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スタンフォードMBA留学記(2024年卒業) ⑧リーダーシップ編その3

スタンフォードMBA卒業生が口を揃えて「人生が変わる」と勧める授業、Interpersonal Dynamics (通称Touchy Feely)について書きます。長くなるので2回に分けます。

他の強めのコミュニケーションやネゴシエーションなどの授業とは違い、自分や他人の感情とうまく付き合うリーダーになるための授業です。授業は、レクチャーに加えて、毎回同じグループ(ビジネススクール生12人+ファシリテーター2人の計14人)で何時間も話すのがメインです。
Touchy Feelyでは人によって全く違う経験をしており、学びをなかなか言葉にするのが難しいですが、私の経験をシェアできればと思います。

感情とうまく付き合うリーダーと聞くと、何を思い浮かべますか?
日本では、感情をうまくコントロールすることが大切だと思ってきました。うまくコントロール=感情を押し殺して、どんな場合でも感情に左右されずに安定したコミュニケーションをとること、という感じです。しかし、Touchy Feelyでの感情との付き合い方は、それとは違いました。

まずは、自分の感情に名前を付けるところから始まります。感情を表現する形容詞が並んだ膨大なリストを片手に、今自分はどう感じているだろうということを考えます。
私の場合は、日本で長らく感情を押し殺してきた結果、自分の感情を感じとるセンサーが壊れていたことが判明し(重症すぎ!)、そこからのスタートでした。「すごいね!うれしいね!」といったようなことはよく言っていたのですが、特に怒りといった負の感情がわからなくなっていました。

そうやって練習しているうちに、自分が、他人の発言にどういう風に反応するのか、感じ方の癖のようなものがわかります。私は、自分がどうこうよりも、他人が傷つくことを常に恐れていることに気づきました。グループの人たちからは、その優しさは私の良さである反面、他人に甘いことがその人のためになるわけでもないから、恐れずにもっと踏み込んでほしいとフィードバックを受けていました。例えば、個人的な話のあとに質問をするのが苦手で、これを聞いてもいいのかわからないと無意識のうちに一歩踏み出すことを避けてしまっていたので、質問をする練習をしました。

Asian Business Student Associationのイベントでは、アメリカにおけるアジア人のマイノリティ経験について学びました

このように、フィードバックを伝える、受け取る練習もします。「あなたが○○と言ったことで、私は○○(感情)と感じた」といったようにです。ポジティブなフィードバックで褒めることもあれば、もっとこうしてほしいという建設的なフィードバックをすることもあります。
私は、建設的なフィードバックはいくらでも聞けますが、褒めてもらうと居心地が悪くて「いえいえ」と否定してしまう傾向にありました。また、人を褒めるのは大得意ですが、建設的なフィードバックをするのが苦手でした。ここでも結局、相手を傷つけることへの恐怖がありました。
各自で目標を立ててお互い助け合うなかで、私も建設的なフィードバックを伝えたり、ポジティブなフィードバックを受け取ったりする練習をたくさんさせてもらいました。

会話のなかで、海外からの留学生が似たような戸惑いをもっていることもわかりました。みんな自分だけそう感じていると思い込んでいましたが笑
アメリカと海外の学生で、良しとする方向性や感じ方が違うという場面が多々あり、それをシェアしながら理解し合えたことは財産になりました。特に、私のグループは多様なメンバー構成で、何が多数意見ということがなかったのが良かったです。グループによっては、国籍・人種・ジェンダーなどが偏っていて、マイノリティ側の人たちが納得できない思いをするようなケースもあったようです。

後編では、Touchy Feely特有の、お互いに自分の脆さや抱えている傷についてシェアした経験について書きます。つづく。


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