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【創作大賞2024】DrEam GamE 1話

あらすじ

この上なくリアルな夢の中で行われるデスゲーム「ドリームゲーム」に参加することになった中学生のミサキ。
彼女と同じくゲームに強制参加させられた人々とともにゲームクリアをし、無事に夢から醒められるだろうか……?

1話「エリア01」(更新中)

これは夢だ。全部夢だ。だから目を覚ませばすぐに消えてなくなる……はずだ。

見渡すかぎりの真っ白な雪が降る中を、2頭の馬(なぜか銀色の金属の装甲と歯車、配線が剥き出しの機械でできた馬だ。生物ではない)が引く馬車が疾走していく。御者は黒いシルクハットに長めのコートを身につけた小柄な少年で、無表情のまま機械馬の手綱を素早く捌いている。

『––––ミサキ様、そろそろ指定された目的地に到着します。窓から離れて座席シートに深くお座りください』

首に革紐に通して下げていたテニスボール大の銀色の通信機から、外にいる少年御者の声がミサキの行動を見透かすかのようにそう指示してくる……やだ。私のこと、どこかから見てるのかしら。

「わかったわ。それにしても外はすごい雪ね」
『はい。気温がすでにマイナスになっておりますので、外に出られる際にはそちらの鞄の中のコートと手袋、マフラーとブーツをお使いください』
「鞄?ああ……これね。座席の下にあるやつ。ありがたく使わせてもらうわね」

ミサキが座席下の鞄を取ろうと手を伸ばすと、計ったかのように荷台部分ががくん、と大きく揺れた。

(……舌を噛まなくてよかった。もう、ちょっとスピード出しすぎじゃないこの馬車)

ミサキは口に出さずに今自分を運んでいる馬車の走るスピードに悪態をつきながら、窓の外を見てみる。夕焼けのオレンジ色が消え、うっすらと青みがかかってきた空から舞い落ちてくる雪の量が増していく。

(とても寒そう……)

ここは夢の中なのに、なぜかそう思ってしまう自分がいる。いくら現実離れしているとはいえ、感覚が妙にリアルなせいかもしれない。こんな夢は初めてだった。



数分後。鞄の中の防寒具一式を着こんだミサキは馬車を下り、突然目の前に現れた白い外壁の巨大なアパートに言葉をなくしていた。なんなの、これ。

「ね、ねえ……君。本当にここが目的地?間違ってない?」
「いいえ、確かにここで合っています。もしご不安でしたら、中までご一緒しましょうか?」

御者の申し出に、ミサキはぶんぶんと首を縦に振ってうなずく。さすがに1人で入るのは怖い。

「承知しました。では早速参りましょう、主催者ゲームマスターもお待ちですし」
「ゲームマスター?何っていうか誰それ」

ミサキの右手を引いて雪原を歩き出した御者が、くるりと振り返り「ルールに違反するので詳しくはお話できませんが、この【夢の世界】を管理されているお方です」と説明を挟む。

「……へ、へえ。そうなんだ。そういえばここの他にも場所があるの?」
「はい、ございます。ですが……ここから別の場所に向かうには【ゲームクリア】が必要になります
「ゲームクリア?」

ミサキが首をかしげると、御者は「それも僕の口からは申し上げられません」と言うのでそれ以上の質問は我慢することにした。

それからしばらくして。203という部屋番号が刻まれた白いプレートのドアを御者が内側に押すと、柔らかい明かりがミサキの視界に溢れてきた。

『––––やあ、こんばんは。外は寒かったろう、中へお入り』



203号室でミサキを出迎えたのは、革張りのソファーにゆったりと座ったボアコート姿の奇妙な人物だった。いや……人ですらないかもしれない。顔の右と左半分が学校の理科準備室の奥のほうに置かれた【あれ】–––おそらく苦手な人が多いであろう骨格と筋肉の標本そのもので、どういうわけか赤と緑にきっちりと色分けがされている。

『あれ、じっと見ているけれど私の顔に何かついてる?』

どこか一本調子な、抑揚のない声でそう言ってその人物はかくり、と首を傾げる。ミサキは目の前にいる異様な存在に身がすくんで声が出せないでいた。

『ああ、もしかして私の【見た目と声】が気に入らないのかな?』
「おそらくそう思います……ミサキ様、【この方】がゲームマスターですよ」

御者がそっと、ミサキの耳元で囁く。

「え……えっ?そうなの」
「はい。気分屋ですので、よく外見を変えてらっしゃいます」

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