利用しづらい・罪悪感を感じるという構造だと分かってきました。

そこで、保護者の代わりに私たちが社会に対して「子育てってこんなに大変なんだよ」とメッセージを伝えることで社会の理解を深めたいと思いました。
社会の理解が高められたら保護者が声をあげやすくなりますし、課題が見えることでサービスも使いやすくなります。

多くの人におむつに名前を書くことの大変さを知ってもらうために、4児の母である辻希美さんをアンバサダーに迎え、記者会見で発信をしました。

辻さんと杉浦さんにおむつの名前書きを実演していただき、その大変さが多くのメディアで取り上げられたおかげで、「紙おむつって毛羽立ってるから名前書きにくいんだよね」「名前スタンプ使ったら服にインクがついたりするんだよね」など、リアルな保護者の声がSNS上で増えたように感じます。

ほかにも、地域によっては保育園で使用したおむつを持ち帰っている風習があるということを調査し、これを広く知ってもらうための活動を行いました。

さらに、この昔から続く風習を厚生労働省に見直してもらうために、オンラインで集めた1万6千人分の署名と要望書を加藤勝信厚生労働大臣に提出いたしました。その結果、厚生労働省は各自治体に対して「保育園で出た使用済みおむつは園で処分することを推奨する」という通達を出しています。


撮影「寺田静事務所」

このような地道な発信を積み重ねたことで、徐々に保護者の方に「子育てはしんどい」と言っていいんだ!と思ってもらえるようになった気がします。

常に誠実なサービスでありたい

そこから、利用していただく保護者が増えてきたことで新たな壁にぶつかりました。

保護者の方が何かサービスに対する不便や不満があったときに、直接保育士に言ってしまうことです。これだと保育士の負担が増えてしまうため、どうにか不便や不満を減らして保護者・保育士ともに快適に利用していただけるようにできないかを考えました。

例えば、「コロナ禍で休園したので、返金してほしい」と数人の保護者から声が上がった際には、その園だけではなく、手ぶら登園を利用している全園に対して休園情報を確認し、コロナに感染して保育園を休んだ利用者にはAmazonギフト券として返金できるよう意思決定しました。

また、手ぶら登園では解約のし忘れを防ぐために、あえて毎月解約確認メールをお送りしています。

一般的なサブスクだと利用者になるべく長く契約してもらうことが推奨されていると思いますが、私たちは「おむつが外れたのに不要な契約が続いている」という状況は誠実ではないと考えています。

本当に必要な期間だけ手ぶら登園を利用していただき、少しでも子育てにゆとりができたと思ってもらえれば十分です。
おかげで解約のアンケートには感謝の言葉をたくさんいただいており、その言葉を見るたびに本当にこのサービスをやっててよかったと感じます。


解約アンケートに書いてある感謝の言葉。いつも嬉しく見ています!

解約時のアンケートにこんなに感謝の言葉が並べられているサービスは珍しいのではないでしょうか。笑

利用者数が増えてきて、今後目指す方向性

地道な活動を続けてきた結果、今では4,000施設を超える保育園に導入いただいており、累計利用保護者数も10万人を突破しました。

それでもまだ全国に40,000もある保育園のうちたった10%しか導入されていないのが現状です。転園された保護者の方から「転園した先に手ぶら登園がなくて本当に残念」という言葉をいただいたり、これからお子さんを保育園に入れられる保護者の方から「うちの園にも手ぶら登園が入るように、営業頑張ってください!」とあたたかいお言葉をいただくことが増えてきました。

これからもっと多くの園で利用できるように、今は、地方の自治体と連携して、公立園全園に導入するなど、新しい取り組みを始めています。

今後もっと手ぶら登園を広めていきたい!という想いはもちろんありますし、ビジョンである「すべての人が子育てを楽しいと思える社会」を作っていくためにやりたいこと、考えていることがたくさんあります。

熱い思いを書いていくと長くなりそうなため(笑)、私が今後作っていきたい社会や目指す方向性に関しては次のnoteでじっくり語らせてください。


ここまで読んでくださった方へ

このnoteを読んで、良いなと思っていただいた方、少しでもおむつのサブスクが世に広まってほしいと思っていただいた方はぜひSNSでのシェアをいただけると大変うれしいです。

また、BABY JOBで働くことに興味が沸いた方がいらっしゃれば、以下の採用サイトを覗いてみてもらえると嬉しいです!働いている約5割がママパパで、リモートワークやフレックスタイム制など働きやすい環境です。

手ぶら登園サービスサイト
えんさがそっ♪サービスサイト
・取材依頼はこちらまでお願いします

最後までお読みいただき、ありがとうございました!