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アトリエに生理用品を導入した話(渋木すず)

こんにちは、円盤に乗る派ウォッチャー・アドバイザーの渋木すずです。
今回は番外編レポートということで、タイトルの通り、アトリエ円盤に乗る場に昨夏より導入したFree生理用品の話をしようと思います。

生理用品の常備のきっかけや、コンセンサスを取る過程などについてまとめましたので、他の場所での導入の参考になれば幸いです。

アトリエオープン時のこと

アトリエ円盤に乗る場は、常駐するメンバーのいないアトリエです。ゴミ出しも頻繁には行えないため、ご飯やお菓子の容器・生ゴミなどは、利用のたびに各自で持ち帰る必要があります。
2021年にアトリエがオープンした当時、上記の利用条件を聞いて、私は真っ先に思いました。
「生理ナプキン、どうしよう…」

アトリエにはトイレが一つあります。トイレットペーパーや清掃用品などは備え付けてあるのですが、出たゴミは持ち帰らなくてはいけない。そうなると当然、生理の際に発生するゴミ類も持ち帰らなくてはいけません。

結局、メンバーにもこの問題を伝え、オープン時点ではトイレ内に防臭袋とゴミ箱(サニタリーボックス)を設置して様子を見るにとどめました。

導入のきっかけ

2021年のアトリエオープン後、私はメンタルヘルスの状態が悪く、なかなか現地に行くことができない状況でした。2022年にやっと小康状態になったとき、オープン時からずっと引っかかっていたこの生理用品のゴミ問題の解決とあわせて、誰でも使える生理用品の常備ができないか、と考え始めました。
ちょうど当時、生理用品にアクセスできない人がいる、という問題が話題になっていて、学校などの施設に生理用品を備え付ける取り組みを知ったこともきっかけの一つです。

当たり前のことですが、生理は完全な予測が難しいものです。不順な時は言わずもがな、毎月同じようなタイミングで順調に来ていても1~3日ずれてしまうことがある。ピルを飲んでいる時ですら、この日に来るぞ、と予測される24時間のうち、明確にいつ来るかは分からない。予測した日の前から生理用品を持ち運んでいても、まったく予想のつかない時に訪れることもあるし、生理ではない不正出血だってある時も。(20年くらい生理とあれやこれや付き合ってきたので熱く語ってしまいました)

乗る場は、円盤に乗る派が主導となって運営している共同アトリエです。参加するアーティストはもちろん、イベントでお客様を呼ぶこともあります。小さな規模の、小さなアトリエですが、いろんな人にとって居心地の良い「場」であってほしい。
そして、運営主体である円盤に乗る派メンバーとして、この問題について一番提案しやすい立場にあって、責任をもって近接することができるのは、もしかすると私なのではないか、そう思いました。

提案してみた

何はともあれ、とにかくSlackに投げてみよう!そうしてドキドキしながら7月19日に投稿した文章が以下のものです。

皆さんお疲れ様です。
アトリエ開始当初からずっとやらねば…と思っていたこと&今の運用に詳しくなくて恐縮なのですが、お手洗いのサニタリー環境を良くしたい!という気持ちがあります。
ネックだなあと思っているのがゴミの処理問題で、現状アトリエのゴミ出しをこまめに行うのが難しいので、サニタリー関連のゴミは持って帰っていただくしかアイデアがありません。(香りを閉じ込める袋等を常備して各自持って帰る想定)
また、生理用品の常備もあったらいいなあと思っています。
(上記は乗る派の総意ではなくて私の一意見なので、運用の案が出揃い次第、お金等の細かい部分を全体に向けて相談したいです)
リプライではなくDMでも大丈夫ですので、この件について何かアイデアやご意見(このままでいいよ、という意見含む)のある方がいましたら、お知恵を貸していただけますと嬉しいです!

アトリエ乗る場Slack アトリエ環境channelより

この投稿に、すぐに賛同の反応がありました。
「設置されたサニタリーボックスがあっても、最終的には持ち帰るので処分するための袋が必要」「アトリエ近くで生理用品を買おうと思ったとき、品ぞろえがなく困ったことがある」、という声も。
この他、投稿に応援のスタンプを押してもらえたりと、言ってみてよかった~!と安堵しました。

コンセンサスの取り方

さて、次に考えなくてはいけないのが、「なにがどのぐらい必要なのか」調べ、それに対して「どのように同意を取るか?」です。
ここで気をつけなくてはいけないな、と思ったのが、「何を知られたいか・知られたくないか、タブーや嫌なことは人それぞれ違う」ということです。
私個人はこのような事柄にはだいぶオープンな方なのですが、オープンには話しづらい人ももちろんいるでしょう。自分の身体について考えること自体がしんどい人もいるかもしれません。また、生理用品に対する扱い方も、隠して置いて欲しい人や、分かり易く置いて欲しい人など、さまざまです。

・匿名で意見を言いたい人には匿名性を担保する
・オープンに議論をしたい人には議論できる場を設ける
・対象を特定の性別に絞らない
・人それぞれの「これは嫌だorこうしたい」をなるべく大事にする

上記を基本として、賛同してくださった方と、どのような形で意見を集めるか話し合った結果、以下のような流れに決まりました。

①Googleフォームでの匿名アンケート実施
②①のアンケートをもとにZoomとGoogleドキュメントを使って会議
(Zoom会議中、随時ドキュメントに議事録を記録。Zoomに入りたくない人も匿名かつリアルタイムで議事録を閲覧し、意見を記載することができる。)
③必要なものとその予算を計算し、アトリエ会議に提出

その他、アトリエメンバー以外の方(稽古場として利用されている公演の座組の方)にも匿名アンケートにご協力いただきました。

導入!

7月中旬〜末にかけて行ったアンケートを参考に、8月中旬にはサニタリー会議で以下のことを話し合いました。
①必要な備品について
②備品の置き方・置き場所
③予算と補充方法について
④アトリエメンバー以外の人への情報共有方法(ゴミの持ち帰りについてなど)

これらの話し合いをもとに、備品購入と設置場所、費用についてアトリエ全体会議に提出しました。全体会議で了承後、8月下旬には生理用品数種類と、防臭袋を持ち帰る袋、それらを配置する収納グッズなどを購入。防臭袋はアトリエ設立当時に購入したものがまだあったので、収納グッズを利用して取り出しやすいように(しかしなるべく悪目立ちはしないように)配置しました。防臭袋を除いた導入費用は2,110円。防臭袋は当時200枚入り1,500円のものを買ったので、合わせても3,610円でした。
そして8月末、ついにアトリエに生理用品が導入されたのでした。

導入後の変化

導入後、良かったな!と思ったことが二つあります。
一つは、生理期間中にアトリエへ行くことのハードルが下がったこと。
ある日、乗る場に行く用事があったのですが、うっかり買い忘れて手元の生理用品が心もとなく、でも買っていたら約束の時間に間に合わない…ということがありました。いやいや、そういえば乗る場には生理用品があった!と思い出した時のとてつもない安心感たるや!
導入から約8ヶ月経った今でも、当初導入した生理用品の在庫が尽きることはなく、イニシャルコストの3,610円がほぼそのままランニングコストになっています。利用する頻度はそこまで高くないけれど、あるだけで安心できる、そんな存在です。


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