映画感想ロックオペラ「TOMMY」

アルタードステーツ(白)

観た日:2019/09(渋谷アップリンク)

 ちょうど渋谷アップリンクで上映しており、一度スクリーンで観てみたかったので人里に降りた。
 チケット予約しようと思ったら会員制らしく、かつ会費が必要とのことで貧乏性勃発してそのまま直接買いに行ったら時間を持て余し、何か食べようとするも土地勘がなく店を知らず汗だくで歩きに歩いて入った台湾料理屋の汁ビーフンの塩気がとても美味しかったです。

 映画自体は30年くらい前、高校生の頃に観ていた筈で「観た」という箇条書きの記憶はあるけど内容はほとんど覚えていなかった。当時は村に映画館もなく、インターネットなぞない時代だから視聴したいコンテンツあったら物理チャリ漕いで村から市へ物理移動し、物理レンタルビデオ屋巡って探して物理テープを借りてきたのだと思う。どうやらその労力とコストの方に記憶が傾いてしまってるようで映画自体の記憶が消えており、これは悪だと思う。こういう体験が、ほらすぐ老害トークになるの。観たコンテンツ自体じゃなくてまつわる自分の思い出話を言い始めちゃうの。現代のインターネッツ万歳、ありがとうAmazonプライム、現代ならできる純粋なコンテンツ体験をありがとう。

 映画内容は、色々あって幼少期のトラウマにより見えない聞こえない喋れない、の三重苦を背負ったロジャー・ダルトリ(THE WHOのボーカル)演ずるところのトミーが色々あってピンボールの才能に目覚めチャンピオンとなり一大ブーム巻き起こす中に色々あっていきなり回復し、その奇跡から信奉者が集まり、布教的な啓蒙活動を起こすようになるけど色々あってやっぱりそう簡単に誰でも覚醒できるわけでもなく、色々あって暴動が起きて施設も両親も失い身一つになったけどなんか山登ったら新しい目覚めきたね!!という目覚めと気づきの怒涛の連続洪水ビジョンコンテンツです。

 だけど視聴するまでに苦労したクソ思い出圧のおかげで映画自体の記憶は「ピンボールチャンピオンなエルトン・ジョンの竹馬ブーツ」(でかい)と「麻薬の女王ティナ・ターナー」(こわい)」しか残っていなかった。とにかくティナ・ターナーが怖かった。ぶっとい針の巨大注射器、あの大きい口、食われる、食われてしまう、熱が出た日は夢にみる。聞き分けのない子供を言い聞かすには逸材ですので保護者の方みなさん保育に取り入れてはどうでしょうかティナ・ターナー。

 初見の30年前は音楽的知識もなくそのままで観てたので誰が誰やらわからなかったけど、今ならば受け取るべき情報量が段違いとなり更に面白い、面白いしかない。
 恥ずかしいけど新興宗教教祖がクラプトンとか、各種エネマセット持ち込んで頭からブラジャー被ってるのがキース・ムーンてわかってなかったごめんよアーニー叔父さん。ゴム製品とエネマ用品とブラジャーとゲイ新聞って情報量多すぎだろ節操なさすぎ変態を迷走しすぎだろアーニー叔父さん。
 主役として事あるごとにハードめな行為させられる(基本何かさせられるときは半裸で裸足、半裸で登山、半裸でグライダー滑空)ロジャーダルトリもすごいけど、やはりアーニー叔父さんことキース・ムーンがとても可愛らしくやたら目をひく。
 三重苦を克服し覚醒したトミーが教祖と化し、啓蒙活動が盛んとなる「トミーのホリディキャンプ」シーンの物販ブースで、売り上げを掠めとるキースムーン最高かわいいし、かつ現代を表現していませんか????60年代からキースムーンはアイドルであり楽曲メディアよりライブより物販が一番の実入りになると示唆してるんんですよすごくないですか!私も缶バッジとTシャツが欲しいです!地方で買いに行けない人もいるんですよ!通販対応してください!!!!

 観てしまえば前知識なくても話はすこぶるわかりやすく、ていうかわかんなくて全然いいし、逆に詰めればどこかしら常におかしいし、とにかく最後まで一気になだれこむので非常に面白い。
 いわゆるケンラッセルぽさ、というか普通だったらえええ…ないだろ…というような違和感は、ロックオペラなので全編歌で進みます!という仕立てのため、ミュージカルにありがちな場面の割にやたら大げさな身振り手振りみたいなおかしみとあいまって…ンーーーこういうもの…?と力技でねじ伏せてくれる。いやでもやっぱり変だな(だいすき)。おすすめです。多分。だいすき。

(画像はケン・ラッセル監督作品「アルタードステーツ」に出てくるヤギです。これも10代の頃観たはずなのにちいとも覚えてない。いつか観る。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?