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乾いたぞうきんを絞るな。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:これから未曾有の値上げラッシュが始まるけど覚悟はいい?でも、少々の値上げは喜んで受け入れてあげて、なぜならばそれで労働者が守られるから、というあなたへのお願い。日本のいわゆるQCサークルは旧弊に過ぎないという批判。コストカットの日米差について。

日本の生産現場にいまだはびこる精神主義

日本の生産現場には、こんな言葉があります。

「乾いたぞうきんを絞れ」。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fameblo.jp%2Fshiroyama5725%2Fentry-11777104018.html&psig=AOvVaw3T2O6WPIz1aGS1FKZqHkb6&ust=1652277296839000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwinsv_bitX3AhWrS_UHHVs9AioQr4kDegUIARCuAQ

これはコスト削減にあくなき執念を燃やしてきた、日本の工場労働者の哲学です。

こういうとかっこよすぎるかな。(笑)

乾いたぞうきんを絞っても、もう水の一滴も落ちてはきません。

でもさらに絞るのです、無理やり絞るのです、そうすると何とか一滴絞り出せました。

それでも「さらに絞れ」と言われ、絞り出そうともがきます。

しまいには、ぞうきんは破れてしまいました。

やっとゲームオーバーです。
 
要するにこの言葉は哲学というより、一種の精神論で、それでもあきらめずにやれという現場の管理者からの、無理難題でもあります。

値上げ→コスト削減という悪魔のループ

なんでこんな言葉を思い出したかというと、コロナと戦争のおかげであらゆるものが値上げされるなか、この掛け声の下、いろんな日本のメーカーがコストカットに血眼になってるんだろうなあ、という思いからです。

外国のメーカーも例外じゃありません。

昨年7月1日のThe Wall Street Journalは、食品大手ゼネラル・ミルズの経営努力について報じています。

チェリオスのシリアルで、ベティ・クロカーのケーキミックスで知られる同社は、原材料、パッケージ、トラック輸送に人件費の高騰で、全体のコストが7%上昇しています。この10年で最も大きなコスト増に見舞われているのです。

チェリオスのシリアル。日本では市販されてないみたいですね。楽天では買えるようだ。https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2F%25E3%2583%2581%25E3%2582%25A7%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25AA%25E3%2582%25B9Cheerios-%25E3%2582%25B7%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25AB-%25EF%25BC%2588%25E3%2583%258F%25E3%2583%258B%25E3%2583%25BC%25E3%2583%258A%25E3%2583%2583%25E3%2583%2584%25EF%25BC%2589-%25E3%2581%258A%25E5%25BE%2597%25E3%2582%25BB%25E3%2583%2583%25E3%2583%2588-%25EF%25BC%25881-5kg-2%25E3%2583%2591%25E3%2583%2583%25E3%2582%25AF%25EF%25BC%2589%2Fdp%2FB00CBSFX9W&psig=AOvVaw2QsdsbcDmXeK64ZjhwSKNH&ust=1652276355302000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwiDxYybh9X3AhVVRvUHHeB8ANYQr4kDegUIARDIAQ

この記事は戦争前ですから、今はもっと厳しい状況に置かれているはずです。

CEO(最高経営責任者)のジェフ・ハーメニング(Jeff Harmening)さんはこうため息をつきます。

ハーメニングさん。https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.delimarketnews.com%2Ffoodservice%2Fgeneral-mills-names-jeff-harmening-ceo%2Fmelissa-de-leon%2Fwed-05032017-1150%2F4443&psig=AOvVaw0A3QFpw-t6Uo99GDkx2w6K&ust=1652276555526000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwidn8n6h9X3AhXTFYgKHbXpC1gQr4kDegUIARCvAQ

「誰も値上げなんて望まないだろうが、それをせざるを得ない」。

ハーメニングさん

同業者のキャンベル・スープやジャムでおなじみのキャンベル(Cambell)やスマッカー(J.M.Smucker)も値上げに踏み切りました。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.campbellsoup.co.jp%2F&psig=AOvVaw2iLUPQnVdTzGVAQpADHsAk&ust=1652276738737000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwiUxvfRiNX3AhWmTPUHHW8cCoAQr4kDegUIARDWAQ
https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.adweek.com%2Fagencyspy%2Fthe-j-m-smucker-company-appoints-publicis-as-omnichannel-marketing-agency-of-record%2F170353%2F&psig=AOvVaw3vVQ-70TUOflpWMVO9x_y_&ust=1652276667942000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwihzZawiNX3AhVTFYgKHYTuBg8Qr4kDegUIARDYAQ

 ゼネラルミルズの公式見解は、「内部のカットとオペレーションの更なる効率化(internal cuts and running its operation more efficientlyで、コスト削減に努めるしかない」というものです。

内部のカットとは、労働者をクビにすること、ムリムダを取り除くことを意味します。

オペレーションの効率化とは、生産活動の段取りの改善、機械化、IT化と考えればいいでしょう。

コスト削減に見る日米の企業文化の違い


日本流のコストカットが精神主義ならば、アメリカ流はドライで合理的、と言えるかもしれません。

コストカット努力における両者の違いは、まだあります。

それは、日本のコストカットはボトムアップ型、アメリカのそれはトップダウン型であることです。


言葉を変えれば、日本はコストカットをやるとき、QC活動(クオリティ・コントロール運動、小集団で話し合ってアイディアをだす)主体で行い、アメリカはトップダウンの業務改革命令に従う、という違いです。

ボトムアップという名前の強制労働?


QC活動なんて古い?かな。

でも工場だけじゃなくて、銀行などのサービス業でも、まだ小集団活動という名前のサービス残業はやってますよね?

無理やりなんだけれど、あくまで現場で自主的なていのもとで、より苛烈な労働分担を押しつけ、コストカットのアイディアを出させられるのが日本なのですが、僕の目からは強制労働のように見えました。

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.ac-illust.com%2Fmain%2Fsearch_result.php%3Fword%3DQC%25E6%25B4%25BB%25E5%258B%2595&psig=AOvVaw2sPHF-BdmeXf_llsWaQb-i&ust=1652277914257000&source=images&cd=vfe&ved=2ahUKEwi2zbuCjdX3AhUNet4KHVGoDyIQr4kDegQIARBx

こうした小集団での改善活動は、仕事外で残業としてやらせられるのが常です。

かりにQC活動で、乾いたぞうきんが絞れたとして、それは働きがいとか、ワークライフバランスとか、働く環境とかにかんがみて、はたしていいことなのかなあ、とへそ曲がりの僕は思ってしまうのです。

もっというと、日頃の仕事だって、理不尽な長時間労働、サービス&つきあい残業、上司の意味のない説教と不合理なことばかり。

QC活動は、”働き方革命”などの掛け声とは正反対の現実の欠片かけらなのかもしれません。
 
値上げの6月を目の前にしていますが、僕はあえて、メーカーの皆さんにこう言いたいんです。

「いいよ無理しなくて。小集団活動とかでサービス残業してまでコストカットしなくていいから。戦争が終わって、コロナが落ち着いたら、自然に物価が下がるから、あんまり無理して自律神経を痛めつけないで!」。
 

筆者心の叫びだが暴論かな

乾いたぞうきんを絞るのは、もうやめにしませんか。

今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
 
                             野呂 一郎
               清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー

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