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いつもポケットにハーフカメラを

 フィルムカメラの最初の一台としておすすめなのが、通常の倍の枚数撮影できるハーフカメラだ。例えば36枚撮りのフィルムなら、1枚分を2分割するので、72枚撮影できる。これならフィルム代や現像代というハードルも多少下がるかもしれない。

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 僕が愛用しているのがオリンパスのペンEESというカメラで、1962年発売。このモデルは自動露出だから、基本的にはフレーミングしてシャッターを押すだけ。使い勝手としては極めて写ルンですに近く、簡単に写真が撮れる。
 ただ、後継機種と違って完全固定焦点ではなくゾーンフォーカスなので、ざっくりではあるがピント合わせができる上、f値も後継機種のf3.5よりも明るいf2.8になっている。「気軽に撮影できるがある程度コントロールする余地もある」というバランスが非常に気に入った。

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 ボディのグレーカラーが何とも言えずクラシックで可愛らしいのもいい。コンパクトカメラではあるが、やはり60年前のカメラだけあってあちこちにアルミや合金が使われていて、持つとずっしりと存在感があるのも所有欲を満たしてくれる。

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 一番面白いのが、通常の1枚分の大きさで2カット撮影できるので、普通に撮るだけで組写真のような表現ができることだ。

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 動きを見せたり、引きと寄りを使い分けたり、はたまた一見無関係な2カットで世界観を演出したりと、表現の幅が広がる。

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 なおこのモデルは裏蓋が後継機のような蝶番式ではなく取り外し式になっている。フィルム写真の表現手法のひとつとして、わざと裏蓋を少しだけ開けて感光させることがあるが、取り外し式の感光は裏蓋の形が写真にくっきりと表れて面白い。フィルム交換の利便性としては蝶番式に軍配が上がるだろうが、取り外し式にはそういったメリット(?)もある。

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 最近は写真を撮りに行くときにはメインのNikonF2と一緒にこのオリンパスペンEESをポケットに忍ばせておいて、何気ない瞬間に気軽にシャッターを切っている。ペンには常にフジの業務用100を詰めることにして、現像に出すタイミングなどは一切気にせずに撮り、フィルムが終わったタイミングで現像に出す、という手法をとっている。これによって、F2のフィルムが足りなくなった時にペンでカバーすることも可能になる。

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 わずか1万円程度で買える、脇差のようなフィルムカメラ。これからもポケットに忍ばせておきたい。