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暦年贈与と不動産登記① 暦年課税の基礎控除枠を利用した贈与(暦年贈与)

例えば、自分が健康なうちに不動産を贈与して名義を移しておきたい。しかしその一方で、税金が心配だという場合には、暦年贈与による手続を選択する人もいる。


贈与の条文

まず、贈与について民法の条文で確認する。

民法第549条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

贈与とは、もらう側(受贈者)の承諾のもと、タダで財産を与える契約行為のことである。
あげる側(贈与者)が「生きている間」に、「双方合意のもと」行う等の点で、遺贈とは異なる。


暦年贈与

贈与税の計算は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計します。
 続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。
 次に、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。

  【引用】 国税庁「№.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」


1年間(暦年)にもらう財産の合計額が110万円以下なら基礎控除として贈与税は非課税となる。この仕組みを利用した贈与の方法を暦年贈与と呼ぶ。


課税判断の対象となる期間

 対象となるのは、贈与を受けた年の1月1日~12月31日の期間。例えば、贈与を受けたのが以下①~③の日付であれば、期間についてはそれぞれ次のように扱われる。

① 2021年2月1日
② 2021年12月10日
③ 2022年1月2日


上記の場合、2021年に贈与を受けた財産の合計額は上記①と②で、翌年の2022年分として③は扱われる。したがって、他にもらった財産がなければ、2021年は①と②の合計額、2022年は③の額がそれぞれ110万円以下なら贈与税はかからない。


受贈者単位

 課税対象者は受贈者(もらった人)。贈与者(あげた人)ではない。
 例えば、上記①のときにAがCに現金を贈与し、その後上記②でBがCに現金を贈与したとする。このケースで必要な場合に贈与税を申告するのはCであり、AやBではない。


基礎控除は110万円以下

 1年にもらう財産の合計額が110万円を超えた場合、超えた部分について課税される。合計額が120万円なら、ここから110万円を差し引いた10万円が課税対象となる。
 例えばCが、Aから現金100万円をもらい、Bから現金90万円をもらった場合。もらった現金がAからのみであれば非課税だが、他にBからも現金90万円をもらっているので合計額が190万円となり、110万円を超える80万円の部分は課税対象となる。


相続時精算課税との併用は不可

暦年課税とセットであがる節税対策として、相続時精算課税制度がある。

【参考】国税庁「№.4103 相続時精算課税の選択」

相続時精算課税制度を選択すると、年齢要件を満たす直系親族間の贈与について、贈与を受けた財産の合計額が2500万円以下なら贈与税としては非課税(2500万円を超えた部分については一律20%の課税)となる。ただし、控除の対象となった財産については、財産をもらった人の相続時に繰り越されるので、相続財産に含まれて相続税の課税対象となりうる。


この相続時精算課税制度は、暦年課税と一緒に使うことはできない。
したがって例えば、価額が1,000万円の土地を1回でもらうために、110万円は暦年課税で、残りの890万円については相続時精算課税を使うというのは不可能である。

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