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メタバースとこれからの世界 ー コミュニティ貿易商が語る1人1国家時代【架空インタビュー】

2021年10月28日、GAFAと呼ばれる世界巨大IT企業群の一つであるFacebookがその社名を「meta」に変更した。

仮想世界(メタバース)の存在が現実世界での存在感を増す一方で、未だにその未来を信じられない人がいる。

その要因の一つは、15年前にも「これからは仮想現実の世界が来る!」とセカンドライフが取り上げられ、人々の記憶からすっかり忘れ去られてしまったためかもしれない。

しかし、キタキタの遊び研究所所長・北祐介はあの頃のメタバースと今のメタバースは根源的に考え方が違っていると語る。

かつてのメタバースやVRは「体験」であったが、これからのメタバースは「創造」がメイン。側から見たら奇行の多い彼が語る未来に新しい時代を見た。

(5901文字)

アメリカの子供の半分がメタバースで遊んでいる

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ー 率直に聞くのですが、これからメタバースって流行るんですか?

実は既に流行っています。特に今私が子供たちに教えているRobloxなんかは非常に勢いがあって、講座も毎回満席になるほどの人気です。

私がRoblox(※1)に触れ始めた頃には既に世界で1億6000万ほどのアクティブユーザー(実際にプレイしている人の数)がいて、マイゼンシスターズ(youtuber登録者数211万人ほど)もRobloxの実況を始めていました。

もともとマインクラフト(※2)が先行して流行していたので、マイクラキッズたちへの親和性がかなり高かったために子供たちに受け入れられやすかったのかもしれません。

実際に子供たちに「どんなゲームか?」と聞かれたときに「マインクラフトがもっと自由になった感じのゲーム制作アプリだよ」と答えています。

※1
Roblox(ロブロックス)は、ユーザーがゲームをプログラムしたり、他のユーザーが作成したゲームをプレイしたりできるオンラインゲーミングプラットフォームおよびゲーム作成システム。2010年代後半より爆発的にヒット。
現在世界のアクティブユーザーは月1億6000万人ほど
※2
マインクラフトとは、サバイバル生活を楽しんだり、自由にブロックを配置し建築などを楽しめる。サンドボックスビデオゲームである。
最近はプログラミング学習の教材として教育界でも注目されている。
スマブラにも参戦。

ー マインクラフト!言われてみればあれもメタバースだったのかも!

コロナをキッカケにマインクラフト内でライブをやったり、図書館が作られたりしていて「ああ、これってメタバースだったんだ」って感じましたね。

ただ、先ほどのように「本当にこれからメタバースが流行るのか?」と考える気持ちはよくわかります。

先日公開されたMeta(旧facebook)の発表した広告も「離れている人と卓球ができる!」とか「犬になりきって会議に参加できる!」といったようなリアルの代替手段としての運用でしかなく、パンデミックの世の中でもなければ需要は低いように感じてしまいます。

セカンドライフ(※3)がいまいち流行らなかったのはそこが一番の問題で、結局リアルでやれることをメタバースの中でやったところでリアルには勝てないってことなんですよ。

※3
セカンドライフは、3DCGで構成されたインターネット上に存在する仮想世界である。ユーザーは現実の世界とは異なる生活を送ることができる。日本では2007年初頭より経済紙などでセカンドライフに関する報道が活発化。3D仮想世界という目新しさに広報メディアとしての価値を見出した企業が3月頃より参入を始めるが、現在は撤退済み。

メタバースネイティブな子どもたち

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ー では、やはりメタバースは一過性のものになってしまうのでしょうか?

ただ、今回のブームはセカンドライフと違う結末を歩みそうな気はしています。

というのも、最近の子供たちを見ていると、小学校高学年にもなれば自分で何かを作り始めているからなんですよ。

私の知る限り、高学年の小学生の友人たちはほぼ100% 動画編集のスキルを身につけています。

私が高校生の頃でもiMovie同窓会ムービーを自分たちで作ったりなどをしている人はいましたが、今は親のお下がりのiPhoneを使って自分でおもしろ動画を作ろうとしていたりしますね。

ー 今の小学生、そんなことができるんですか!信じられない...

たぶん、子供たちの親は教えられないので、とにかく触ってつくってみて、身につけたのではないかと考えています。

中学生くらいにもなると、数字もある程度とれるようになっているみたいで、tiktokで良い線いっている子もいましたね。

彼らとしては自分で漫画を描いてみるとかそんなレベルなのでしょう。

今の小学生の娯楽の中心がyoutubeであることを考えると、彼らとしてはそれほど難しくないのでしょう。

ー youtuberごっこをする子供たちはわかるんですけど、それがメタバースとどう繋がるのでしょうか?

比較的メタバースに近い立ち位置にいるマインクラフトを考えると、マインクラフトを持っている子どもはyoutuberの真似をしてコンビニを作っていたりしてましたね。

3D空間で何かをつくる素養は子供たちに十分に身についていますし、実際にやってみようとせずとも「どうやら今持っているソフトで作れるらしい」くらいは理解しているのではないのでしょうか。

また、マイクラ実況はyoutubeの中でも大変に人気のあるコンテンツなので、子どもたちはメタバース内でどんな遊びができるのかをyoutubeから教えてくれているのでしょう。

「現実」のアップデートが必要なのかもしれない。

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ー メタバースを当たり前に受け入れた子供達はこれからどのようになっていくのでしょうか。

なんとなくですが、彼らが実際に世界に影響を及ぼすのは現状を見ている限りまだまだ先だと考えています。それを個人個人がアップデートしない限り、そのステージには到達しないでしょうね。

というのも、学校やコミュニティをはじめとして、彼らが活躍できる場が出てくる気配が全くないからです。

今の子供のなりたい職業ランキングの1位がyoutuberであることは有名ですが、逆に言えばそれは既にyoutuberとして活動しようと考えている子供たちがあまりいないことの証明になります。大体の子供が動画編集の技術をもっているにもかかわらずですよ。

言ってしまえば、今ってyoutuberよりもカッコよくて夢のある職業がないだけではなく、将来の夢のスケールが「職業」レベルに世間では止まっていることが問題だと思うんですよね。

で、それを叶えるためには努力しないと!と言ってコントロールされるんで、子供としても将来がいかにも楽しくなさそうに思えてしまいますもんね。

ー 実際の子ども達はあれだけの可能性をもっているのに、現実がそうだったら少し落ち込んでしまいますよね。

彼らの認識では現実って多分おもしろくないのでしょうけれども、私個人としては現実って既に面白いもので満ちているんですよ。

人類1万年の歴史上の偉大なる先人達が世界に対する見方をたくさん提供しているので、それらを引っ張り出すだけで世界はかなり色鮮やかなものになると考えています。

ただ、現実と社会は必ずしも一致するものではありません

今の日本では生活保護のようなシステムがあるにもかかわらず、お金がないために自殺や飢え死にをしてしまう人が多いのは、現実と社会が一致していない一つの例です。

社会の規範によって、彼ら一人一人の現実が歪められてしまったがための悲劇と言えるでしょう。

ー 現実と社会が一致しない...。社会って現実ではないのですか?

私は別のものだと考えています。

例えば、私たちは「人を殺してはいけない」と教えられるわけですが、紛争地域の一兵士であるなら逆に「どんどん人を殺せ」と言われるのです。

現在進行形でこの矛盾が起こっていると考えると、私たちはあくまで世界、宇宙のどこにいるのか、どの社会に所属しているのかによって、倫理や認知が激しく歪められてしまっているだけで、今ここに存在している世界は何も変わらないのです。

今この世界に存在しているもの、存在していると考えているものが現実だとするなら、社会と現実の不一致が起こるのは実に当たり前のことでしょう。

生きていけないのではなく、自分がしがみつきたい社会に所属できなくなるだけの話なのです。

ー つまり、現実のアップデートというよりかは、個人個人の現実に対する認識のアップデートが重要であるということですね。

そう言うことになると思います。

そのアップデートなしには楽しい未来を歩むことは難しいでしょうね。個人レベルであれば幸せな未来なんてのは簡単なんですけどね。

メタバースが「破壊」する価値。新たに生まれる価値。

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ー メタバースの流行によって、これからの世界はどのように変化していくのでしょうか?

メタバースが一つの世界として受け入れられれば、将来の夢が大きく変化するだろうと考えています。例えば、あれこれ言うけれども、ほとんどの人がお金持ちになりたいと考えていますよね。

メタバースの世界ではランボルギーニみたいな高級車も2階建てのお家も珍しくない世界。お金と資源が無限にある世界と言っても過言ではないので、誰でもお金持ちになれるし、お金持ちのような生活ができると考えています。

ー なんと夢があることでしょう...

ただ、こういう世界だと、みんなが知っているもので、欲しいものがあったら簡単に手に入れることができるんですよね。

なので、この世界では「持っていること」の価値がとても薄くなってきます。

ですが、そうであっても一人一人に何かを欲しいと思う気持ちは残っているでしょう。隣の芝生は常に青いですからね。

ー そうなると、みなさんは何を欲しがるのでしょうか?

ひと昔前であればここで「体験」と答えるのですが、そもそもVRでその辺りがほとんど達成されてしまうので体験そのものにもあまり価値はありません。

大事なのは「作れる」ってことでしょう。欲しいをいち早く言語化して、それを人に提供できること。

現代のリアルの方のマーケティングでも「便利」よりかは変なものや夢のあるものを作って「そんな発想はなかった!」とか「ずっと待ってた」みたいな需要に答えて購買意欲をそそる方にシフトしていますよね。

そうなると、その世界での人は「作れる」という才能に憧れていくと考えるでしょう。でも、これも需要があるだけで「みんなが欲しがる」とは違います。

ー違うんですか!?じゃあ一体何を....?

実はこの辺りの才能をほとんどの人は諦めているんですよね。諦めているからこそ、もはや求めることもない。

今って、コンテンツが飽和状態にあるので、大体の人は与えられたコンテンツを消費するだけで人生が終わってしまうくらいに充実しているでしょう。

だから、結局はみんな自信が欲しいのだと考えています。

異世界転生ものが10年くらい前から流行していますが、結局自分の活躍できる世界がみんな欲しいのです。

そうなると、世界は自分の手で作れるって概念をインストールしてあげれば彼らの真の欲望は満たされる可能性があります。

あとは、「自分の世界を自分の手で作ってもいい」と背中を押してあげるだけで彼らの願いは復活していくでしょう。

そんな人たちが世界を見せ合いながら互いに切磋琢磨していくような世界が楽しそうだなと考えています。

メタバースから現実世界に輸入するもの

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ー メタバースの社会を乗りこなすために私たちは何をしていけば良いのでしょうか?

私からの提案は「現実もこんな感じで生きてみないか?」だけです。

Robloxやメタバースの世界は一見現実よりもかなり自由でなんでもできそうですが、触らせてくれない、建物の中でくつろがせてくれないのです。

また、形を作ることに関しても、四角いものは作りやすいけど、丸みのあるものはちょっと難しいです。正直、粘土やプラモデルの方がものづくりのしやすさは上です。

ー そう言う意味では、今生きている現実の方がよっぽど便利にできてるんですね。

なので、Robloxをはじめとしたメタバースづくりを通して、自分の世界を今からでも作り始めると良いかもしれませんね。

メタバースのおかげで自分の将来の夢が伝えやすくなったのは間違いありません。百聞は一見に如かずって言葉があるように、やっぱりビジュアルで見せた方が早いですからね。

ー たしかに、見せられてしまったらもう納得するしかなさそうですね。

ただ、それでもそういう世界を否定したいって人は一定数いると思います。

どこかの民族が独立運動をしたらビビって弾圧するように、隣に新しい世界ができたら普通の人は警戒するものです。

やっぱりなんやかんや言って、みんな「いつもどおり」が大好きなんですよね。

そう言う意味で、この記事は「いつもどおり」に嫌気がさしてきている人にとってはワクワクする記事になるのではないかと考えています。

メタバースづくりでできることは自分の世界を見せられること。

実際に作れずとも、そこから生まれる暮らしや文化は想像できますし、暮らしや文化を想像できたら、そのライフハックなんかを現実世界に輸入することができますしね。

「無理」なんて存在しない。

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ここからは北氏が語った言葉をそのまま載せます。

セカンドライフと今のメタバースの最大の違いはリアルに忠実か、虚構に忠実かであると思う。

いくらバーチャルでリアルの世界の望みを叶えたとしても、ログアウトすれば変わらない現実が待っている虚しさに耐えられなかったのでしょう。セカンドライフが失敗したのはそういう部分だと考えています。

一方でこれからのメタバースは自分が昨日まで嘘だと思った世界を自分の手で作り出すことによって、次第にそういった別の世界が存在しているような気がしてくるでしょう。

実際は、そう考えた時点で世界は既に生まれているのですがね。

自分が新しく作り出す世界に「無理」なんて言葉はないでしょう。だって、そこにないなら作ればいいじゃない!から始まっていますからね。

そうやって、自分の世界は自分で作れるが当たり前になってくれば、現実に対する見方もどんどん変わってくるでしょう。

私はメタバースをキッカケに人々が誰かから提供される遊びを享受するだけの消極的な人生から自分自身の手で未来を切り開く力強い存在になっていくことを心から願っています。


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編集後記

地元福岡に友人が来てくれたので、いっぱい写真をとってもらった。

その写真から何か声が聞こえてきたので、その声を自分の心の声と認識し、文章にすることにした。

今回の文章はいよいよ来週となったRoblox講座(北担当)の最終回で子ども達に向けて語ろうと思っていることを書いた。

僕らには今よりももっと楽しくなる未来が待っている。過去の遊びの繰り返しではなく、新しい楽しみを自分の手で作ることができる。

メタバースが世界をより良い方向に導いていくことを心から楽しみにしている。


文:北祐介
インタビュー:北祐介
編集:北祐介
写真:サカキミヤコ @hisui0


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