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雨上がり帰りそびれた影も去る 白けた朝の街に降るピンク
駄々こねる洗濯物を乾かして 台風一過の蝉降る九月
遠雷の響いた部屋に音並べ月が恋しい私の遠吠え
マンションよ 海を私に見せてくれ 過ぎ去る明石海峡大橋
夏の夜 祭気分の雷砲と追いかけっこの最終バスなり
色褪せた紫陽花の横通る夏 引き継ぐような華の浴衣ね
騒ぎ立つ雷も遠くなっていく 余韻の雨がなぐさめる庭
浮かんではぼやけていった歌たちが 雷伝い 渡り歩く空
六月の雨に打たれて紫陽花の垂れる頭は心にもたれ
帰りつき余力でちょっと引き延ばす 明日のための短い夜を
いたずらに過ぎる平日 友だちの誕生日さえ覚えておけない
話したいことの鮮度は落ちていく まま味気なき大人の日々は
窓際に座り仰げば風が吹く 洗いざらしの服の柔さよ
公園のベンチににげる昼休み 馴染みの雀を眺める休み