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陰キャと顎関節症は骨伝導(GEO)を買ってはいけない

こんなタイトルではヘッドホンのレビュー記事だと思われないかもしれないけど、これは間違いなくGEOの骨伝導ワイヤレスヘッドホンのレビュー記事だ。

パッケージ

まずはパッケージから。これが正面。

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Amazonの安い骨伝導イヤホンの商品画像と、画像加工の質は大差ない。イヤホンだけ浮いてるんだよな。ちゃんと俳優雇えよ。天下のGEO様だろ?

そしてこれが裏面。

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君の言いたいことはわかるよ。「どうして裏面なんか載せたの?」
正直なところ、僕にもわからない。

ちなみに、パッケージはこんな風に開くようになっている。

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このギミックは、この記事を作るためにパッケージをあれこれ撮影してた時、初めて気が付いた。

まあ、デザイナーに支払われてるギャランティが不安にならない程度の出来だ。同価格帯の骨伝導イヤホンをAmazonで買おうとすると、宝くじ2等くらいの確率でしかまともな製品と出会えないだろうから、GEOが謳う「価格破壊」は伊達じゃない。

初めて骨伝導イヤホンを買うならこれだろう。そして僕はきっと二度と買わない。

内容物

骨伝導イヤホン(黒):1つ
microUSBコード(黒):1本
耳栓(黒):1対

以上。外の音を聞きながらの使用を推奨しているイヤホンの箱に、なぜ耳栓が? という疑問はもっともだ。しかしちゃんと意味があった。これについては後述しよう。

本体について

さて、ようやく骨伝導イヤホンそのものについて説明する時が来た。これがその骨伝導イヤホン。

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僕がこの画像を再度貼る面倒を省かなかったお陰で、君たちは記事のヘッダー画像を見にスクロールしなくて良くなった。感謝してほしいものだ。

細かいスペックは既に公式サイトや他の紹介記事で明かされていると思うから、詳しくは書かない。

電池持ちは悪くないだろうね。僕の場合は1日つけてても電池切れにはならない。精々2日に一度充電すれば足りると思う。永遠に音楽を聴いていなきゃならない強迫性障害の気がある人にとってはわからないけど。そういう方には、個人的には4分33秒をリピート再生するのをお勧めする。最近ので言うとフルフルの戦闘BGMかな。

充電端子はmicroUSBだ、くそったれ。まさか2021年発売の無線イヤホンに、microUSBがついてくるとは思わなかった。平成時代の金型を使いまわしてるのか?
なんて冗談めかしてみたけど、実際、Amazonに同型の機種と思われる商品はいくらかある。Made in Chinaは金型の再利用がお家芸。そのおかげで僕らが安い商品を手に入れられているわけだから、文句は言えないけれど。

ちなみに充電コネクタはクソ硬い上に、防水カバーが端子に干渉する。

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指で何とかカバーを押しのけつつ、差さったのか差さってないのか分からないくらい浅いコネクタに捻じ込む作業はかなり億劫だ。勿論充電されていればコネクタ上のLEDが光るけど、光が淡過ぎてどうしようもない。差し込んでるときは指の下だしね。


そしてお待ちかねであろう音質についての話。

イヤホンってのはいつだって音質が取り沙汰されるし、僕としても音質は良いに越したことはない。

しかし、このイヤホンの場合、音質は二の次だ。重要じゃない、とまで言ってもいい。なんなら音響機器ですらない、ただのおもしろガジェットかもしれない。

ということで、音質については特筆しない。可もなく不可もなし。DAISOの300円イヤホンよりは、悪い。それだけ。


そして音漏れについて。これもイヤホンレビューに必須の項目だし、骨伝導となるとその構造上音漏れがし易いため、ユーザーにとっては死活問題だ。

結果から言うと、漏れる。相当に漏れる。実質耳のそばにスピーカーがあるのと変わらないので、まあ仕方がない。あとクソデカ音量にすると触れてる部分がぶるぶるしてこそばゆい。これも仕方ない。

しかも、着用時と非着用時だと音の響き方がかなり異なるため、どれくらいの音量の時、どれくらいの距離だと、どの程度漏れているのか、を正確に測ろうと思ったら、ダミーヘッドのようなものが必要になるだろう。小ぶりなスイカでもいいか。

とにかく、音漏れは僕らの想像以上にしている、と考えれば、何の問題もない。


そして低価格骨伝導イヤホンの最重要点、これは本当に骨伝導なのか否か。

Amazonで「骨伝導イヤホン」と入力し、価格を0~1500円、1500~10000円に絞って検索をかけて、手ごろなレビューを見てみるとよくわかる。
低価格骨伝導イヤホンの市場はもう終わっている。

そこには、骨伝導イヤホンがほとんど存在していない。ただのイヤホンからスピーカ部を引きちぎって、それっぽいプラスチックのケースにはめ込んだだけの、なんちゃって骨伝導イヤホンだ。
(このタイプのイヤホンにも市民権はある。ただし「骨伝導イヤホン」としてではなく、「オープンイヤーイヤホン」としてだ。これもGEOに商品として置いてある。価格はもちろん骨伝導より安い)

ここでの見分け方として、耳栓が出てくる。

骨伝導イヤホンは、文字通り骨から伝導した音を主にしているため、耳栓をしても音が聞こえる。当たり前だ。
しかし前述のなんちゃって骨伝導イヤホンは、空気から鼓膜への伝導のみであるため耳栓をすると聞こえない。

つまりパッケージに耳栓を同梱するという事は、「これは正式な骨伝導イヤホンである」という自負な訳だ。
また、耳栓をすると低音が聞き取りやすくなる。この用法はパッケージにも書いてある、正当なものだ。

そこまでして音質を重視するなら通常のイヤホンを使うと思うけど。


というのが、一般的なイヤホンに関するレビュー。そしてこれからが僕の個人的な感想になる。

タイトル回収

これは、どういうシチュエーションを想定して作られていたのだろう。イヤホンを使いたいけど、周りの音を聞きたい。そんなシチュエーション、いつだ。

周辺の音を聞きたいってことは、家の中では出番が少ない。商品説明では調理中にお使いいただけます、なんて書いてあったけど、普通にスピーカーで聞けば収まる話だ。家族に聞かれたくない、部屋がレオパレスだ、いろいろ言い分はあるだろうけど、わざわざ「骨伝導イヤホン」というトンデモアイテムを使ってまで叶えたいかと聞かれたとき、本当に首を縦に振ることができるか?

となると外での利用という事になる。しかしどうだ。僕が外でイヤホンを使う時、それは外界を遮断したい時だ。きっと君たちもそうだろう? このタイトルをクリックするような連中は、みんなそうだろう。

つまりだ。このイヤホンのターゲットは、音楽が好きで、かつ外で主に活動し、かつ周辺の誰かと常に会話しているような連中だ。

独りでいるなら、外の音なんて聞こえなくていいものな。

ん? ジョギング中とかに車の接近音が聞こえないと危険だから、そういう用途なら一人でも使うだろ、って?

運動してる奴はテストステロンが出てるからみんな陽キャなんだよ。分かったかい。分かったかい!


とにかくだ。骨伝導イヤホンは独りぼっちに当たりが強い。これは本当。

それに、強いのは当たりだけではない。両こめかみへの圧迫も、かなりのものだ。


きっとこれは、健康な顎を持つ者にとっては、児戯に等しい力なのだろう。しかし僕をはじめとした顎関節症予備軍、本軍にとっては致命傷足りうる。

僕の場合、約30分が限度だ。

それを超えるとじくじくとした痛み、あるいは開閉時の音、あるいはその両方が高確率で発生する。

しかもイヤホン側のエイムも尋常ではなく、手でずらしてみても10秒後には急所たる顎関節円板、正にその在り処を狙われてしまう。

その上、この製品はボタンを押すことで音量調節や曲送りなどが可能なのだが、そのボタンは両の骨伝導振動子をこめかみに押し付けるように押下する必要がある。

「うわ、音でか!」「この曲どうでもいいから次のにしよ」そういった欲求が湧いたとき、同時に僕らの脳内には天秤が浮かんでくる。

「その欲求は、こめかみに対する暴挙を打ってでも実現したいものか?」

答えは、NOだ。


現実的に考えれば、イヤホンを押さえつつボタンだけ押せば、こめかみに対するダメージは最小限に抑えられる。ただ、これは単純に面倒なのだ。

ちなみに、良い骨伝導イヤホンは鉛直方向にボタンを押下する仕様になっているらしいため、ちゃんと考えられているようだ。所詮安物である。


総評

ここまで色々、割と自重すべきかもしれない色々を書いてきたけれど、総評としては「悪くはない」。

そもそも市場にあまり出回っていない骨伝導イヤホンという商品を一般に売り出しただけでも、大変な偉業といえる。これが出るまでは、安く骨伝導イヤホンを買うとするとAmazonみたいな通販サイトしかなかったわけで、そこいらは治安がすこぶる悪いから、結局まっとうな骨伝導イヤホンに出会えず落胆するのが関の山だったわけだ。

それが3000円強で、きちんとした骨伝導イヤホンを体験できるようになったのだから、未知のテクノロジーに容易く触れられるという点において、GEOはそれをやり遂げて見せたし、これがただのおもしろガジェットに過ぎないんじゃないか、という視点はここに帰着する。

ただし僕個人の目線からすれば、骨伝導イヤホンは「使えない」。というより、使わない、といった方が正しいかもしれない、

それは単純に使うシーンが僕にないことも起因しているし、長時間つけると痛みが伴うという致命的な欠陥も内包している。

しかしながら、僕にはこのイヤホンを買ってまで実現したいシチュエーションを想像できない。

耳を解放しつつ音楽を聴きたいのならイヤホンを半抜け状態にしていれば良くないか、と思ってしまうし、運動中だと外れてしまうだろう、という反論には、100均にあるシリコンのイヤーパッドなどを使えば対処できるのではないか、と思ってしまう。

この話はただ単に「ぼくにはあいませんでした」といえば、確かにそれで済む話なのだが、もしこの記事をここまで読んで、今骨伝導イヤホンを買おうか迷っている方がいるとするならば、きっと君は買わない方がいい。

このイヤホンは、骨伝導という未知の体験に、ロマンに、3000円という価値を見出せるか否か。

それに全てがかかっている。





追記:マイクについて

ごめんごめん、これはワイヤレスヘッドセットだった。ヘッドホン兼マイクだった。

マイクの音質は、クソだ。

だってヘッドホンがあるのは耳から後頭部にかけてなんだから、前方に発せられる声なんか拾えないよ。

マイクの分を削減したら、税込みで3000円を切れたかもしれないと思うと、やるせないね。

ここはどこだ