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南半球の太陽は、赤かった

成田離陸し7時間、トランジットのためケアンズで降ろされる。

国際ターミナルから国内ターミナルへの移動は思いの外長い道のりで、カートを借りてきてよかったと道中安堵したほど。
Domesticのサインを追ってあるきつづけると、このまま外に出されてしまうようだった。
どうもターミナルは建物ごと別らしい。
自動扉があくと、むっと力強い野生植物の息が立ちこめていた。
空港内のクリーンで無味無臭の世界とまるで正反対の、ワイルドなつよい香り。

これが南半球、オーストラリア大陸の匂いか!

気温こそ高めだが、しっとりとした朝の空気が機内での長い乾きを潤してくれるようだった。
不慣れなカートを操り、たまに脱輪コースアウトしながら 私たちは朝の空気を切り開く。

そう私’たち’。座席が隣だった日本人のEriとは離陸の前には言葉を交わしてたとおもう。
ここからそれぞれの目的地へとさらに飛ぶ、つかのまの時間を共にしている。

着陸まぎわ機内のちいさな窓から日の出を見下ろした。
すでにその太陽はある程度のたかさに、ただただ赤で、とうめいで、丸々くっきりした輪郭で浮いていた。
70’のサーフTシャツよろしくおだやかな曲線の山の真上にある。
ジョークみたいな太陽。HAWAIIと下にロゴでも入りそうな。
(本物をみても記憶のレプリカをつい引き合いにだしてしまう、本当の本物はいつだってうそみたい)

太陽はやはり赤だった。

ここは朝、青空、晴れ、すべてはこれからで、浮かれるわけでもなく、ふ〜んなんて地に足つけつつ、まだここにない出会いに鼓動はやまないこの感じ、この光景に感心する。感謝する。

新しい朝がきた、希望の、朝だ。



2011-10-01 20:26


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