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#4 セレナーデ号と夏の海の夢


夏の機運高まる7月下旬、
スウェーデンのストックホルムからフィンランドのヘルシンキまで向かうのに、巨大客船セレナーデ号に乗船した。

出発時刻ぎりぎりに乗り込むとそこは1つの巨大立体都市のようだった。
ゲートをくぐると空を仰ぐ吹抜のロビーがある。
下層は店舗になっていて、ムーミンのマグカップやぬいぐるみが売られている土産屋、カフェやカジノもある。
上層には客室の窓が立ち並び、楽し気な子どもが貼りついている。

デッキに出ると船は知らぬ間に出発していた。
岸は近付いては離れていく。
岩場の灯台は斜陽の強い光を受けて眩しい彩度を放っていた。

横切るものが少なくなってきた頃、
夕食をとりにレストランへ向かう。
バイキング形式でサーモンが食べ放題なのだ。
チョコフォンデュの滝もある。
浮かれざるを得ない。

窓に近い席に通された。
いつの間にか空はピンク色になり、ただ同じ海が続いている。
地上から離された、流れる時間の穏やかさ。

夕食を終えて部屋に戻る前、デッキに出ると
丁度夕日が沈むところだった。
夜の21時とか22時くらいだったと思う。
ピンク色は橙色になり、少し夜を孕んだ水色へと移って層になっている。

夜だ。
値段で選んだ部屋は窓のない船の底、見知らぬ女性と相部屋で、
万に一つの浸水を心配し、あまり眠れなかった。

浅い眠りを繰り返し、朝方4-5時頃もう一度デッキに出ることにした。
辺りは相変わらず、見渡す限りの海。
強くなっていく橙の光が世界の果てから顔を出す。
静かに、でも力強く、また1日が始まる。
ろうそくに火を灯したような1点の明るい光を、今もよく覚えている。

北欧の夏は日が長い。
太陽は遠く低く、海の上をすべる。
朝焼けも夕焼けも似たピンク色と橙色をしていて、
ずっと夢の中にいるような気分になる。

その時聴いていた音楽を紹介する。
The Japanese House "Saw You In A Dream"

夕食の時、窓から眺めたピンク色の空。
この夢が、この景色がずっと続いたらいいと思った。

サーモンも食べ放題だったしね。


セレナーデ号についてもっと詳しく知りたい方は、こちらからどうぞ。


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