映画の都ストライキが教える、文化こそマーケティングの真髄。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ハリウッド・ストライキが教えるもの。目に見えないものこそ、繁栄の礎であるという事実。もし、ロスアンゼルスにハリウッドがなかったら。文化の都ロスアンゼルスにみる、地方自治体の古くて新しいサバイバル戦略。
文化こそ地域存続のカギ
先日、ハリウッドのストライキの件に触れました。
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年7月30日号は、Without Hollywood, Los Angels suffers (ハリウッドがなければ、ロスアンゼルスは困るだろ)との見出しで、ロスアンゼルスという地域の経済が、直接・間接にハリウッドという文化遺産に影響を受けているかを論じています。
僕もかつてロスアンゼルスに1年間住んだことがあり、ハリウッドの空気感は感じていました。
住民にとって、ハリウッドの存在はプライドであり、アイデンティティであり、ソリダリティ(solidarity連帯)なのです。
ストライキの影響はこれから
もちろん昨今の物価高で、「ハリウッドのストライキ?そんなの関係ねぇ。家賃や食べ物がこう上がっちまったら、生活ができねぇや」と、無関心を装う人も多いです。
確かに一部の人々には、まだストライキの影響はそれほど感じられないようです。
しかし、ハリウッドのストライキの影響は、これからじわじわ襲ってくるでしょう。
人口1000万のロスアンゼルスで、スタジオ関係の雇用は5%ですが、スタジオでの制作が止まり、プレミア上映がなくなり、レストランや小売店がクローズしたら、その経済的ダメージは少なくありません。
セレブも、映画製作クルーも近隣にはたくさん住んでいます。
そして今回は脚本家たちだけでなくて、俳優たちもストライキに加わっています。
2007年のストライキは脚本家たちだけによるものでしたが、それでもカリフォルニア州の経済損失は21億ドルとされています。
これが長引けば、アメリカ経済全体の経済回復の足を引っ張る可能性があります。
まだ、ハリウッドは今までの遺産で食べていけるかも、です。
中には「大丈夫、人々がHuluを視聴し、ディズニー映画をオンラインで鑑賞してお金を払ってくれれば、ハリウッドは安泰」、とうそぶく人もいます。
でも、ストライキがどれだけ続くかにもよりますけれども、新作が出なくなったとき、ロスアンゼルスの経済危機は深刻になるでしょう。
見えない資産こそがマーケティングだ
AIの時代は、デジタルの時代であり、そこには人間はまったく介在しません。
人間じゃないオバケが、経済を動かしていく時代なのです。
しかし、考えてみると、映画ってAIの180度反対概念なんですね。
最近の映画はCGだとかデジタル技術が確かに使われていますけれど、
基本は脚本家が書いたテキストをもとに、経験豊かな監督とアクターたちが、人間を演じるわけです。
ハリウッドは、映画という人間の営為を芸術までに高めた、ある種の人類の文化遺産の象徴です。
それが今、危機にひんしています。
長引くくらいでいいんです。
アメリカは、カリフォルニアは、ロスアンゼルスは、いかに目に見えない伝統や文化、そしてそれに付随する人々の思いやプライド、連帯感といったものが、経済を動かしていたかを知ることでしょう。
マーケティングの観点からすると、マーケティングは価値あるものを創造することが基礎になります。
価値あるものとは、時間の風雪に耐えて人々に愛される何か、です。
その象徴こそが、映画という芸術ではないでしょうか。
そして、その芸術を生み出す人々、街、土地もその価値を担っているのです。
そう、今回のハリウッドの件は、コミニュティの生存戦略にも、大きなヒントがあると言えます。
拙論をまとめると、AI時代のマーケティングのキーワードは文化、ということです。
明日は清和大学のオープンキャンパスです。
僕もでますよ。
無料のおいしいランチ付きですよ、と宣伝しておきますね(笑)
野呂 一郎
清和大学教授
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