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一度は行ってみたいあの場所

 一度は行きたい、というより、かつて一度は行ったことがあるのだけれど。ドイツの、ミュンヘン。以前に訪れたのは、1987年(昭和62年)。まだドイツが東西に分かれていて、通貨がマルクとペニヒだった時代だ。
 父の仕事の関係で、母と私も同行。春のあいだ、約3ヶ月間住んでいた。

 あの頃は私もまだ若く、しかも若いくせに、高校時代の〈パニック障害〉がまだ抜けきらず、これまでの人生の中で一番体力が無い時期だった(しかも当時、パニック障害はまだ医療機関でも概念として存在せず、私自身は一種の心臓発作かと思っていた)。とにかく疲れやすく、外出がおっくうになることもしばしばだった。

 だから、父と母から「今日は美術館に行かない?」と誘われても、多分3回に1回ぐらいは断っていた。あの年のミュンヘンは、5〜6月が異例の長雨で、そのわずかな晴れ間は、外出が楽しめる貴重な時間だった。なのに私は幾度いくたびも、「留守番してるよ」と狭いアパートの一室に残ることを選んだ。
 両親は(仕方がない…)という顔を一瞬すると、嬉々として美術館や博物館めぐりに出掛けて行った。けれど私は、その後ろ姿をろくに見送ることもなく、まぁまた来ようと思えばいつか来られるわけだし、なんて思っていたのだ。あぁ。

 あれから37年、よく外国のYoutube動画は眺めているが、本当に行きたくて見ているのはドイツのミュンヘンだけだ。新市庁舎もフラウエン教会もあの頃とは変わっていないと思う反面、でもマリーエンプラッツ周辺の店々は、あらかた入れ替わってしまったんだろうな、などとも思う。
 美術館も、アルテピナコテーク、ノイエピナコテークはもちろんだが、2009年に出来たというブランドホルスト美術館にもぜひ行ってみたい! 現在、まったく実現のあてはないのだけれど、夢だけは思い描き続けたいと思っている。

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