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円盤に乗る派の展示「演技をする人間の中に現れるさまざまなもの」の準備(たちくらようこ

6月初旬のある夜、円盤に乗る派の皆さんが作業中の円盤に乗る場に伺いました。

6月下旬のNEO表現まつりで、円盤に乗る派のみなさんは「演技をする人間の中に現れるさまざまなもの」というタイトルの展示をします。今日はその準備です。”円盤に乗る派に所属する俳優ふたりの中で起きていることを拾い上げた体験型の展示”ということなんですが、それはどういう?

メンバーは、円盤に乗る派の劇作家・演出家のカゲヤマ気象台さん、俳優の日和下駄さん、ウォッチャーの渋木すずさん、ちょっと遅れて俳優の畠山峻さんがやってきます。

展示の準備のために集まるのは2回目で、今回は思いついたことをぼんぼん言ってくブレスト回!とのことです。俳優の2人は、ワークショップや具体的な展示内容を考えてくる、という宿題が出されています。

下駄さんのワークショップ

プランを聞いてみる

下駄さん考案のワークショッププログラムをみんなで聞きます。ざっくりいうと、参加者がテキストをより良く音読できるようトライするというもの。

課題テキストについて、ひっかかりの多さで想像しにくさが変わるね、今のはちょっと長いかもね、あらすじは伝えたほうがいいかしら?という打合せのあと、下駄さんが考える、作家と俳優の仕事についての話になりました。

今日の下駄さんは楳図かずお風

作家はゼロから作ることが仕事、俳優は(演出家も似てるけど)その良さを伝えるのが仕事。上演は戯曲より面白くなくちゃいけないから、求められていることを実現する”上手い演技”よりも、戯曲の良さを膨らませる”よい演技”が必要。”膨らませる”というのがポイントで、俳優は作ったり付け加えたりしないで、膨張させるだけ。というのが下駄さんの考える俳優の仕事なのですが・・・

カゲヤマさん「これ、俳優が生み出すっていう企画なわけじゃん・・・?」※企画意図については乗る場のnote「ありふれた演劇について」37をご参照ください

下駄さん「僕は、だから、あんま生み出したくないけどね

えっっ

さらに、畠山さんもそこでつまづいているらしいと渋木さんから情報が。

カゲヤマ「・・・そこを整理しとかないとね」

というわけで整理します!

下駄さん曰く、「作家は飛躍する。先に結果を掴んでしまって、後であいだを埋める。僕はそれは得意じゃない。下から積み上げて、作家が先んじて得てしまった結果までちゃんと行き着く、っていうのが好き」。
”積み上げる”というのがポイントのようです。

ここで畠山さんが到着
渋木さんがこれまでの議論を説明します

聞いていたカゲヤマさん、この企画を思いついたときのイメージを話しはじめました。「2人の俳優の演技論が戯曲。戯曲はすでに書いてある、それをどうやって上演するか」。ほうほう。

下駄さんは三田にある即興セルフビルドビル「蟻鱒鳶ル」を例に、俳優の積み上げるという作業について考えています。積み上げ方によっては積み上げること自体作品になりうる。俳優は、フィクションでも積み上げら下られる分、日常だけを生きている人より面白く積み上げることができるはず、熟練した俳優が作家性を持っているというのは独自の積み上げ方をしているから。ただ俳優は積みあがったビルそのものなので、自分で面白いとは思っていない。のだそう・・・

なるほど、俳優の積み上げ方=演技論で、それを展示にするのだな!!

整理されたところで、下駄さん考案のWSを、俳優じゃない人代表・カゲヤマさんがやってみます!

WSをやってみる

まず、カゲヤマさんが課題テキストを何も考えずに音読します。下駄さんがこのテキストのどこが良いと思うか、これまでに同じような良さを感じたことはあるかと質問します。カゲヤマさんは、”ない”という言葉が連続するリズムがリア王のあるシーンに似ている、と答え、その良い感じを持ちつつもう一度読みます・・・

読んでいます

良くなってる!良くなってますよ!!ちょっと質問しただけなのになんで?!

本人に聞いてみると「リア王を演じていた江守徹をイメージして読んだ。なんかのイメージをもってやるっていうことによる広がり方をしたと思う」とのこと。

下駄さんがしみじみ「演技ってこうやってよくなっていくんだなぁ・・・」
なんかしら手ごたえを感じているよう。よかったです!

畠山さんの展示プラン

さて、次は畠山さんの番!なのですが、畠山さん、真っ先に。

そもそも発表したくないんだよね

なんとさらっとすごいことを

下駄さんといい畠山さんといい、乗る派の皆さんの議論をひっくり返すことへのためらいのなさ・・・

畠山さんによると、演技といっても作品によってぜんぜん別のことをしているので「一つにまとめることに抵抗がある」とのこと。

「でも」と渋木さんが口をはさみました。渋木さんが事前に行った俳優2人へのインタビューを踏まえると、畠山さんの、戯曲を丁寧に読み込む、色んな言い方でセリフを言ってみるっていうスタイルは、どんな作品でも変わらないのでは?

下駄さんからも、先ほどの蟻鱒鳶ルを引き合いに、出来上がるビルは作品によって違うけど、積み上げ方は同じなのでは?という意見が。

出演する作品が変わっても変わらない、畠山さんの演技の積み上げ方があるのかもしれません。

なにはともあれ、畠山さんが考えてきた展示プランを聞きます。

畠山さんの展示プラン

ざっくりいうと、俳優・畠山がやっている作業を追体験できる指示書。「別の言い方をしてください」「わからない固有名詞はググってください」「文節にわけて、その個別の文節から、他に言いうる可能性のある言葉をつなげてください」・・・?

ちょっと待って3番目がわかりません!というわけで詳しく説明してもらいました。

講義中の畠山先生

例えば、「神はあるかないかではない」という文を文節に分けると「神は/あるか/ないか/ではない」。この中の「あるか」とつながる言葉は、「あるかないか」「ポン酢あるか」などなどいろんな可能性があり、セットになる言葉によって「あるか」の言いようが違ったり、同じだったりするはず。そのうえで、この言葉とつながるっていうことについて考える。

「そんなことするんだ・・・!」下駄さん、シンプルに驚いています。

畠山さんによると、この作業の目的は、思考の可動域を広げること。ギターを弾く前にやるスケール練習のような、広く、速く出すための準備運動。

「いろんな言い方をする、も可動域を広げるですよね」と渋木さんが指摘します。「柔軟性を持っておく、ということに関してこだわりを感じる」

劇作家のカゲヤマさんによると、いろんな言葉を考えてから選ぶという作業は作家もやっているのだけど、”ポン酢”のような最初から選択肢にない言葉もある。畠山さんは作者が最初から切り捨てている可能性も考えているということでは、とのこと。畠山さん曰く、「作家が書く前の段階の悩みまでいったほうが、その物事を書いてるってことの理解が深い状態になれるんじゃないかと」。戯曲に現れてない作者のことまで考えている・・・!

俳優・畠山の作業はまだまだまだまだあるのですが、それは展示をみてのお楽しみです!

いちばんの盛り上がり

言葉を吟味する、という点から、良い戯曲とそうでない戯曲の見分け方の話に。

下駄さん「いい戯曲だなって思うときは、まさしく”神はあるかないかではない”なんだなって思えるとき。悪い戯曲だなって思うときはその吟味がされてないのがわかるとき」「はい!はいはい!!」畠山さん、ものすごい同意してます。「言っててなんかおかしい」「単語と単語の組み合わせが吟味されてない」「書けてないなって思う」

言い始めたらおかしいから覚えにくいしさー

なんだか渋木さんも楽しそう、「え、もっとくわしく、え、もっとくわしく」「みんな、文章読むプロじゃん!」「俳優からみた悪い戯曲の話めっちゃ聞きたい!!」文章を書く人目線で興味津々です。

この間終始無言の劇作家カゲヤマさん・・・

劇作家の皆さん気をつけて。俳優は戯曲の良し悪しを瞬時に見分けているみたいです。

その後、会場のレイアウトなど具体的な相談をして、今日の展示の準備はおしまいです。まだまだ変化していく気がする展示内容、本番が楽しみです。円盤に乗る派のみなさん、ありがとうございました!

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