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「TRIGUN STAMPEDE」は少年への造詣がすごかった


ザジ・ザ・ビーストのことしか憶えてねぇ!






導入

「TRIGUN」とは、1995年から連載されていた日本の漫画作品である。

昔の作品が長い休眠期間を経てリブートされる、というのは、個人的には「BANANA FISH」が記憶に新しいが、「BANANA FISH」が原作を現代ナイズしたに留まったのに対し、こちらはさらに原作以前の時系列を描写する「ゼロ」的な存在である。

それに伴ってどうやら原作に登場しないアニメオリジナルキャラクターがいたり、原作準拠のキャラクターも性格が少し違ったりしているそうだ。

そしてキャラデザインも全体的に一新されており、制作側の「再度勃興させよう」という熱意は確かにあるらしい。

だが、それ以上の熱意、気休め程度に秘められてこそいるが、なかば執念に近いそれが幕間に覗いていた。


ハイレベルな3DCG

「TRIGUN STAMPEDE」とは、2023年に放送・配信された日本の3Dアニメ作品である。

最近は技術とノウハウの向上でそういった作品は少ないが、「3DCGのアニメ」と聞くとどこか不気味さのような、不自然さを連想してしまう癖がついている私には、かなり衝撃的な作品だった。

(おそらくこの先入観は「ポピーザぱフォーマー」であったり、「5億年ボタン」「ペンギンの問題」「団地ともお」あたりの作品が生み出したものだと思う。あとPS1時代のCGムービーとかも)

なんというか、すべてが自然なのだ。止め絵も、ダイナミックなシーンも、表情のアップも、違和感がほぼ無に等しい。

3DCGの不自然さを潰しつつ、3DCGの良さを最大限引き出した制作スタジオの手腕には惚れ惚れした。

モデルがきれいで、モーションが丁寧で、多分ライティングと構図(パース?)にえげつないほどの気が配られているのだろう。

そのおかげでずっと画がオシャレなのだ。正直ストーリーよりも、ビジュアル面にハマって見続けていた節があるくらいだった。

そしてこのビジュアル面に後押しされている本作の最たる魅力の一つが、


本題

豊富な少年キャラクターたちである。

本作には、見た目少年 or 少年時代を描写されるメインキャラクターが

・ヴァッシュ(主人公)
・ナイヴス(敵)
・ウルフウッド(同行者)
・ザジ(敵)
・リヴィオ(敵)
・エレンディラ(多分敵)

の6人もいる。他のメインキャラは10人程度なので、30%を超える少年割合ショタパーセンテージを誇る。

その上、ヴァッシュとナイヴスは双子であり、本編時点で見た目は青年なれども実年齢は150歳を超えているという準ショタジジイ属性も兼ね備える。

一方、ウルフウッドとリヴィオは同じ孤児院出身で、悪友かつ疑似兄弟のような関係性であり、人体改造を受けて肉体だけが成長してしまっているという、ヴァッシュたちと対照的な属性を持つ。

ザジはザジで人間の体を間借りしている人外ショタだし、エレンディラは多分人工的に作られた試験管ベイビー的な異能ショタ(声優村瀬歩)だし、この世の趣向を網羅する勢いである。

ショタコン大歓喜。

そんなわけで魅力的なキャラクターが多数登場する本作「TRIGUN STAMPEDE」であるが、ここではイチオシとしてザジ・ザ・ビーストを紹介したい。

したいのだが、だがこの選択は本当に難しい判断で、幼少期孤児院コンビもかなり良い。

先に書いたように二人は悪友かつ疑似兄弟のような関係性であり、なによりデザインが対になっているのだ。白と黒、無知と不良、ジト目とタレ目。ちょっと調べてみてほしい。調べてもあんまり画像出てこないけど頑張って。むしろ簡単に見れない方が燃えるという側面もある。ちなみに出てくるのは6話らしい。


ザジ・ザ・ビーストという男(?)

まずはこちらをご覧いただきたい。

ちょっとしか映らない。0.25倍速で見てほしい。


ザジとして出てない(SELECTOR 3,4枚目)。だからこの言及はネタバレ。


引きの画がない。声もない。声も良いのでもったいない。


だが魅力は伝わったと思う。なんてったって褐色白髪は正義である。

そしてこんな見た目で正体が虫。

群体で個を為す蟲の総意的なやつの、子機みたいなもん。この例えが通じる人間はほぼいないと思うけど、グレイブマインドが人の体操ってるイメージ。

だから結構な重要人物(蟲物?)で、特殊な立ち位置にいる。

どうやらナイヴズ率いる敵組織の一員らしいのだが、他の構成員と異なりナイヴズと対等の立場である。むしろ、ナイブズをはじめとする移住者たちを惑星の現住生物として見定めているから一番上かも。

それ故の余裕、振る舞い。

なのに見た目は少年。しかも借り物の器。

なのに虫を吐き出しちゃう。喉から。公式サイトのバックで延々と流れている映像にもこのカットが入っているから、きっとそういうヘキのやつが制作陣にいる。原作にも同様の描写があるらしいけど、こっちのほど"マジ"じゃないと思う、多分。
(あとで映像のことを少し調べたら、メインPVだった。なおさらやべーよ)

素晴らしい。


だがそんな彼(?)にも欠点があり、それが出番が少ないという点である。


なんでだよ。


もっと出してくれ。


3Ⅾアニメという都合上、1度作った3Dモデルはできうる限り出突っ張りにしておきたいというのが、制作側の本音なのではないのですかね。

ところがどうした。登場話と、他2,3話くらいしか出てこない。しかも出てたとしてもちょこっとだったりずっと仮面着けてたりだし。

勿体ないですよこれは勿体ない。モデルがもったいない!


正直な話

個人的には本作のメインストーリーにはあまり引き込まれなかった。たしかに、不幸体質ながらも底抜けた好青年であり続けるヒューマノイドタイフーンの冒険譚、というプロットに需要はあるだろう。

だがその旅路に色を添えるのはどうしたってナイヴズでしかなく、じゃあこれ結局ただの兄弟喧嘩じゃねえかと。ブラコン兄とマザコン弟のすれ違い暴走じゃんかと。

そんでヴァッシュも兄ちゃんとしっかりケリをつけることなく終わった(原作のホントのラストではケリをつけているのかもしれないけど)。

なんというか、どうにも、生煮えた内輪揉めの不始末に終始し過ぎていまいちテンションが上がらなかった。

それでも最後まで見続けたのはアニメーション技術のおしゃれさと、個々キャラクターの魅力が動力である。

それがザジ・ザ・ビーストであり、幼少期の孤児院コンビであり、その他多数であった。

おそらく原作ファンからは一家言ありそうなほどのデザイン大改修によって、私のようなクソニワカが引っかかれたのだ。

そういう意味では成功かもしれないが、作品の骨子に馴染めていないという意味では私は失敗作である。

とまぁ眠い頭でまとまりのない文章を吐き出してしまったが、なにはともあれ、一先ずは制作決定しているらしいSTAMPEDEの完結編を待ち、ザジ・ザ・ビーストの出演時間に心を募らせることにしよう。

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