毎日の「見送り」に思うこと。

 今週から勤務先は完全登校(そんな言葉あるのかしら?)、つまり、分散登校が終わり、登校を希望する生徒全員が登校している、という状態になった。

 先週に比べて、人数が倍になったので、朝の登下校・・・保護者の送迎、スクールバス、自力登校と、子ども達によってさまざまだが、もう、昇降口は小一時間、カオスになる。

 周りの先生方の見よう見まねで子どもたちを迎え、送り出し、そんな生活に少しずつ慣れてきた。名前も知らない「初めまして」状態の子ども達もずいぶん減ってきて(私自身は人見知りだが、子ども達の方がとにかく人懐こいから、すぐ仲良くなってしまう)、「おはよう」「さようなら」と言葉で挨拶できたり、手を振ったり、手話のようなサインのような動きで互いに分かり合ったり、と、そんな時間を少しずつ楽しめるようになってきた。

 そんな中、昨日・・・週の終りの金曜日のことだった。

 スクールバスの生徒、デイの迎えで帰る生徒、保護者と一緒に帰る生徒と、順番に一人一人を昇降口で見送っていた時に、初めて気づいたことがあった。

 先生方が、自分の担当する子ども達の交通手段・・・バスだったり、デイの車だったり、保護者の車だったりに、駐車場から見えなくなるまで手を振っていたのだ。

 自分は、学級の生徒の交通手段がばらばらで、保護者送迎の生徒の後は自力通学生の下校に向けて準備があったから、いつも慌てて教室に戻っていた。でもよく考えたら、自力通学生が帰るまでは15分ある(バスや電車の時間に合わせて学校を出る時間を調整している)し、他の2人のスタッフが教室にいてくれているから、そんなに慌てて戻らなくてもいい、ということに、4日も経って気づき(汗)、やっと周りを見渡すことができた、というのが正直なところだった。

 先生方は、どんな気持ちで、見えなくなるまで手を振っているのだろう。

 もはやルーティンだから、それがマナーだから、という人もいるかもしれない。

 でも、それだけではない気がした。

 「今日もよく頑張ったね、おうちでゆっくり休んで、また明日も元気で来てね」と、そんな気持ちで手を振っているのではないか。重い障害とともに生きている子どもも少なくない。今日が会える最後の日になってしまう子どもがいないとも限らないのだ。

 そう考えたら、一日一日が、とても尊く思えた。

 これは、中学校で勤務していた時には、感じなかったことだ。

 「下校指導」というものはあった。「下校時刻」を忠実に守って安全に帰すために自転車の乗り方を指導したり、時間に遅れると「早くしなさい!」と叱ったり。「また明日ね~」なんて、あったかい言葉をかけていた職員は、何人いただろうか。自分も時間に余裕がある時ぐらいしか、言えなかったように思う。

 そんなことを思い出しながら、自分のクラスの保護者の車が駐車場から帰るのを見送って、教室に戻り、自力通学生に帰り支度を促した。

 帰っていく自力通学生を昇降口で見送る職員。さっと外靴に履き替えて校門に向かっていく職員。高等部スタッフ全員で、最後に帰る自力通学生を見送る。みんな、手を振っている。もちろん、私も。

 「来週も元気に来てね! また一週間、いろいろなことにチャレンジしようね! みんなでたくさん笑おうね!」と心の中で呟きながら。


 特別支援学校での日々は、自分にとって新たな視点、新たな思考をもたらしてくれている。

 

特別支援教育に興味を持つ教員です。先生方だけでなく、いろいろな職業の方とお話して視野を広げたいし、夢を叶えたいです。いただいたサポートは、学習支援ボランティアをしている任意団体「みちしるべ」の活動費に使わせていただきます。