パキッって、何!???

⚠️家によく出る黒いあいつの話です。耐性のない方は読まないでください⚠️

21時30分、私は重い腰を上げた。
リビングから漏れる光を頼りに脱衣所へ向かう。
途中にある給湯器の前に立った。
「パキィ」
左の踵で、何かを踏み潰した感覚。
プラスチックの容器か?
はたまた、別の何かか?
その近くにあった灯りのスイッチを入れる。
私が何かを踏んだところと少しずれた場所に、黒い何かが潰れていた。
私は黒いことに気づいた途端、近所のことも気にせずに叫んで脱衣所に逃げ込む。

あれは、絶対に国民に嫌われている「ヤツ」だ。初めてみたし、触れた。
触れてしまった。

ひぃこわい、でも駆除しなきゃ、でも紙越しに形を認識するのも嫌だ……
私は逃げ場のない脱衣所で隠れながらあの感触と存在するという事実に怯えていた。
頭が混乱してきてだんだん笑いが込み上げてくる。
何も面白くないが?

もしかしたら、クワガタのメスかもしれない。
ヤツとクワガタのメスは似てるというじゃないか……
言い聞かせようとしたけれど、やっぱりあの脆い鎧はクワガタではない。エビフライの尻尾みたいなあの硬そうで脆い鎧は、ヤツでしかない。
クワカブオタクが「ヤツはメスとは全然違う。似てるわけない。可愛いわけないだろ気持ち悪い」って言ってたけど今なら気持ちが分かる。
私があれを素敵だと思うわけない。
気持ちが悪いよ……

しかし、脱衣所から動かねば。
風呂にも入れないし、駆除もできない。
隙間からその場を覗き込む。
潰れていた場所には何もいない。
どこ行った!??
ヤツはゆっくりとダンボールを登っている。カサカサと音を立てながら。

い、生きてる!!!!!!!!!

本当に生命力の塊で逆に尊敬する。
成人女性としてはちびではあるが、数十倍もでかい生命体に思い切り踏まれたのに擦り傷を負った程度の振る舞い。
本当にヤツは生命力がとんでもないんだな……

どうしようも無くなって、事故現場とヤツの居場所の間をすり抜けてリビングに戻る。
事故現場付近に掃除用洗剤を置いて、もうすぐ帰ってくるであろう親に全てを託して引きこもった。

親が帰ってきて、弱ったヤツを仕留めてもらい、私は風呂に入った。

しかしヤツのせいで、ゲリラで行われた推しのツイキャスを逃した。
踏んだり蹴ったり。

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