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第二十二回 窮鼠霊呑

「知らないハズがないの。だって、あの子は…勝俣白(かつまた しろ)は、アナタのルームメイトだったのだから!」
「シロちゃんが…ウソでしょ…。」狼狽える呉羽。
「きっとシロは、アナタには言えなかったのでしょうね…。」二葉が憂いとも哀れみともつかない複雑な表情を浮かべる。
「貴女が知っている範囲で良い。もう少し詳しく聞かせてはもらえぬか?」学究が呉羽の代弁をするかの様に懇願した。
「良いわ。でも今から話す事は呉羽には、かなりキツイ内容になるから覚悟して欲しい。良いわね呉羽!?」二葉の脅しに少し間を置いて呉羽が頷いた。
「まずは梁山華道部について、おさらいをする必要があるわ。アナタたちも知っての通り、梁山華道部は昨年、王倫子さんが立ち上げた華道部よ。部員は、たったの四人。華撃には五人のエントリーが必要だから、最初の頃は生徒会の電子華学研究室からカゲキロイドを借りての出場だったらしいわ。」
カゲキロイドとは水滸伝に登場する人物の能力を模したアンドロイドの事であり、高山廉率いる生徒会電子華学研究室の自慢の一品である。
「倫子さんは弱小の梁山華道部を真名開華の秘術を考案して一代で上位クラスまで持ち上げた…と言えば聞こえは良いけど、実際には四人の憑依霊は、そこまで優秀ではなく真名開華を持ってしても必ず勝利できる訳では、なかったらしいわ。」「王倫一派となると、宋万達か…まぁ、そうであろうな。」学究が呼応する。「倫子さんは強い好漢を求めて一年生の勧誘し始めたわ。そして出逢ったのよ晁さんに。」「晁おねーさま…。」呉羽が瞳を潤ませる。「晁さんは入学して間もなく素養が開華し、徽宗女子高等学校始まって以来の逸材と言われていたわ。そんな晁さんを倫子さんは見逃さなかった。毎日のように一年生の教室を訪れては、猛烈にアピールしたそうよ。それこそ、周りの素養を持つ子達から白い目で見られる位に…。困り果てた晁さんはひとつの条件を提示したの…。」「条件?」呉羽が反応すると二葉の目が険しくなった。「…シロ…勝俣白が素養を開華させた時、シロと一緒に入部すると答えたの。」「その娘は、その頃から素養開華の兆しがあったのか?」学究が尋ねると二葉は首を横にふり「呉羽は分かってるでしょうけど、シロは何をやってもダメな子で、何もない平らな廊下に躓いて、顔から転ぶような子なの。そんなものだから倫子さんも一度は快諾したものの、シロに逢った途端に条件を呑んだ事を後悔したそうよ。」「それは…難儀な…。」シリアスな空気が、少し暖化する。
「シロと晁さんは同じ中学だったから、晁さんにはシロに対して強い想いがあったのかも知れないわ…自分が梁山華道部に入部する時はシロも一緒にってね。そして、その時は意外にも早く訪れたの…。」二葉は呉羽に向けた視線を逸らす事なく語り続けた。
「シロの素養が突然、開華したわ…。」

突然開華した勝俣白の素養とは?

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