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#3 家庭教師≠暇潰し要員

最初に断言しておこう。
春子と僕との関係において、僕が主導権を握ることはあり得ない。

生まれたときから小笠原の名前が世界的に浸透していて、身につける服はもちろん触れるもの全てが一級品。お金がありすぎて逆にお金を見たことがないそれがホンモノの金持ちである。
そんな根っからの金持ち気質の傲慢少女春子が右と言ったら右だし、左と意見することはもっての外。軽口程度なら許されるが後々何をされるかわからない。

僕の職務時間だって春子の機嫌次第だ。
この間なんて、許婚さまに送ったラブレターが未開封のまま送り返されたことで春子の機嫌がマリアナ海溝なみに沈んでいたため、僕はこの部屋に入ることすら出来なかった。
…この場合の給料はどういう換算になるんだろう。


「じゃあ今日から二次関数を勉強しようか。テキストの十五ページを開いて・・・」
「何いきなり家庭教師みたいなことしてんのよ。そんなことより、シロに頼みたいことがあるんだけど」
「……嫌な予感がするわぁ」
「貴方にしては勘が良いわね。この男を調べてほしいの」

そういって春子は数枚の写真を放り投げてきた。
目の前をひらひらと横切る紙切れは、そのまま床にぺたりと落ちていった。
どうも僕の運動神経は脳との交信に少々お時間をいただくようだ。

床に散らばる写真の一枚を拾い上げる。
おっ、なかなか……。
そこには大学生くらいの、昼食は基本買い弁だけど常にサラダまで買いますって印象の爽やか好青年が写っていた。

「私の通う学校の先輩にあたる17歳の女の子。その子からの相談なんだけどね」
むむ、僕はやるなんて言ってないぞ!(心の声)


「彼女、その男に復讐したいんですって」

特に利用するあてがありません。ごめんなさい。