「甘い」ではなく「甘やかな」

 19日の朝日新聞朝刊11面。「春と秋はどこへ 「二季」に?」という題で三人の方の寄稿があります。異常天候についてです。その中のひとり、ロバート・キャンベル早大特命教授が「季節表現の美意識が薄れる」の題で意見を述べています。その文章のなかに「街中のジンチョウゲの甘やかな香り」とあります。甘い香りではなく甘やかな香りです。(形容詞ではなく形容動詞を使っておられます。) 「甘い」という語のこのような使われ方を見聞きしたことがありません。
 「街中のジンチョウゲの甘やかな香り」とあると、身の回りにジンチョウゲの香りがそこ、ここに漂い、包まれているような感じを受けました。「街中のジンチョウゲの甘い香り」だと、香りそのものだけのことのような気がしました。
 
 日本語に規範文法はありません。著名な学者の名をつけた文法はあります。橋本文法、時枝文法、山田文法・・・。形容動詞を認めるもの、認めないものもあります。(いずれが適切なのかは私にはわかりません。日本語教育では、形容詞をイ形容詞、形容動詞をナ形容詞と教えているのが一般的だと思います。

 「やか」は接尾語で「名詞、形容詞語幹、擬声語など、状態を表わす言葉についてについて形容動詞を作る」と国語大辞典に説明があります。形容詞も形容動詞も状態を表しますが、形容動詞は動詞とあるだけに、何らかの「動き」が含まれているのでは、と「甘やかな香り」という記述をみてそう思いました。

「甘やか」という語は国語大辞典以外には、見出し語では載っていないようです。

 日本語が第一言語ではないキャンベル教授が、このような、あざやかな使い方をされていることに言葉がありません。

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