白鳥の湖でパワーをもらう
この時期、毎年行くのが大山の下池。
ラムサール条約に登録された水鳥の楽園で、10月〜3月頃まで数千羽の白鳥が飛来する国内でも有数の白鳥の湖である。
その白鳥たちが夜明けとともに、飛び立つ。
それを見に行くのが、寒くなってからのささやかな楽しみだ。
まだ暗いほとりあの駐車場に車を停め、土手を登っていくと、白鳥の鳴き声が聞こえてくる。
登り切ると、鳴き声が一段と大きくなり、白鳥たちが池を埋め尽くしている様子に圧倒される。
日の出の6時ちょうど(訪問当時)に、白鳥たちの鳴き方が変わる。
数羽の白鳥がバタバタと羽根で水面をたたきながら水面を滑走して、飛び立つ。
それに呼応するように、ほかのグループも、飛び立ち始める。優雅な姿からは想像できないほどにダイナミックな白鳥の姿に驚かされる。
白鳥たちは、旋回しながら高度をあげて、土手で見守る私達の頭上を通って田んぼに向かっていく。バッサバッサと力強く羽ばたき、羽根が風を切るギュンギュンという音も聞こえる。
庄内に飛来する白鳥は、コハクチョウで、全長は1.2mほど。
飛ぶために、無駄なものが削ぎ落とされたたくましい体つきで、美しい。
田んぼに向けて編隊飛行する群れが陽光に照らされ金色に輝く。
その光景は、絵画のように美しく、絵画以上に訴えかけてくるものがある。眼の前の数千羽の白鳥の息遣い、生命力に圧倒されながらも、力を分けてもわえる気がする。
白鳥の中には、せかせかと飛び立つものもいれば、まだ寝ているものもいて、求愛している白鳥もいる。白鳥界も、人間社会のようで、面白い。
群れの中に、灰色の白鳥がいる。
「みにくいアヒルの子」でご存知の方も多いかもしれないが、
今年生まれたばかりの、子どもの白鳥だ。
コハクチョウは、4000km離れた北シベリアから、北海道にわたり、青森や秋田で休憩しながら、鶴岡にやってくる。
子どもの白鳥も一緒に飛んできたのかと思うと、凄い体力、気力だと関心する。
このあたりの冬は、ものすごい吹雪になる。そんな中でも、下池の西側にある標高273mの高館山が屏風のように海風を防ぎ、飛び立ちやすいこと、冬でも安心して過ごせることが、この地に飛来が多い理由だと聞いたことがある。
加えて、米どころで、食糧となる落ち穂が多くある。庄内は、白鳥たちにとっても、居心地のいい飛来地なのだろう。
そんな庄内も、ここ最近は、異常気象の豪雪に見舞われることもあり、そうなると、白鳥たちは、更に南下する。
これまで飛来していなかった池にも行くようになったと友人の宮川さんが教えてくれた。彼は、環境省の仕事で、毎日下池にいて白鳥の数を数えている。
最近の白鳥たちは、国道の上空を飛んでくるそうである。
人間が作った道の上のほうが障害物がなく、高い山を超えるよりも、飛びやすいのかもしれない。
しばらく眺めたり、写真を撮ったら、あたたかい飲み物を飲んで一休み。
最近のお気に入りは、開運きのこ茶。羽黒山のお土産物屋で味見をして、気に入って購入したもので、きのこのだしと塩味で起きがけの胃腸にも優しく、体があたたまる。
土手には、ベンチのほか尾浦愛鳥館という観察用の施設があり、窓越しに椅子に座って眺めることもできる。
鶴岡市民にとっては、白鳥の湖よりも、田んぼにいる姿の方が馴染みが深く、わざわざ下池まで来る人は少ないが、本当に素晴らしい光景で、早起きして行けば見れる手軽さもあり、おすすめだ。
友人がこの時期に庄内に来ると、必ず連れていくスポットになっている。
ぜひ、訪れていただきたい。
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